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Episode2:No spice,No life
2-18 スパイスのない人生なんて【才造視点】※R18
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数時間後――
事を終え、しばらくの間、俺たち三人は誰も動けなかった。無論、誰も服など着ていない。
呼吸が落ち着いてもなお身体が重く、その場でベッドにへばりついていた。
莉子は力尽きたというよりも、恥ずかしさで穴があったら入りたいと言わんばかりにシーツにくるまり、身を縮めているだけのようだが。背後から抱きついてくっつきたかったが、間に大崎が寝転んでしまったので、寝返りのフリをして蹴飛ばしてやった。
そこから最初にムクッと起き上がったのは、やはり大崎だった。
「あ~ぁ、大惨事ですねぇ♡」
乱れたシーツ、あちこちに飛び散った体液、散乱するオモチャ。ヤツの言うとおり、どこからどう見ても正常な事態ではない。
「少なくとも……語尾にハートマークをつけて言う感想じゃねぇよ」
「そりゃハートマークも付きますよ。莉子ちゃん、すごいよ。盛大に発射したねぇ♡」
「やだ………もう恥ずかしくて顔を晒せない。あたしのことは放っといて。岩かなんかだと思って」
「でも岩になっちゃったら、アレ見られなくなっちゃうよ? 僕とさいぞーさんのキスシーン♡」
莉子がピクッと反応し、俺はギクッとした。
結論から言うと――俺は賭けに負けた。
三人同時に絶頂に達することができたらキス、その約束に躍起になった大崎が、ありとあらゆる道具や手段を駆使し、それをやり遂げた。
ヤツの執念を感じ、薄恐ろしくなった。
「僕の勝ちってことでいいですよね? 莉子ちゃんが長~く発射していてくれたおかげで間に合いましたね♡」
「や……厳密に言えば発射し始めるタイミングはバラバラだったし……」
「え~、ズルいですよ。そこまで合わなきゃいけないとは聞いてません」
「文句あんならVARでも持ってこい」
「あ~ぁ、逃げるつもりですかぁ?」
「……さいぞー、約束も守れない男だったんだ。自分から言い出したのに」
莉子がボソッと発した言葉がグサッと刺さったが、俺は身体に鞭打って起き上がり、ベッドを降りた。
「どこ行くんですか?」
「シャワーだよ! てめェの液付いた部分、死ぬほど洗うわ!!」
「ちぇー」
ブーブーと二人からクレームが上がった。
無視して風呂場へ行くと、なぜか二人ももれなくついて来て三人で浴槽に浸かった。
「誰だ、いつの間にか風呂沸かしたの」
「僕です♡ 事を始める前、シャワーを浴びた時ついでに。また汗をかくのは見えてましたからね」
「気が利くねぇ。お母さんみたい。ゴハンもおいしいし」
「どーでもいいけど狭いんだよ。何も三人一気に入らんでも……」
一般的な賃貸マンションのユニットバスに大人三人はさすがに無理がある。縮こまってブツブツ文句を垂れると、莉子がザパッと立ち上がった。
「じゃ、あたし髪洗おっと。ベットベトだし」
「手伝おうか♡」
「そこまで甘やかさなくていいから」
もはや莉子も大崎のあしらい方をよく心得ている。そんな莉子がシャンプーをして洗い流すのを、やはり大崎はニコニコしながら眺めていた。
「女の子が髪や身体を洗ってるのって、いいですよねぇ♡」
「もーっ、いちいち変態な感想言わなくていいよ。ちょっと黙ってて」
そんな二人のやりとりを見て、俺はというと――
いつか家を建てる時は、風呂場を広めに設計しようとか――
ベッドももっと大きいのに買い替えようとか――
そんなイカれたことばかりが頭に浮かんでいた。
長い髪にトリートメントを丁寧に塗る莉子と、それを見ながら穏やかに笑う大崎。
その横にいるのは、想いと言動が一致しないアマノジャクの意地っ張り。この二人は、そんな俺をいつまで好きと言ってくれるんだろうか。
そう考えると、無性に不安になった。
じっと大崎の顔を見る。
腹立つくらい整ってんな。こんな顔に生まれたら人生イージーモードだろうに、なんでわざわざこんなイカれた道を自ら選ぶのか。
家庭環境が複雑だったとか何とか言うが、それを加味しても、いくらでも他に生き方はあるだろう。
なのに。
俺は片手を伸ばし、いきなり大崎のアゴをガッ!! と乱暴に掴んでこちらへ顔を向けさせてやった。
ヤツが驚いたように目を見開き、トリートメントを洗い流していた莉子もこちらの様子に気が付いた。
何も言わず、何も告げず――俺は大崎の唇に自分の唇を押し当てた。
莉子が目と口をまん丸に開き、みるみる顔を赤く染めているのが分かった。
柔らかいだとか温かいだとか。そんなことを感じる前に、突き放すようにヤツと離れた。フンッと鼻を鳴らしながら。
何が起こったかわからないという風に大崎は固まり、目を見開いていた。
莉子も手が止まり、シャワーの水だけが無駄に流れ続けていたが、その目はキラキラと輝いている。
大崎が気色悪いことを言い出す前に、俺はシャワーをキュッと止めて浴槽の中から身を乗り出し、呆然としている莉子にチュッとキスをした。腹いせ――いや、口直しのつもりで。何度も何度も、チュッチュッと。
それで大崎はハタッと我に返ったらしい。
「さいぞーさん……今、僕にキス……」
「1回だけだからな」
「はい、解禁ですね♡」
「耳腐ってんのか」
莉子が可笑しそうにゲラゲラ笑った。
「ついに僕もさいぞーさんに認められ……しかも今それ、莉子ちゃんと僕も間接キスってことになりますよね?」
「黙れ」
「本当……夢みたいです♡ 今後、莉子ちゃんとの直接キスも解禁っていうことでいいですか?」
「え~……それはあたしが嫌かも」
「えっ。実は莉子ちゃんの方が僕を受け入れてないの? ちょっとショック」
「だって累くん、女友達みたいなもんなんだもん。桃と話すのと同じ感覚」
「母ちゃんだしな」
「そう」
「え~? セックスまでする間柄なのに。でもまぁ、それだけ頼れる大切な存在ってことだよね♡」
「出たよポジティブ」
狭い浴室内に、大崎の甘ったるい声と莉子の笑い声が響いた。
――この男の存在は多分、怖いもの見たさと似ている。
例えて言えば激辛グルメの限界に挑戦したりだとか、パクチーのクセを活かす工夫をしたりだとか、そんな感じだ。
使い方を誤れば、ただただクセが強いだけの刺激物。投入の仕方や、量にも絶妙なコツがある。でもいつの間にかクセになり、それなしではいられなくなってしまう。
くそ。いつの間にかまんまとクセにさせられたということか。
まぁ、美味ければ何でもいいか――
Episode2:完
◇
ここまでご覧いただきありがとうございます!
お気に入り登録、感想ぜひよろしくお願いします。
次話より最終章・Episode3に突入です(^^)
引き続きお付き合いいただけると幸いです♪
事を終え、しばらくの間、俺たち三人は誰も動けなかった。無論、誰も服など着ていない。
呼吸が落ち着いてもなお身体が重く、その場でベッドにへばりついていた。
莉子は力尽きたというよりも、恥ずかしさで穴があったら入りたいと言わんばかりにシーツにくるまり、身を縮めているだけのようだが。背後から抱きついてくっつきたかったが、間に大崎が寝転んでしまったので、寝返りのフリをして蹴飛ばしてやった。
そこから最初にムクッと起き上がったのは、やはり大崎だった。
「あ~ぁ、大惨事ですねぇ♡」
乱れたシーツ、あちこちに飛び散った体液、散乱するオモチャ。ヤツの言うとおり、どこからどう見ても正常な事態ではない。
「少なくとも……語尾にハートマークをつけて言う感想じゃねぇよ」
「そりゃハートマークも付きますよ。莉子ちゃん、すごいよ。盛大に発射したねぇ♡」
「やだ………もう恥ずかしくて顔を晒せない。あたしのことは放っといて。岩かなんかだと思って」
「でも岩になっちゃったら、アレ見られなくなっちゃうよ? 僕とさいぞーさんのキスシーン♡」
莉子がピクッと反応し、俺はギクッとした。
結論から言うと――俺は賭けに負けた。
三人同時に絶頂に達することができたらキス、その約束に躍起になった大崎が、ありとあらゆる道具や手段を駆使し、それをやり遂げた。
ヤツの執念を感じ、薄恐ろしくなった。
「僕の勝ちってことでいいですよね? 莉子ちゃんが長~く発射していてくれたおかげで間に合いましたね♡」
「や……厳密に言えば発射し始めるタイミングはバラバラだったし……」
「え~、ズルいですよ。そこまで合わなきゃいけないとは聞いてません」
「文句あんならVARでも持ってこい」
「あ~ぁ、逃げるつもりですかぁ?」
「……さいぞー、約束も守れない男だったんだ。自分から言い出したのに」
莉子がボソッと発した言葉がグサッと刺さったが、俺は身体に鞭打って起き上がり、ベッドを降りた。
「どこ行くんですか?」
「シャワーだよ! てめェの液付いた部分、死ぬほど洗うわ!!」
「ちぇー」
ブーブーと二人からクレームが上がった。
無視して風呂場へ行くと、なぜか二人ももれなくついて来て三人で浴槽に浸かった。
「誰だ、いつの間にか風呂沸かしたの」
「僕です♡ 事を始める前、シャワーを浴びた時ついでに。また汗をかくのは見えてましたからね」
「気が利くねぇ。お母さんみたい。ゴハンもおいしいし」
「どーでもいいけど狭いんだよ。何も三人一気に入らんでも……」
一般的な賃貸マンションのユニットバスに大人三人はさすがに無理がある。縮こまってブツブツ文句を垂れると、莉子がザパッと立ち上がった。
「じゃ、あたし髪洗おっと。ベットベトだし」
「手伝おうか♡」
「そこまで甘やかさなくていいから」
もはや莉子も大崎のあしらい方をよく心得ている。そんな莉子がシャンプーをして洗い流すのを、やはり大崎はニコニコしながら眺めていた。
「女の子が髪や身体を洗ってるのって、いいですよねぇ♡」
「もーっ、いちいち変態な感想言わなくていいよ。ちょっと黙ってて」
そんな二人のやりとりを見て、俺はというと――
いつか家を建てる時は、風呂場を広めに設計しようとか――
ベッドももっと大きいのに買い替えようとか――
そんなイカれたことばかりが頭に浮かんでいた。
長い髪にトリートメントを丁寧に塗る莉子と、それを見ながら穏やかに笑う大崎。
その横にいるのは、想いと言動が一致しないアマノジャクの意地っ張り。この二人は、そんな俺をいつまで好きと言ってくれるんだろうか。
そう考えると、無性に不安になった。
じっと大崎の顔を見る。
腹立つくらい整ってんな。こんな顔に生まれたら人生イージーモードだろうに、なんでわざわざこんなイカれた道を自ら選ぶのか。
家庭環境が複雑だったとか何とか言うが、それを加味しても、いくらでも他に生き方はあるだろう。
なのに。
俺は片手を伸ばし、いきなり大崎のアゴをガッ!! と乱暴に掴んでこちらへ顔を向けさせてやった。
ヤツが驚いたように目を見開き、トリートメントを洗い流していた莉子もこちらの様子に気が付いた。
何も言わず、何も告げず――俺は大崎の唇に自分の唇を押し当てた。
莉子が目と口をまん丸に開き、みるみる顔を赤く染めているのが分かった。
柔らかいだとか温かいだとか。そんなことを感じる前に、突き放すようにヤツと離れた。フンッと鼻を鳴らしながら。
何が起こったかわからないという風に大崎は固まり、目を見開いていた。
莉子も手が止まり、シャワーの水だけが無駄に流れ続けていたが、その目はキラキラと輝いている。
大崎が気色悪いことを言い出す前に、俺はシャワーをキュッと止めて浴槽の中から身を乗り出し、呆然としている莉子にチュッとキスをした。腹いせ――いや、口直しのつもりで。何度も何度も、チュッチュッと。
それで大崎はハタッと我に返ったらしい。
「さいぞーさん……今、僕にキス……」
「1回だけだからな」
「はい、解禁ですね♡」
「耳腐ってんのか」
莉子が可笑しそうにゲラゲラ笑った。
「ついに僕もさいぞーさんに認められ……しかも今それ、莉子ちゃんと僕も間接キスってことになりますよね?」
「黙れ」
「本当……夢みたいです♡ 今後、莉子ちゃんとの直接キスも解禁っていうことでいいですか?」
「え~……それはあたしが嫌かも」
「えっ。実は莉子ちゃんの方が僕を受け入れてないの? ちょっとショック」
「だって累くん、女友達みたいなもんなんだもん。桃と話すのと同じ感覚」
「母ちゃんだしな」
「そう」
「え~? セックスまでする間柄なのに。でもまぁ、それだけ頼れる大切な存在ってことだよね♡」
「出たよポジティブ」
狭い浴室内に、大崎の甘ったるい声と莉子の笑い声が響いた。
――この男の存在は多分、怖いもの見たさと似ている。
例えて言えば激辛グルメの限界に挑戦したりだとか、パクチーのクセを活かす工夫をしたりだとか、そんな感じだ。
使い方を誤れば、ただただクセが強いだけの刺激物。投入の仕方や、量にも絶妙なコツがある。でもいつの間にかクセになり、それなしではいられなくなってしまう。
くそ。いつの間にかまんまとクセにさせられたということか。
まぁ、美味ければ何でもいいか――
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