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第五章 人神異界最終決戦
終曲 10年後
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人の世が訪れた早くも10年が過ぎた。
様々な問題が異界ゴルドバレーを襲い、激動とも言える時を過ごしていた。
だが、それでも国同士はいがみ合うことなく、互いに手を取り合った。人が紡いだ世界を守り抜くために。
「余は剣聖と成る者! 覚悟しろ! カツラギ・バサラ!」
薄い金髪を短く整えた幼き少女は蒼い双眸で捉えた男に目掛けて手に持っていた木刀で彼の頭に振り抜いた。
洗濯物を乾かすために両手に衣類を持った男は背後を取られていたにも関わらず、振り向くことなく避けると干す作業をやめいない。そんな姿を見て少女は次の攻撃に動く。少女は木刀を投げつけると男は持っていた衣類を全て干し終わったのかそれを簡単にキャッチした。
「やるな!」
少女は準備をしていた木剣を握りしめており、男に目掛けて振るうと彼は投げつけられた木刀で弾いた。
自分よりも背が高い相手にも関わらず、飛び跳ねながら腹部へと蹴りを入れるとそこから回転しながら剣での一撃を放つ。流れる様な動きであるにも関わらず、男には一切届かず、木刀一本で全て防ぎ切ると少女の息が少し上がった瞬間、彼は一気に距離を詰めた。
木刀の刃を少女の頭にぶつける直前に寄せると彼女は動かなくなり、木剣を地面に落とした。次の瞬間、木刀を蹴り上げ、地面に落とした剣を取ろうと目も向けずにそこにそれがあると確信して動いた。
だが、そこに手に握ろうとした剣が無く、少女は下を向くと男により、剣が遠くに蹴り飛ばされていた。そして、前を向くと再び顔の直前で木刀が置かれており、男はニッコリと微笑んだ。
「むむむむ、負けた」
少女は悔しそうにしているとそんな彼女の頭をポンポンと男は優しく撫でた。
「すごいね、アスカ。あんなに動けるなんて」
「すごくもなんともない。余は剣聖を目指しているのに、今の剣聖を倒せない」
「そんなことないさ! その歳でこれだけ動けるなんてすごいことなんだよ!」
二人が笑っているとその背後に迫る影があった。
「二人とも仲が良いのは結構、でも、洗濯物を汚したのには何か言うことある?」
バサラとアスカの二人は震えながら後ろを振り向くとそこには眼帯をしたジータがニッコリと笑っていた。
「「ご、ごめんなさい」」
「謝れるのは偉いですね。でも、やってしまったことはどうしようもない。さてさて、どうしましょうか、アスカにはおやつ抜き、バサラには今日の夕飯の当番でどうかしら」
ジータがバサラとアスカを叱る後ろでアスカと同じ歳の黒い髪の少年が汚れてしまった洗濯物見ながら目の前で何かを書くとそれから一瞬にして真っ白にする。片眼はアスカ同様に蒼く、もう片方は翡翠の色で陽の光に照らされながら美しく輝かせるとジータに喋りかけた。
「母さん、アスカと父さんをそんなに怒らないであげて。これくらいなら僕の陣でいくらでも綺麗になるし」
「「ヤマト!」」
アスカとバサラは目を輝かせるとジータはため息を吐く。
「ヤマト、そうやって二人を甘やかしちゃいけません」
「ごめんね、母さん。でも、試したい陣があったから、ついね。アスカ、父さん、これに懲りたらもう洗濯物がある中では組み手をしちゃダメだよ」
「「はーい」」
二人は手を挙げるとアスカはすぐにヤマトに抱きついた。
「褒めて遣わす! ヤマト、良くぞ救ってくれた」
「お褒め頂き光栄。それはそうとアスカ、今日の父さんの動きはどうだった?」
「一切衰えなし、余ではまだ叶わなかった」
「僕の教えた戦術でもダメだった?」
「ダメだった」
抱きつくのをやめると口をつんと尖らせながら悔しそうにしているアスカをヤマトはそんな彼女をあやす様に頭を撫でる。
「うーん、次は二人がかりでやろう。僕の陣も全部使って一本取ろう」
「それでは余の勝利ではない」
「何言ってんだい? アスカ。僕と君は双子だろ? それなら僕達の勝利は君の勝利でもあるんだから」
「む、たしかに。それなら余の横に立つのを許す」
「仰せのままに、僕の覇王」
アスカとヤマトは手を繋ぎ、家の中に入って行くとジータとバサラも嬉しそうに彼らの背中を見つめる。
「バサラ、私達も家に戻りましょう」
ジータは彼の目の前に手を出すとバサラはすぐにそれを取り、応えた。
「そうだね!」
そんな彼らを優しく見守る二つの影。
彼らはバサラとジータには見えないがそれでも二人は彼らに多くの幸があらんことを祈り、姿を消した。
優しく空から陽の光が降り注ぎ、彼らを明るく照らし続ける。
田舎暮らしの神殺し、二度目の神殺しに挑む~余生は静かに暮らしたいのに弟子達がさせてくれない件~ 完
next
黒の退魔士
To Be Continued
様々な問題が異界ゴルドバレーを襲い、激動とも言える時を過ごしていた。
だが、それでも国同士はいがみ合うことなく、互いに手を取り合った。人が紡いだ世界を守り抜くために。
「余は剣聖と成る者! 覚悟しろ! カツラギ・バサラ!」
薄い金髪を短く整えた幼き少女は蒼い双眸で捉えた男に目掛けて手に持っていた木刀で彼の頭に振り抜いた。
洗濯物を乾かすために両手に衣類を持った男は背後を取られていたにも関わらず、振り向くことなく避けると干す作業をやめいない。そんな姿を見て少女は次の攻撃に動く。少女は木刀を投げつけると男は持っていた衣類を全て干し終わったのかそれを簡単にキャッチした。
「やるな!」
少女は準備をしていた木剣を握りしめており、男に目掛けて振るうと彼は投げつけられた木刀で弾いた。
自分よりも背が高い相手にも関わらず、飛び跳ねながら腹部へと蹴りを入れるとそこから回転しながら剣での一撃を放つ。流れる様な動きであるにも関わらず、男には一切届かず、木刀一本で全て防ぎ切ると少女の息が少し上がった瞬間、彼は一気に距離を詰めた。
木刀の刃を少女の頭にぶつける直前に寄せると彼女は動かなくなり、木剣を地面に落とした。次の瞬間、木刀を蹴り上げ、地面に落とした剣を取ろうと目も向けずにそこにそれがあると確信して動いた。
だが、そこに手に握ろうとした剣が無く、少女は下を向くと男により、剣が遠くに蹴り飛ばされていた。そして、前を向くと再び顔の直前で木刀が置かれており、男はニッコリと微笑んだ。
「むむむむ、負けた」
少女は悔しそうにしているとそんな彼女の頭をポンポンと男は優しく撫でた。
「すごいね、アスカ。あんなに動けるなんて」
「すごくもなんともない。余は剣聖を目指しているのに、今の剣聖を倒せない」
「そんなことないさ! その歳でこれだけ動けるなんてすごいことなんだよ!」
二人が笑っているとその背後に迫る影があった。
「二人とも仲が良いのは結構、でも、洗濯物を汚したのには何か言うことある?」
バサラとアスカの二人は震えながら後ろを振り向くとそこには眼帯をしたジータがニッコリと笑っていた。
「「ご、ごめんなさい」」
「謝れるのは偉いですね。でも、やってしまったことはどうしようもない。さてさて、どうしましょうか、アスカにはおやつ抜き、バサラには今日の夕飯の当番でどうかしら」
ジータがバサラとアスカを叱る後ろでアスカと同じ歳の黒い髪の少年が汚れてしまった洗濯物見ながら目の前で何かを書くとそれから一瞬にして真っ白にする。片眼はアスカ同様に蒼く、もう片方は翡翠の色で陽の光に照らされながら美しく輝かせるとジータに喋りかけた。
「母さん、アスカと父さんをそんなに怒らないであげて。これくらいなら僕の陣でいくらでも綺麗になるし」
「「ヤマト!」」
アスカとバサラは目を輝かせるとジータはため息を吐く。
「ヤマト、そうやって二人を甘やかしちゃいけません」
「ごめんね、母さん。でも、試したい陣があったから、ついね。アスカ、父さん、これに懲りたらもう洗濯物がある中では組み手をしちゃダメだよ」
「「はーい」」
二人は手を挙げるとアスカはすぐにヤマトに抱きついた。
「褒めて遣わす! ヤマト、良くぞ救ってくれた」
「お褒め頂き光栄。それはそうとアスカ、今日の父さんの動きはどうだった?」
「一切衰えなし、余ではまだ叶わなかった」
「僕の教えた戦術でもダメだった?」
「ダメだった」
抱きつくのをやめると口をつんと尖らせながら悔しそうにしているアスカをヤマトはそんな彼女をあやす様に頭を撫でる。
「うーん、次は二人がかりでやろう。僕の陣も全部使って一本取ろう」
「それでは余の勝利ではない」
「何言ってんだい? アスカ。僕と君は双子だろ? それなら僕達の勝利は君の勝利でもあるんだから」
「む、たしかに。それなら余の横に立つのを許す」
「仰せのままに、僕の覇王」
アスカとヤマトは手を繋ぎ、家の中に入って行くとジータとバサラも嬉しそうに彼らの背中を見つめる。
「バサラ、私達も家に戻りましょう」
ジータは彼の目の前に手を出すとバサラはすぐにそれを取り、応えた。
「そうだね!」
そんな彼らを優しく見守る二つの影。
彼らはバサラとジータには見えないがそれでも二人は彼らに多くの幸があらんことを祈り、姿を消した。
優しく空から陽の光が降り注ぎ、彼らを明るく照らし続ける。
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追記:執筆、頑張ってください!
感想ありがとうございます!!!!
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これからも何卒よろしくお願いします!
ジータの根拠が感ですで笑いましたw
お師様との掛け合いが面白すぎです( ◜‿◝ )♡
蘭さん感想ありがとうございます!
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