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Epilogue〜エピローグ〜

スパイスフルな人生を※R18

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 挙式当日、才造も累くんも披露宴とその後の二次会であたしの父と兄にさんざん酒を飲まされ、才造が爆睡してしまった。累くんはケロッとしてたけど。
 なのでその日は、甘い新婚初夜とはならなかった。

 翌日から三人でハワイへのハネムーンに発つことになっていたので、旅先のホテルで初夜の契りを結び、そこで才造の「穴」を開発しようということで合意がなされた。

 そう――1年前に才造は穴解禁宣言をしたものの、せめて親に結婚を認められて挙式を済ませるまではお預けにしようと足掻いていたのだ。

「ほら……お預けにすればするほど盛り上がるかもしれないし?」

 なんて先延ばしにする言い訳をつけて。
 でも、その苦しい言い訳もついに効かなくなる時が来た。

 8時間ほどのフライトを経て、三人でそれぞれ大きなスーツケースを転がしながら、全室オーシャンビューのリゾートホテルへ辿り着いた。奮発して初日だけジュニアスイートルームを取った。三人いると経済力も3倍になるのだ。

 部屋に入るなり、累くんが奇声をあげながら突然服を全部脱いで投げ捨てた。下着までポイポイポポイと。


 ヒャッホォォォォォォォォォ!!!!!!


 一緒に暮らすようになって初めて知ったけど、彼は裸族だった。帰宅するなり、まず服をすべて脱いでそのまましれっと生活しようとする。
 さすがに目のやり場に困るので、あたしと才造とでせめてパンツくらい履いてくれと頼んだ。すると渋ったので、あたしはこう言ってやった。

「普段から常時『それ』を見せられてると、見慣れちゃっていざって時に興奮できなくなるよ。それでもいい?」

 それで彼はハタッと我に返り、素直に服を着るようになった。

 でも今日、バカンスの開放感で久々にその血が騒いでしまったらしい。脱いでそのままビーチに面したバルコニーに駆け出そうとしたので、才造が羽交い締めで止めた。

「え~、さいぞーさん♡ まだ明るいのにもう押し倒す気ですかぁ? せっかちさんですね♡」
「すっとこどっこいが!!!!」

 修学旅行で浮かれる男子生徒と引率の先生みたい。この人、色々抑圧されて育った反動が今出てるんだきっと。





 その後は豪華な食事とエンターテイメントを楽しむ予定になっていた。あたしは青いハワイアンドレス、男子二人はアロハシャツ。才造が黄色で累くんが赤。リゾート衣装が気分を盛り上げる

「アロハシャツって言ったら頼人さんが浮かぶよねぇ。あの人の弟子にでもなった気分」

 累くんがそんなことを言って笑った。

「累くんまで動画作り始めたらたまんないからやめといて」
「何を晒されるか分かったもんじゃないからな」
「それはともかく、頼人さん一家にもお土産買って帰ろうね。お揃いのアロハシャツなんてどうかな」
「『本場のだぜコレ!!』って自慢して回りそう、あの田舎者」

 そんな会話をして三人でケラケラ笑い、男子二人のツーショットを撮って兄に送った。
 見た目にも華やかなハワイ料理、フラダンスやファイヤーダンスのショー。ウォーターフロントでのひとときはあたしたちを非日常に誘ってくれた。ひとりだけその前から盛り上がりっぱなしの人がいたけど。

「ファイヤーダンスのマッチョメン、みんないいカラダしてるよねぇ~」

 あたしがそう呟くと、累くんはうんうんと頷き、才造はガビーンという顔をしてこっちを向いた。自分だってフラのお姉さんの腰つきに釘付けだったくせに。





 部屋へ戻り、さてそれではいよいよ儀式を始めようという時がやって来た。
 累くんがこだわりにこだわりを重ねて照明を調節し、キングサイズの巨大ベッドの周りに三人集まった。全員身を清め終わっている。

「ついにこの時が来ましたね……さいぞーさんの……お、おしっ……」

 高揚のあまり、累くんが鼻息を荒くしている。才造はというと、なおも困惑したような顔で逃げ腰である。

「いやでも……ほら、旅先で慣れないことして体調に異変をきたしても困るし? 明日から色々予定も詰まってるし……何も今日じゃなくても」
「さいぞーさん、往生際が悪いですよ」
「そうだよ、さいぞー。逃げるなんて、見苦しいよ」
「別に逃げようとしてるわけじゃ……」
「もう1年ですよ? あの約束が決め手で僕はお二人の元に戻ってきたわけですし、もうこれ以上待てません」
「やっぱアレが決め手だったんだ……」

 そうじゃないかとは思っていたけど、改めて言われるとあたしはちょっと引いた。

「もちろん莉子ちゃんの愛の言葉も決定打だったよ? 僕の心を打つのに十分すぎたからね。とにかく、約束は約束ですからね。初夜の契り!! 浣腸これは済ませたんですよね? 穴も綺麗に洗ったんですよね? シャワーが異様に長かったですよ? ならもう、あとは本番を残すのみじゃないですか。ここまで来て何を躊躇っているんですか?」
「わっ、分かった……ただ、莉子に見られると思うとすげー、何ていうか……」
「恥ずかしい?」

 才造コクン。

「じゃあ最初はあたし別の部屋に……って、いやでも、二人の初めて……みっ、見たい……!」

 あたし鼻血ブシャー。

「そうだよ。初夜を僕とさいぞーさんだけでなんて、それは絶対ダメでしょ。莉子ちゃんにも立ち会って参加してもらわなきゃ」
「分かったから……でも、一個だけ要望言っていい?」
「はい、何ですか?」
「莉子の胸に埋もれながらがいい」
「なぁんだ、そんなことですか。もちろんどうぞ♡」

 累くんニッコー。





 三人で触れ合い、絡み合い、色んな体勢で入り乱れながら、それぞれのキモチイイを高め合う。
 微笑み合い、熱い眼差しで見つめ合い、互いの名前を何度も呼び合った。

「さいぞーさん……僕の名前、呼んでください」
「………累」
「莉子ちゃんも、呼んで」
「累くん……」
「俺も呼んで」
「さいぞー……さん……っ、莉子……ちゃん……」
「てめェじゃねぇ。莉子に言ったの」
「さいぞー……」
「……莉子」

 そして、才造は初めての経験をすることになった。
 あたしの胸に抱かれながら四つん這いのような姿勢になった才造の後ろに累くんが膝立ちになり、ゆっくりと挿入する。指やオモチャでの慣らしも事前に済ませていた。

「さいぞーさん……気持ちいいでしょう」

 才造が頷く。ハァハァと息をして、目には涙が滲んでいる。

「さいぞーさんにもこれを味わって欲しかったんです。味わって、そんな風になるのを見たかった」
「はぁッ、だから……俺は嫌だったん………」
「もうこの快感を知る前には戻れませんよ」
「ふぁぁ…………ッ」

 才造がこんなに声を漏らしているのを初めて聞いた。いつものセックスでも気持ち良さそうな顔を見せるけれど、ここまでの反応は見たことがない。
 才造の口からヨダレが垂れた。目も虚ろだ。その肩越しに、累くんも切なそうな顔で汗を滴らせているのが見える。






 熱い時間を過ごした後――

 才造はベッドに横向きで寝転がり、背中を丸めて幼虫のポーズを取り、片手でお尻を押さえている。燃え尽きた灰みたいな顔で。
 あたしはその才造と向かい合い、胸に顔を埋めさせてやった。

「お尻、大丈夫?」
「大丈夫じゃない……」

 あの穴の周りが切れて血が出たらしい。初体験した女の子みたいに。
 そんな才造の向こうに仰向けで横たわった累くんは、非常に満足そうである。

「でもさいぞーさん、気持ち良さそうな声、たくさん出てましたね。可愛かったぁ♡」
「ね。さいぞーがあんな可愛く乱れるのは初めて見た……累くんがお尻攻められてる時と同じ」
「でしょ? お尻掘られたらああなっちゃうんだよ」
「そんなにいいんだ……」

 もう才造とは何年も付き合っているのに、まだ見たことのない姿があることが何だか嬉しかった。
 でも本人はいじけている。

「良くない。痛かった」
「すぐ慣れますよ。僕が慣らしてあげます♡」
「なんか穴ばっり増えて、あたしだけ突っ込むモノを持ってなくて申し訳ない気がしてきた。突っ込んでもらってばっかりで」

 そんな感想を漏らすと、累くんが可笑しそうにアハハと笑い、才造もあたしの胸の中で吹き出した。

「莉子に突起がついてたら一気に萎えるからやめて」
「いやいや、莉子ちゃんには唯一無二で最強の突起があるでしょ」

 累くんがそう言いながら起き上がり、才造の背中の方からガバッとあたしたち二人を丸ごと包み込んだ。そして才造の顔の横からはみ出したあたしの胸の肉を、ふにふにと触った。

「さいぞーさん、僕もそこに埋もれさせてください」
「ダメ。俺のおっぱい」
「僕らのおっぱいですよ」

 いや、あたしのだけどね。
 結局あたしが真ん中で仰向けになり、両脇から二人が片方ずつ掴むスタイルで落ち着く。たくさんの子犬に一斉にお乳をやる母犬の気分を味わえるやつだ。もしくは搾乳される牛。

「じゃあ……次は莉子ちゃんも開発しちゃおうか♡」
「いやっ、いい!!!」
「どうして? さっきのさいぞーさんを見て、ちょっと羨ましくなったんじゃないの?」
「前までさいぞーが拒否してたのと同じ理由で遠慮します」
「莉子がもっと理性を失うのは見てみたい」
「ほらね、さいぞーさんもこう言ってるよ♡」
「ほらね、じゃないよ」

 クスクス笑いながらエロトークを続けていた真っ最中、才造が突然ボソッと話題を変えた。

「……いつまで、さん付けで呼ぶわけ?」

 不意打ちだったので、あたしも累くんも何の話か一瞬分からなかったけど、どうやら累くんに向かって言ったらしい。

「えっ、僕ですか?」
「それ以外誰がいる。家族になったのに……いつまでも敬語使うのもおかしくない?」

 つまり翻訳すると、もう「さいぞー」と呼べ。敬語もいらん。ということなのだろう。

「その……職場では先輩だったし、最初に定着してしまっていて……」
「最初苗字呼びだったよな? いつの間にか勝手に下の名前に変えやがったくせに」
「そんなこともありましたねぇ」
「でもさ、よく考えたら二人とも歳同じなんだよね。もう職場も別だし、いいんじゃない? タメ口呼び捨てで。本人もそうして欲しいみたいだから。ほら、呼んでごらん」
「さいっ………さいぞー………」

 少し頬を赤らめながら口に出して、累くんは首をひねった。

「いや、なんか違う気が……別の人を呼んでるような気がします。僕の中で、やっぱりさいぞーさんはさいぞーさんなんですよ。莉子ちゃんも莉子ちゃん」
「何そのこだわり」
「何ていうか、僕の中では『さいぞーさん』と『莉子ちゃん』っていう名前なんですよ。最初からそう呼んで、呼びすぎたから」
「そうだね。1日何回呼んでるだろうね」
「莉子ちゃんもそうだよ。莉子って呼んだら別の人みたいだ」
「まぁ……そっか。あたしも累くんは累くんだし、今更呼び捨てでは呼べないかな」
「でしょ? なので呼び名はこのままでお願いします。タメ口は、なるべく頑張ります……いや、頑張る……っ!」
「あれ、ちょっと照れてる?」
「態度すげー図々しいくせに、なんでそこだけそんな丁重なの? 意味分からん」
「ずっと続けてきたのってなかなか抜けないよねぇ。でも、累くんでもそうやって照れるなんてことあるんだねぇ。可愛いじゃん♡ ね、さいぞー?」
「いや気色悪い」
「そんな天邪鬼なことを言うと……またお尻に突っ込みますよ? いや、突っ込むよ?」
「わざわざ言い直さんでいいし、やめて」
「やめてってことは、やってってことだよね?」
「コントじゃねんだよ」

 あたしはゲラゲラ笑った。

「じゃあ、もう1回戦行く?」
「え~? 明日ビーチ行くから、早めに寝なきゃ。体力持たないよ。時差ボケもあるしさぁ」
「だって初夜だよ? あ、莉子ちゃん、ビーチでは水着姿の写真バシバシ撮っていいんだよね?」
「そう口に出されるとなんか嫌……」
「じゃあ隠し撮りならいい?」
「さいぞーまで変態発言しないで! このムッツリが!!」
「あっ、ビーチ行ったら貝殻を拾ってきてさぁ、明日の夜は貝殻ブラでプレイってどう?」
「それいい。採用。お前天才か」
「いや褒めんな。発想がベタな上に古いよ」
「莉子ちゃんの乳輪がピッタリ隠れるくらいのサイズの貝探し、明日頑張ろう。さいぞーさん、どっちがよりフィットするのを見つけられるかバトルしよう」
「ヤバい明日それしか考えられなくなる」
「何しにハワイ来たの!? もーいい加減にして!」

 三人でキャッキャと騒ぎながら、オトナの修学旅行みたいなハネムーンの夜は更けて行った。













 人生にはスパイスが必要だ、なんて人は言う。

 あたしたちの選んだ道の上に用意されたスパイスは、きっと人の3倍辛くて、苦くて、渋くて、酸っぱくて――――


 それでいて、3000倍甘い。


 どうせならその全部、丸ごと美味しく味わい尽くしてやろうじゃないか。
 もう食べられないと音を上げる日はきっと来ない。

 あたしの目には、おじいちゃんになった二人の姿が、薔薇の花びらと一緒に見えているから。

















 これにて完結です。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました!!!

 賛否両論あるかと思いますが(3Pだけに……)お気に召しましたら、ぜひ感想をお聞かせいただけると幸いです(✿˘艸˘✿)
 面白かった、クソつまんねぇ、このキャラが好き、さいぞー派か累派かなど、一言だけでも構いません。
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 この作品に少しでも触れてくださった皆様に、大きな幸せが訪れることを心よりお祈り申し上げます(´∀`*)
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