最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第9話

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 なにしようかなー、なんて考えながらウルと街を歩く。

 冒険者ギルドの依頼を受けるのもいいし、すぐ離れたけどまた魔獣ギルドの依頼を受けるのもありか。
 
「クゥ」
「なんだ?」

 ウルが呼んだのでそっちを見てみると、お菓子を売っているお店だった。

「食べたいの「クゥ!」か?」

 食い気味に返事をするあたり、本当に食べたいのだろう。

「お金はさっきの依頼でだいぶ貯まったし、1つ好きなの選んでいいぞ」
「クゥ!」

 尻尾を振りながらショーケースを眺めているウルを俺は眺める。

「すみません。おすすめを教えてもらってもいいですか?」
「当店のおすすめはショートケーキとチーズケーキになっております」

 そこには現実のものと変わらないケーキが並んでいた。
 ところどころ名前は違うが、この2つはそのままの名前で分かりやすい。

「お、ウルはこのチーズケーキにするんだな」
「クゥ!」

「じゃあこのチーズケーキとショートケーキ1つずつください」
「かしこまりました」

 値段は安く、1つにつき150G。ゲーム世界だと体に影響はないので、甘い食べ物をいくら食べても安心だ。

 ここでは食べても不健康になることや、太ることはない。
 昔は味がしなかったが徐々に改良されていき、今では現実のご飯よりもゲーム世界のご飯が美味しいと言う人が現れるようになった。

「流石にこの段階で色んな食べ物に手を出してるのは料理人くらいかな」

 ちょくちょくご飯を食べる人を見かけるが、大体がウサギ肉を焼いたもので、食べ物にお金をかける人はまだ見当たらない。

 このケーキなんてあと数日してお金に余裕がでてくれば、買う人はいっぱいになるだろう。

「美味しいか?」
「クゥクゥクゥ」

 ウルは大満足のご様子。一口ずつ交換したが、どちらも美味しく、俺の知っているケーキと同じ味だった。

「美味しいですか?」
「ええ、美味しいですよ」

 プレイヤーかと思ったが、装備はつけていないので、多分NPCだ。この段階で服にお金をかけるプレイヤーがいるのならもうわからないが。

「初めてこっちでケーキを食べたんですけど、ハマってしまうとお金が全部ケーキに変わりそうです」
「ふふっ、それは大変。何事も程々にしておかないと」

 上品な仕草で、いかにもお嬢様というような振る舞いだった。

「プレイヤー様ですよね。楽しんでいらっしゃいますか?」
「ええ、モンスターと戦うのも、この魔獣のウルと過ごすのも、配達依頼や捕獲依頼も全部今のところ楽しいですね」
「食べることは入らないのかしら」
「それは元々好きなので変わりませんよ」

 また上品に笑うと、ニコッとしてお店の方へお菓子の注文をしに行った。

「私もご一緒してよろしいですか?」
「どうぞどうぞ」

 買ってきたお菓子と飲み物を持ってきて、俺達の横で一緒に食べる。

「私達は今日プレイヤー様方が来るということが知らされていました」

 このお嬢様が言うには、この世界ができた理由が、今日来るプレイヤー達を受け入れるためだと教えられていたらしい。

 神がこの世界を創造し、いろいろな歴史を作りながらも、このことだけは忘れ去られることも、間違って伝えられることもなかった。

「ただ、少し失礼になるかもしれませんが、プレイヤー様方が、特別な存在だという気持ちは特にないのです。プレイヤー様が、この世界が存在する理由であることに間違いないのですが、だからといってなにか思うことがあるかと言うと、そういう気持ちはなくて」

 このゲームでは、プレイヤーもただの人と変わらず、良い行いをすれば良い対応をしてくれるし、悪い行いをすれば嫌がられるという事だろう。

 他のゲームではプレイヤーを倒すことを専門にしている害悪プレイヤーにも、そのゲーム世界の住人は普通に接していたりしたが、このゲームはそういったところも注意しないといけないのかもな。別に悪いことをした記憶はないが、一応気をつけないと。

「それが普通だと思いますよ。ちなみにプレイヤーが来るまで、この街にいるモンスターはどう対処してたんですか?」
「この街はプレイヤー様方が初めにいらっしゃる街として最近作られました。ですのであまり住人はいませんし、皆さんお仕事で他の街から来られた方ばかりです。他の街では冒険者の方々が駆除したり、街でモンスター討伐部隊が編成されて討伐を行うこともあります」

 これは知らなかった。どうもこの世界の住人らしき人があまりいないし、街として少し違和感があったんだが、そういうことなら安心した。

「なるほど、だから子どももあまり見えなかったんですね。どうにも街の大きさに対して、プレイヤーを抜いた場合の人の数が少ないなぁと思ってたんですよ」
「この街でプレイヤー様方のことを知って、他の街に住む方々に報告する必要があったんです。これは危険なプレイヤー様を見つけるということよりも、何がプレイヤー様方に必要になるのかをこちらで見つけることができれば、他の街でも用意することができるからです」

「そんなことプレイヤーの俺に言ってもよかったんですか?」
「問題ありませんよ。プレイヤー様に知られて困ることは、他の人に知られても困ることだけですから。プレイヤー様も、私達住人も、何も変わりはありません」

 こんな話をしていると、どちらのお菓子も飲み物もなくなっていた。

「ご一緒させていただきありがとうございました。とても楽しかったです、ユーマ様」
「いや、こっちも楽し……、名前言ったっけ?」
「今、各ギルドで有名ですわよ。それにギムナ様づてでつい先程元気なカシワドリもいただきましたし」

 どうやら俺のことを知っていて声をかけてきたらしい。

「私はベラといいます。また当店で購入される際は、話し相手になってくださると嬉しいです。お菓子だけでなく、すぐ横にはパンやピザもありますから、いつでもいらしてください」

 さらにどうやらこのお店のオーナーさんだったらしい。

 若いのにすごいなぁ

「じゃあまた食べに来ますね」
「クゥ!」

 ベラさんはなかなかおしゃべりがお好きな人だったな。いやいや、お好きなんて言い方ベラさんのがうつってしまった。

「そろそろレベルも上げたいし、ちょっと狩りに行くか」
「クゥ」

 このゲーム世界はゲーム時間で13時頃に始まり、大体10時間位過ごしているので、あと数分で24時を超えて2日目に突入することになる。

 現実世界ではまだ16時前と考えると、ゲームの世界は恐ろしく時間の感覚を狂わせてくることがわかる。

 ちなみに今日と明日、明後日は夜が全く来ない日となっている。
 現実世界の12時に毎日切り替わりがあり、夜が来る日と来ない日が交互に訪れる。
 なので、ゲーム世界で言うと3日間夜がない日が続き、3日間夜のある普通の日が続くことになる。

 このゲームの世界の住人はこれが普通だろうが、俺からすると72時間以上夜が来ない日なんて絶対に耐えられない。

「一緒に狩りに行くだけだって」
「いえ、あの、」
「そうそう、このゲーム本人の許可がないと触ることすら出来ないし、何も問題ないだろ?」
「いえ、その、」
「じゃあ決定ー」

 歩いていると冒険者ギルドの前でナンパの被害にあっているプレイヤーが居た。

 男たちの言う通り許可が無いと触ることもできないため、女性の近くでずっと喋り続ける以外出来ることがないのだ。

 ただ、パーティーを組んでしまえば別である。パーティーに入ると、接触の許可も出したことになってしまうので、男達はそれを狙っている。

 無視し続ければ良いと思うかもしれないが、始まってすぐのこのタイミングだと、この街にしばらく滞在し続けるだろうし、女性プレイヤーは逃げる場所がない。
 あまり変なプレイヤーに覚えられたくはないのだが、無視するのも嫌なので少し助けることにする。

「お兄さん達、その人も明らかに嫌がってるし、やめといたほうが良いんじゃないかなって」
「ん? いやちょっと声かけてただけだって。男なら女の子誘う気持ち分かるだろ?」
「まぁ分からなくはないけど、嫌がってるのを無理に連れ出してもね。あと、流石にパーティー組んだら接触許可出るのは気づかれてると思うよ」
「おいおい言うなよ。もうちょいでいけそうだったのに」

「たぶんまだしてないと思うけど、GMコールされたらお兄さんたちログイン制限かけられるかも」
「はぁ!? 俺たちは悪いことはしてないぞ?」
「時間が経てばこれくらいは注意で終わるだろうけど、今はこの街しか行ける場所がないしね。あといくつか新しい街に行けるようになるまでは、強引なナンパをし続けてたら一定期間入れなくなるかも」

「けっ、もういいわ。行くぞっ!」
「お前通報すんなよ」

 男たちはなんとも悪役が言いそうな捨て台詞を残して去っていった。

「あの、ありがとうございます」
「いや、大丈夫。このゲームはPKないし、相手も結構すんなり諦めてくれたから。ちなみに通報はしとくほうが良いよ。嫌じゃなかったのならしなくて良いと思うけど」

 今すぐしますと言って、色々書き込んでいる。まあ一応これで大丈夫そうかな。

「じゃあ俺はこれで。次絡まれたらGMコールすれば良いと思うよ」
「あ、ありがとうございました!」

 そうして少し想定外のことはあったものの、冒険者ギルドで依頼を受けて、レベル上げに向かうのだった。


 
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