最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

文字の大きさ
上 下
6 / 184

第6話

しおりを挟む
「じゃあ指名依頼に行く前に、商人ギルドと魔獣ギルドに寄るから、ウルはもう少し戦うのは待ってくれな」
「クッ」

 か、かわい、すぎる!
 
 片手を上げて返事をするウルに癒やされながら、商人ギルドで余りの素材を売る。
 
 今のところ商人ギルドへの登録はしていない。店を出したり、知らないプレイヤーに対して物を売りたいなら登録するほうが良いらしい。
 今後モンスターのドロップアイテムや宝箱からレアなものが出てきて、オークション形式でプレイヤーに売りたいというようなことになったら、その時は登録しようと思う。

「さてと、ウルの種族は狼系統だし魔獣用のアクセサリーがあれば嬉しいな」

 商人ギルドで素材を売ったあと、すぐに魔獣ギルドに来て魔獣用の装備を探している。

 流石に最初来た時より人は減っていて、ゆっくりと中を見れそうだ。

「お、これなんかどうだ?」
「クゥ!」

名前:青の首輪(魔獣)
効果:防御力+15、敏捷+2

 ウルも良さそうなので購入するが、これを付けるとさらに犬に見えてしまうな。

「よし、似合ってるぞ」
「クゥ!」

 俺の武器より高かったが、魔獣装備を作るプレイヤーが出てくるまでは時間がかかるだろうし、良いものを買っておきたかった。

 それから俺達は魔獣ギルドを出て、指名依頼のレッサーウルフを探しに行くのだった。

 
 
「じゃあようやくお前の実力を見せてもらう時が来たな」
「クゥ」

 今俺達はレッサーウルフがいる場所の少し手前におり、道中でモンスターに出逢わなかったので一度この辺りでウルの戦闘を見ようとしているところだ。

「あのスライムと角ウサギはどうだ? いけるか?」
「クゥ!」

 元気よく返事をし、ウルは2体のモンスターへと向かっていく。
 流石に狼なこともあってか素早い移動ですぐにモンスターへと近づき、角ウサギに対して前足の爪で攻撃をする。

「クゥ!」『ギュッ』

 おそらく爪強化のスキルでも使っているのだろう。引っ掻き傷のようなエフェクトが見える。
 そして角ウサギも自慢の角で反撃しようと飛びかかってきたところを、さらにカウンターの爪攻撃で倒した。

「クゥ」
「やるなぁ」

 特に最後のカウンターはウルがまだタマゴだった時、俺が300匹くらい角ウサギを狩り続けたやり方にそっくりだった。

 親バカなんて言われるかもしれないが、うちのウルは天才かもしれない。
 というか自分と似たような動きをされると、本当に親の気持ちになってしまう。

「クゥ!」

 まだ戦闘は終わっていない。近くのスライムがウルに気付き、ウルもスライムと向かい合う。

「クッ!」
 ぷるぷる……

 スキルで高く跳躍し、上から攻撃を仕掛ける。それはスライムに最も有効とされる魔法攻撃だった。

「クゥー!」
 ぷるぷ……キンッ

 氷魔法がスライムに当たると、スライムは凍ってそのまま固まってしまった。 
 スライムは身体のほとんどが水分でできているため、全身が固まって全く動いていない。

「クッ」
 パリンッ

 凍ったスライムはウルの一撃で割れてしまい倒された。

「よくやったぞー」
「クゥクゥ」

 じゃれついてくるウルを両手で受け止め、その身体を高く持ち上げてやる。

「動きも良かったし、攻撃も魔法も全部良かった。これなら一緒に戦えるぞ~」
「クゥ~」

 これなら安心して一緒に戦える。

「おっと、こんなこと言ってたら向こうから来てくれたな」

『ガゥ』『ガウガウ』……

 5体以上は居そうなので、このままここで戦うことにしよう。

「ウルは俺の近くで自由に攻撃してくれ。危ないと思ったら俺の後ろに隠れろよ」
「クゥ!」

 ここは森に近いが草原のため、周りに障害物はない。
 相手が隠れるところがなければ、周りのどこからでも攻撃が来るため不利だが、森の中は森の中で木が邪魔で相手が見えにくいという問題もある。

 今回はウルの戦闘能力も高いので、俺は真っ向からの勝負でも大丈夫だと判断した。
 ウルがもう少し弱ければ、森に入って障害物の木を使いながら戦うことになっていただろう。

「右側を頼む、正面と左は俺がやる」
「クゥ!」

 角ウサギとは比べ物にならない圧をレッサーウルフから感じながら、俺は敵を倒す手段を考える。

『ガウッ』『ガゥッ』

 左からくるレッサーウルフ2体を、片手剣を大きく振ることで退かせ、正面の1体にこちらから攻撃を仕掛ける。

「おらっ!」『ギャウッ』

 まさか攻撃を仕掛けた仲間の2体より自分を先に攻撃されると思ってなかったのか、避ける素振りも見せずに倒れた。

『ガゥ、ガオーーン』
「え、まじで。流石に仲間とかこれ以上増えないよな?」

 遠吠えをレッサーウルフの1体がしたことにより、最悪のビジョンが浮かぶ。

 流石に角ウサギの時みたいな量は無理だぞ

 レッサーウルフは角ウサギの何倍も強く、ウルはもちろんのこと、俺ですら複数体のレッサーウルフを捌き切るのは難しいと思われる。
 数レベル上がれば身体能力も少し上がって余裕はできるだろうけど、全方位囲まれたらほぼ詰みだ。

 少し戦う場所を誤ったかと後悔し始めたとき、ウルの方からいくつもの氷魔法が見えた。

「クゥ!」
『ガウ』『ガゥ』

 跳躍して近づいて来る敵を氷魔法で攻撃し、近づいて来ない敵は全て無視をして、俺達の後ろに相手を回らせない様にしていた。

「クゥクゥ!」
「よし、お前を信じるよ」

 こちらは任せとけと言わんばかりの頼もしい鳴き声が、俺の不安を薙ぎ払ってくれた。

 どうしてもウルのいる右側をずっと警戒していたので、なかなか敵を倒しにいけなかったのだが、そこは抑えてくれると信じて前に出る。

「さっき2体で襲って倒されなかったからって、今回もまた倒されないとは限らないぞっ!」
『『ギャウ』』

 完全にウルのいる右の警戒を解いてからは動きやすくなった。ここは開けた場所だが、ウルが敵を引き付けてくれるおかげで、ウルの場所がある意味障害物のような役割を果たしていた。

 ひたすら跳躍して氷魔法で相手を止めているウル、襲いかかってくる敵とウルの氷魔法で動きが鈍くなった敵を倒す俺、ギリギリの戦いながらもお互いの連携が深まっていくことに俺達は楽しさを感じていた。

「ウルも『ガウッ!』そろそろ『ガウッ』倒して『ガゥガゥッ』こい! 魔法を当てたやつだ!」
『『『ギャウッ』』』
「クッ!」

 敵も焦ってるのか、同時に攻撃を仕掛けることが少なくなってきて、逆にこっちが同時に複数体倒す場面が増えてきた。

「クゥ!」『ギャ、ギャウ』

 よしよし、ウルも順調に倒せてるし大丈夫だな。さっきの遠吠えでレッサーウルフの数は増えたが、そこから更に増える気配は今のところない。
 アポルの実と同レベルの依頼だとすると、これ以上は増えないだろう。

 というか受付の人に事前準備をしてくださいって言われたのに、正面から戦い過ぎていた気がする。
 アポルの実の時は不可抗力だが、このレッサーウルフだって数の少ない群れを狙って倒せば良い話だったし。

 自分のやりたいよう自由にしていたら、危機管理能力まで少し鈍ってしまったようだ。

「クゥ!!」

 ただ、最後の1体を倒し終わって満足気なウルを見ると、これで良かったのかもしれないと思わされる。

「よくやったぞ!」
「クゥクゥ!」

 これほど満たされた気持ちになるのはウルのおかげなんだろうな。
 結局俺はどこまでいっても攻略することを無意識に考えてしまうが、ウルと一緒ならこの世界を存分に楽しめる気がしている。

「ありがとなウル」
「クゥ」

 おそらく今の戦いを褒められたと思ってるんだろな。それはもちろんそうだけど、それ以外にもほんとに助けられてるよ。

《ユーマのレベルが上がりました》
《ウルのレベルが上がりました》

「ちょっと確認するから待ってくれ」

名前:ユーマ
レベル:3
職業:テイマー
所属ギルド :魔獣、冒険者
パーティー:ユーマ、ウル
スキル:鑑定、生活魔法、インベントリ、『テイマー』、『片手剣術』
装備品:鉄の片手剣、皮の服、皮のズボン、皮の靴
 
『片手剣術』を押すと 
片手剣術:片手剣強化、クリティカルソード、フィジカル

名前:ウル
レベル:2
種族:子狼
パーティー:ユーマ、ウル
スキル:勤勉、成長、インベントリ、『子狼』『氷魔法』
装備品:青の首輪(魔獣)

 今回の戦闘で俺もウルもレベルが上がったので、相当経験値は美味しかった。

 あと、片手剣もスキルは使わなかったがなかなか良かった。やはりリーチがある程度長いとやりやすい。

「よし、帰りますか」
「クゥ」
  
 想定外の苦戦を強いられたが、無事に依頼を達成することができた俺達は街へと帰るのだった。


しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

動物大好きな子が動物と遊んでいたらいつの間にか最強に!!!!

常光 なる
ファンタジー
これは生き物大好きの一ノ瀬夜月(いちのせ ないと)が有名なVRMMOゲーム Shine stay Onlineというゲームで 色々な生き物と触れて和気あいあいとする ほのぼの系ストーリー のはずが夜月はいつの間にか有名なプレーヤーになっていく…………

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...