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異世界に来て早々私の人生が詰んだ話
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そしてその瞬間、私は死を悟った。たった一回。たった一回瞬きをしただけなのに、次に目を開けるとウィンストンさんの顔が近くにあるではないか。私の首元に小さなナイフを添えて。おそらく食事用のナイフであろうそれで首を切られでもしたら私は一貫の終わりだ。
一体私が何をしたと言うのか、普通に考えて異世界転生とやらなら普通なら転生早々に愛され展開だと思うんだけど、どうして私は異世界に来てまでも厳しい視線にさらされなければいけないんだろう。
「もう一度問う。貴様はどこから来た」
「わ、わたしは何も覚えていなくて」
そう答えると首元に力がこもって、すっと首筋から少量の血が流れている事に気付いて首をゴクリと鳴らしてしまった。ナイフを添えている方と反対の手で顎をくいっと握られ無理やり視線を合わせているため避ける事も出来ない。
「そればらば何故あの庭に居た?あそこは王子と数人の護衛だけで済むほどの安心で安全な王子のプライベート空間であったはずだ。王子が勉強から逃げ出す事が多いからどの場所よりも丁寧に警備をしている」
色々と突っ込みたい事はあったけど、私は一つの言葉に違和感を覚えた。護衛だって?しかし城に着くまでの間、私の目の前には王子しかいなかったはずだ。他に居たのは訓練をしていたであろう騎士や、林を駆け回る騎士。いずれも警備や護衛をしているようにも見えなかった。
「まあ今口を割らなくても構わない。私とて君に全ての時間を割く時間が無い」
そうしてウィンストンさんが私から離れて安堵したのもつかの間。彼が手を二回叩いたと同時に部屋の中に六人ほどの騎士が続々と現れた。入口から四人、部屋の隅から二人だ。いずれも剣や槍を構えているが鎧じゃないワイシャツ等の軽装を身にまとっている。
急な出来事に、ついに私はその場から崩れ落ちて体を震わせる。仕事のストレスには慣れているけど、こんな死と隣り合わせな状況何て産まれて初めて。じわじわと涙がでてくるものの、この場に私の味方は誰一人も存在しない。
しかも意味わからない。部屋の外からやってきた四人は分かるけど、部屋の隅から姿を現した彼らは何者なのか。この部屋にはさっき出て行ったアレクサンダー王子と彼しかいなかったはず。あたり一面を見てもクローゼットのようなものもないし、天井に隠れるような何かがあるようにも思えない。
現実逃避をしつつ様々な事を考えていると突然、強い痛みと共に両手が背中の方に回されて紐のようなもので拘束される。そして一人の男に乱暴に持ち上げられて、肩で担がれてしまう。この体制だと私の下着が丸見えだ。場違いながらもそんな考えが真っ先に浮かんできて恥ずかしさに目をぎゅっと閉じてしまう。
すると一連の出来事を見ていたであろうウィンストンさんがもう一度口を開いた。
「私は既に、王子の護衛から情報を得ていた。さっき部屋の隅からでてきたこの二人です。すごいでしょう、王家に選ばれている彼らは影に溶け込む事に長けているんです。まあ無駄口もここまででいいですね。さあ早くこの者を地下牢へ連れていけ。決して王子に悟られるなよ」
愛されでなかったとしても、もしここが異世界で元の世界に帰れないのだとしてものんびり過ごすのも悪くはないと思っていた時間もあったけど前言撤回。おばさん、これならまだ仕事のストレスに耐える方が何倍もマシだと思う。
「私は、子どもじゃない。立派な大人ですよっっ」
せめてもの抵抗で運ばれながらもそう叫ぶと、担がれている影響で逆さに見えるウィンストンさん、いやもうさん付けすらもしたくない。ウィンストンのばかやろうが鼻で笑って、手加減をしなくて済みそうですと言ってのけた。ここまででいったいあんたがいつ手加減をしたと言うのだ!最初から最後まで鬼ではないか。
私も私で意地になって、地下牢へ運ばれていく中ひたすらウィンストンに対して私の語彙力の限りの悪口をたくさん、たくさん叫んだ。
一体私が何をしたと言うのか、普通に考えて異世界転生とやらなら普通なら転生早々に愛され展開だと思うんだけど、どうして私は異世界に来てまでも厳しい視線にさらされなければいけないんだろう。
「もう一度問う。貴様はどこから来た」
「わ、わたしは何も覚えていなくて」
そう答えると首元に力がこもって、すっと首筋から少量の血が流れている事に気付いて首をゴクリと鳴らしてしまった。ナイフを添えている方と反対の手で顎をくいっと握られ無理やり視線を合わせているため避ける事も出来ない。
「そればらば何故あの庭に居た?あそこは王子と数人の護衛だけで済むほどの安心で安全な王子のプライベート空間であったはずだ。王子が勉強から逃げ出す事が多いからどの場所よりも丁寧に警備をしている」
色々と突っ込みたい事はあったけど、私は一つの言葉に違和感を覚えた。護衛だって?しかし城に着くまでの間、私の目の前には王子しかいなかったはずだ。他に居たのは訓練をしていたであろう騎士や、林を駆け回る騎士。いずれも警備や護衛をしているようにも見えなかった。
「まあ今口を割らなくても構わない。私とて君に全ての時間を割く時間が無い」
そうしてウィンストンさんが私から離れて安堵したのもつかの間。彼が手を二回叩いたと同時に部屋の中に六人ほどの騎士が続々と現れた。入口から四人、部屋の隅から二人だ。いずれも剣や槍を構えているが鎧じゃないワイシャツ等の軽装を身にまとっている。
急な出来事に、ついに私はその場から崩れ落ちて体を震わせる。仕事のストレスには慣れているけど、こんな死と隣り合わせな状況何て産まれて初めて。じわじわと涙がでてくるものの、この場に私の味方は誰一人も存在しない。
しかも意味わからない。部屋の外からやってきた四人は分かるけど、部屋の隅から姿を現した彼らは何者なのか。この部屋にはさっき出て行ったアレクサンダー王子と彼しかいなかったはず。あたり一面を見てもクローゼットのようなものもないし、天井に隠れるような何かがあるようにも思えない。
現実逃避をしつつ様々な事を考えていると突然、強い痛みと共に両手が背中の方に回されて紐のようなもので拘束される。そして一人の男に乱暴に持ち上げられて、肩で担がれてしまう。この体制だと私の下着が丸見えだ。場違いながらもそんな考えが真っ先に浮かんできて恥ずかしさに目をぎゅっと閉じてしまう。
すると一連の出来事を見ていたであろうウィンストンさんがもう一度口を開いた。
「私は既に、王子の護衛から情報を得ていた。さっき部屋の隅からでてきたこの二人です。すごいでしょう、王家に選ばれている彼らは影に溶け込む事に長けているんです。まあ無駄口もここまででいいですね。さあ早くこの者を地下牢へ連れていけ。決して王子に悟られるなよ」
愛されでなかったとしても、もしここが異世界で元の世界に帰れないのだとしてものんびり過ごすのも悪くはないと思っていた時間もあったけど前言撤回。おばさん、これならまだ仕事のストレスに耐える方が何倍もマシだと思う。
「私は、子どもじゃない。立派な大人ですよっっ」
せめてもの抵抗で運ばれながらもそう叫ぶと、担がれている影響で逆さに見えるウィンストンさん、いやもうさん付けすらもしたくない。ウィンストンのばかやろうが鼻で笑って、手加減をしなくて済みそうですと言ってのけた。ここまででいったいあんたがいつ手加減をしたと言うのだ!最初から最後まで鬼ではないか。
私も私で意地になって、地下牢へ運ばれていく中ひたすらウィンストンに対して私の語彙力の限りの悪口をたくさん、たくさん叫んだ。
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