最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第65話

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「みんなおつかれ。ご飯にするからちょっと待って」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 俺達はボスを倒したあと薄暗くなった道を歩いて小さな村に着き、クリスタルを触ってすぐ家まで帰ってきた。

「ユーマ、私も一緒に食べていいか?」
「あ、モニカさんおかえりなさい。もちろん一緒に食べましょう」

 食事を作っているとモニカさんも家に帰ってきたので、一緒に食べることにする。

「ユーマは今日何をしてたんだ?」
「ダンジョンに行って、その後は知っての通りモニカさんと日課の農業をしたあとご飯食べて、はじめの街で少し用事を済ませたあとまたダンジョンに行って、帰ってフカさん達とライドホースに乗って、その後王国に続く道を進んでさっき帰ってきました」
「そ、そうか。それは大変だったな」

 今日は自分でもなかなかハードなスケジュールだったと思うし、モンスターもいっぱい倒したと思う。

「ちなみにモニカさんは帝国にはどこから行くか知ってますか?」
「帝国は南の街から行けるぞ。しかしユーマはプレイヤー様の中でもなかなか冒険している方なのではないか?」
「まぁそうですね。王国に続く道のボスはプレイヤーの中で俺が倒したのが初めてっぽかったので、だいぶ進んでいる方ではあると思います」

 まぁこれも他の攻略組が最初からこの世界に居れば、もっと色々な街が解放されるのは早かっただろう。
 俺も最前線攻略組が行ってない場所を探索してるだけで、それこそ優美なる秩序のような攻略組が北の街を進んでいたら、俺よりも先にボスが倒されていた可能性は高い。

「よし、じゃあいただきますしよっか。モニカさんは今日飲んでないと思うんでいちごミルクをデザートでどうぞ」
「お、それは楽しみだな」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

「お、美味しいぞユーマ!」
「はい。分かりましたから、モニカさんもルリもエメラも、おかわりはこれで最後にしてください」

 やっぱりいちごミルクは好評だ。特にルリとエメラの好物ということもあり、減る速度が他のものと比べても速い。

「あ、そうだ。これ今日ダンジョンで手に入れたんですけど、何かわかります?」

 そう言って何かを吹く犬のぬいぐるみを出す。
 
「なんだろうなこれは。しかしこういったものは何かと組み合わせると動き出すと聞いたことがある。何かユーマは持っていないのか?」

 そう言われてインベントリを探してみると

「ありますね、魔法の笛というものが」
「ま、また魔法シリーズなのか」
「モニカさんがさっき絶賛していたいちごミルクもオークションで取った魔法のミキサーで作りましたよ?」
「確かに! 早速そのぬいぐるみに持たせてみよう!」

 そう言われて魔法の笛をセットしてみる。

「一応うまく持ってくれましたね」
「だが、何も起こらないな」
「あ、楽譜を出してみますか」

 ということでマグマな楽譜を目の前に出す。

「おお、何か吹き始めたぞ」
「凄いですけど、これだけですか?」

 確かに音楽は流れ始めたが、だからといって何か起こるわけでもない。

「クゥクゥ!!」
「どうしたウル?」
「おい、ユーマ! あれを見ろ!」

 ウルとモニカさんが見ている方向を見ると、マグマな置物が動き出していた。

「あ、やばい!」

 マグマな置物が溶けて、本物のマグマが流れ落ちようとしている。

「あっぶない! これ気付かなかったら本当に火事になってたな。ウルもモニカさんもありがとうございます」
「あぁ、それは良いがユーマは本当に変な、いや、色々なものを持っているな」

 モニカさん、それは何を言おうとしたか隠せていません、と思うが俺は指摘しない。正直少し自覚はあるし。

 俺は咄嗟にマグマ袋を出してマグマを受け止めたのだが、これはおそらく正しかったのだろう。

「なんかこれもマグマな置物を手に入れた時に一緒にあったんです。これまではミルク保存缶を少し入れて温めるくらいにしか使ったことなかったんですけど、こういう使い方があったんですね」
「それはそれでその使い方はどうかと思うが、マグマを受け止めるための袋だったのだろうな」

 そしてマグマな置物のマグマが全て流れ落ち、残った置物には光り輝く宝石があった。

「なんかすごそうな宝石ですね」
「あぁ、これは私でもいくらになるか想像がつかないくらい高いことだけは分かる」

 モニカさんが想像つかないくらい高いって言うんだったら、この宝石を売ったらどうなるんだ?

「まぁ一旦インベントリの中に入れておきます」
「あぁ、それが良いだろう」

 こうして家を火事にすること無くマグマな置物から宝石をゲットできたわけだが、これからは何かを試す時は慎重に行おう。

「私もここで試すように言ったのが良くなかった」
「いや、ここで試さないとマグマな置物が溶けることもなかったですし、結果としてはこれが正解でしたよ。まぁ置物としてはもう使えませんけど」

 マグマな置物は台座だけになってしまったので捨てるが、代わりに黄金の騎士の置物が来たし良いだろう。

「あ、そうだ。マグマのせいで忘れてましたけど、まだまだ見てもらいたいものはあるんです」
「私が力になれるかわからないが、協力はさせてもらうよ」
「ありがとうございます。じゃあまずはこれなんですけど」

 そう言って特別な魔玉とゴーレムの核を出す。

「おお、これもまた珍しい。2つともゴーレムを作る時に必要なものだな」
「やっぱりそうなんですね。ちなみに他に必要なものってあります?」
「ゴーレムの核と動力となるものがあれば、あとはゴーレムが身に纏うものを合わせて終わりだ。この場合だと核と動力はあるから、石でも鉄でもなんでも合わせればゴーレムは作れるぞ」

 なるほど、これはどんなゴーレムを作るか考えておかないといけないな。

「ありがとうございます。自分だけだと絶対に分かりませんでした。じゃあ次はこの綺麗なクモの糸なんですけど、これってどうですか?」
「流石に分からないが、何にでも使えるのではないか? 装備の素材にも良さそうだし、美術品を作る時にも使えそうだ」
「なるほど、分かりました。では最後に黄金の騎士の置物なんですけど」

 そう言って飾ってある場所を見る。

「うーん、分からないな。ただの置物だと思うが、もしかしたらマグマな置物のように仕掛けがあるかもしれない」
「そうですよね、分かりました。俺も暇な時はちょっと調べてみようと思います。ありがとうございました」 
「あぁ、少しでも役に立てたのなら良かった。では私が食器は洗ってくる」
「あ、すみません。ありがとうございます」

 モニカさんは俺が食事を出した時はいつも洗ってくれるので助かる。

「ユ、ユーマ!」
「はい、どうしました?」
「この皿はなんだ!?」
「皿? あぁ、それもさっきのと一緒に手に入れたやつですね。頑丈な高級皿って名前だったんで、大きなお皿なかったですし使おうかなって」
「これを使うだと! そんな、いや、しかし間違ってはない、ないが」

 何かモニカさんが頭を抱えて苦しんでいる。

「ユーマ、これはとても価値のあるものだということは分かっているな?」
「まぁ高級らしいので」
「うっ、まぁそうか。ただ私から言わせてもらうと、この皿を使うことはあまりにも、あまりにも」
「あまりにも?」
「……いや、なんでもない。これは使って良いのかもしれないな。頑丈に出来ている事を考えると、飾るために作られたわけでもないだろう」

 何か1人で納得したモニカさんは、その後何も言うことなく食器を洗ってくれた。

「じゃあログアウトしようと思うけど、その前に露天風呂に皆で入ってみるか」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 モニカさんには俺達がお風呂に入ることを伝え、魔獣達と初めてこの世界で露天風呂に入る。

「俺は水着を着てたんだな」

 無難な暗い色のパンツを履いており、これは脱げないようになっていた。

「おお、まぁ風呂っぽい感覚はするな」

 少し暖かくて身体を包まれている感覚はする。何も考えずに入ったらお風呂に入ったように感じられただろうが、風呂はどんな感覚がするのか意識して入ったので、少し違和感は感じる。

「ウル達は気持ちいいか?」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 魔獣達の身体を魔法の石鹸で洗い、皆でゆっくりしてから風呂を出る。

「どうだった?」
「まぁ気持ち良かったですね。何よりもウル達と入れたのは良かったです」
「そうか。では次は私が入るぞ」
「はい。石鹸はそのまま置いてるんで、またキッチンの方に置いといてください。あと、俺はもう寝ますね」
「そうか、ユーマがいない間は私に任せてくれ」
「ありがとうございます」

 こうしてモニカさんと少し話したあと、ウル達の身体をもう一度ちゃんと拭いて、俺達は寝室に行く。

「じゃあおやすみ。次俺が起きたら王国の方を少し進んで行きたいな。あとはマルスさんに頼んでた宝石を……」
「クゥ」「アウ」「……!」

 魔獣達と少し話をして、俺はログアウトした。


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