二度目の人生は異世界にて

ren

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2. 今一度、命の危機

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 魔法陣に飲み込まれた俺は気がつくと雪が降り積もる森の木陰に腰を下ろしていた。
「さむ」
 ここでは冬真っ只中なのだろうか、一面が白一色で塗り固められていて見ているだけでも凍えそうだ。

 ていうか

「...は?」

 なんで俺はこんなとこでいきなり凍えそうになってんの? 割と冗談抜きで寒くて血管凍りそうなんだが? なに?転生って文字通り異世界のテキトーなとこにランダムでぶち込まれんの? いや赤ちゃんからスタートされてくれよ戸籍なし親なし家なし学歴なしとか50超えたニートと社会的地位変わんねえぞ

 あのクソ眼鏡受付人、アドバンテージ持って生まれるとかなんとかぬかしやがったくせに、生まれた時から人生ハードモードってどういうことだよおおおおおおおお

 「フッ」

 じっとしてるのはたまらなかった為、立ち上がって木に寄りかかり右手を顔に当てて

 「ああ無情」

 恐らく使い所は全く違うであろうフランス文学を呟き

 「(よくよく考えたら、今の俺って荒廃した世界で一人自分達の身勝手さに黄昏る人類の生き残りみたいで格好がいいな)」

 雪景色が幻想的な背景に興奮し、周りに人がいない安心感からか深夜テンションみたいなノリでダサい決めポーズを木くんと共に撮っていると

 ビュォォォォォォォ~~~~!

「ヒッ!?」

 迫真すぎる音と共に北風が俺の全身を直撃したことで、数分前立ち上がろうと思った事を後悔した

 「あっ、死ぬわこれ」

 生命の危機にふざけてないとやってられない俺は懲りずに

 「眠いにゃー     おやすみーー俺の人生 ...zzz」

  俺が目を閉じようとしかけたその時


     

   白銀の世界にキラリと光る異常な赤が いちにーさんしー、、、10個あった

 「...えw」

 偏差値70の俺の聡明な脳はここが真冬の森の中だという事 血の色を想起させる赤色 加えて俺が今食物連鎖の下層にあるということから自分の周りに何が起きているのかを瞬時に導き出し、、、思わず笑ってしまった

   逃げろ   森が俺にそう言っている
 
 「あーっ!あんなところに!」
 サバイバル偏差値30の俺の駄脳は、この古典的で頭の悪い方法が猛獣に通用するわけが無いことを気付かずに明後日の方向を指差す。
 しかしなんということか、興味を示したのか猛獣達はその方向を向きその隙に俺は足元の雪を蹴って目くらましした後全力疾走で逃走を図った。


  十数分後、後ろにオオカミ達の姿が見えなくなり吹雪も止んで今は少しの粉雪が降り注ぐ。

「ハァ  ハァ  逃げ切った、かな?」

 周囲に敵影がない事を念入りに確認すると


「......アハハハハハハ!どうだ見たか逃げ切ったぞオラァァァァァァ!!!」

「この俺がちょっと寒さで弱体化してるからって調子に乗りやがってあの犬共」

「食物連鎖の頂点 人間様に畜生が盾突きやがってアヒャヒャヒャヒャ!!!いやぁ~あそこにUFO戦法が通じるほどバカでよかったよかった~」

 降って湧いた安心感で調子に乗る俺にその時、後ろから神速で何かが通り過ぎて思わず目を伏せる。

 顔を上げるとそこには先のオオカミが二匹いた。嫌な予感に振り向くとオオカミ三匹  みんながみんな バカなカモを見つけたかのように妖しく笑っていた。


 その時、バカな人間様は致命的な落とし穴にはまっていたことに気づく。

 猛吹雪が止んだ今、俺が全力疾走で思いっきりつけていった足跡がくっきりと残っていた。

 滝のような汗が止まらない 捕食者に完全に囲まれた人間様カモは逃げ惑うことしかできなかった。

 ヒュン!
 前の二匹が飛びかかるのをすんでの所で躱す。

「危ねぇッ!!!」

 前の二匹が居なくなった隙間から包囲を脱出すると雪の重さに耐えかねて地面に落ちていた太めの枝を手に取る。
 直後、飛びかかってきた一匹を枝で殴って振り払う。しかし腕にもう一匹噛み付いてきた。

 「痛ッッッ!!!」

 こいつ牙立ててやがる。

  今まで味わったことのない痛みで死への恐怖と焦燥に駆られる俺は

「痛い痛いッ...いてえんだよ!!!」

 思い切り腕を振りかぶると噛み付いていたオオカミが勢い良く飛んでった。


 解放されると、飛ばされ横たわるオオカミを見て今まで殺生をしたことのない俺は生まれて初めてのドス黒い感覚に襲われる



       殺らなきゃ殺られる



 力任せに、棍棒のような枝でオオカミを殴り始めた

「テメエっ!どうしてっ!くれんだっ!この腕っ!血がっ!止まんねえぞコラァッ!」

 思い切り何回も殴りつけていると、いつのまにか、枝は折れて、血溜まりの中で動かなくなった生き物がいた。


 一旦、死の恐怖から解放された俺は大変な事をしてしまったのを気づく。
 
    生き物を 殺した

 うっかりアスファルトの上のアリを踏みつけるのとはわけが違う。
 俺と同じくらいの大きさでさっきまでキャンキャン喚いてた生き物を、明確な殺意を持って殺したのだと。

 体から力が抜けて、枝を落とし地面に座り込むとオオカミ達の方を見る。
 目の前で仲間が無残に殺されたためか目が真っ赤に燃え上がっている。
 そして

 「何で、口から   炎が    出てんだよ...」

 オオカミ達の口内に炎が渦巻いている。やがてその炎は徐々に大きくなり...

「(今度は、、ホントに、ヤバイ。早く、逃げないとな、、、)」

 明確な死の危険を前に何故か体が動かない。見るとさっきの腕の傷からの出血がまだ止まらなかった。貧血で体が動かないのだろうか
 



 ゴォッッ!!!
 そして、そんな俺に容赦無く奴らは火炎放射みたいに炎を吐いてきた

「ちくしょおぉっ!!」

 無力にも腕を振ると、そこには木炭のように焼け焦げた人間の腕と 炎に包まれ地獄の様な断末魔を叫ぶ人間様 、はおらず


   ヒュッ!
 風を切るように放たれた俺の腕に沿ってオオカミの火炎放射は音もなく霧散した。

 「(...消えた?)」


 何故か起こった超常的な奇跡にもかかわらず、容赦無い出血で俺に逃げるだけの力は残っておらず、意識は闇に呑まれていく。




 意識が切れる寸前、眼前に黒い何かが現れたが 俺にはそれが新手の捕食者か はたまた救世主かは知り得なかった
 
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