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第五章 人神異界最終決戦
幕間 夢の狭間で
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***
「これにて閉幕、神は落ち、世界は真の意味での人のモノとなったとさ。僕の物語はここまで、次週からはまた、別の物語でお会いしましょう」
ロキは何処かを向きながら一人でお辞儀をしていた。
彼は目覚めた瞬間、その場が何処か知っており、自由気ままに過ごした。バサラが最後の一撃をナナシにぶつけ、その剣を空に掲げた姿を見て、ロキは自分の思惑通りに事が進んだ事で満足気な表情を浮かべるとその場を去ろうと背を向ける。
(誰が英雄を讃えるか。それは僕じゃない。君を囲う人々だ。僕なんかの神に讃えられるより、よっぽど嬉しいだろ? バサラ)
悔いはない。
それだけは確かであり、満足の行く死を自分でも迎えられたと歩き出そうとした。
「私の体なのに容赦のない、これ全部あんたのせいよ、ローズル」
背を向けた途端、その声を聞き、ロキは直ぐに踵を返し、背後に視線を寄越した。
「アイリス、なのかい?」
珍しく戸惑いにより、きょとんとした表情をロキは見せると白い美しい髪を靡かせ、その翡翠の双眸を持つアイリスと思われる少女は彼の質問に対して応えた。
「当たり前でしょ、あんたの家族は私なんだから」
「いやいや、幾ら何でもそれはないだろう? 僕は君を殺した張本人だ、それを家族だなんて」
「それはそれ、これはこれでしょ」
アイリスは不思議そうにロキを見ると彼は眼に手を置いた。
「普通は僕の兄、オーディンとか、トールとかじゃないの?」
「あの人たち声かけたらあいつは好きにしたから自分達も好きにするって言って来なかったわよ」
「まぁ、兄さん達らしい」
「でも、好きにした結果は褒めてやるって伝えろって強めに言われた。正直、あれをバサラが殺したとか本当なのか疑問に思えるくらい怖かったんだけど」
「それ、は…、らしくないな」
アイリスはロキの目の前に手を出すとニコリと笑顔を浮かべ、彼が手を置くのを待った。その手をロキは素直に取ることなどは絶対に出来ないと自身で決めており、彼は手を出そうとしなかった。
「アイリス、君はさ、僕のことを恨んでいないのかい?」
「恨んでるわよ! せっかくバサラに告白したその日に殺されてんだから! しかも、私の体はバサラに切られるし! 恨み言も、文句も幾らでも出てくるくらいには怒ってるわ! でもね、あんたはあんたの運命のために一生懸命になっていた。そして、それが結果として、バサラがあんた達、神と言う名の不条理を殺すに至った。両方ともいっぱいいっぱいでそれでも自分を曲げずにやり抜いたんだから、私はそんなあんたらを責めることなんてするわけないでしょ!」
そう言うとニッと口角を上げ、アイリスは眩いまでの笑みを見せるとついさっきまで戦っていたナナシとは全く違う、あたたかく優しいものであり、ロキは込み上げるものがあったのか何も言わずに俯いた。
「はぁ、バサラもアイリスも、本当に大馬鹿野郎だね」
「そんなん当たり前でしょ! あんたの家族よ! 三人とも大馬鹿野郎。それでいいじゃない」
自身の顔に流れていた様に感じた水玉を直ぐに拭い、ロキはアイリスの手を取った。
「ほら、早く立って! 色々聞きたいことあるんだから!」
「はは、そうかい。君の質問には何でも答えないとなぁ」
「先ずはねー、バサラの弟子のジータって子の話聞かせてよ」
「それ僕に聞いても対して情報ないよ」
互いに話したいことは幾つもあり、話題にかけることは無い。ロキはアイリスの手に引かれながら二人は光が差す方へと歩き出す。
「これにて閉幕、神は落ち、世界は真の意味での人のモノとなったとさ。僕の物語はここまで、次週からはまた、別の物語でお会いしましょう」
ロキは何処かを向きながら一人でお辞儀をしていた。
彼は目覚めた瞬間、その場が何処か知っており、自由気ままに過ごした。バサラが最後の一撃をナナシにぶつけ、その剣を空に掲げた姿を見て、ロキは自分の思惑通りに事が進んだ事で満足気な表情を浮かべるとその場を去ろうと背を向ける。
(誰が英雄を讃えるか。それは僕じゃない。君を囲う人々だ。僕なんかの神に讃えられるより、よっぽど嬉しいだろ? バサラ)
悔いはない。
それだけは確かであり、満足の行く死を自分でも迎えられたと歩き出そうとした。
「私の体なのに容赦のない、これ全部あんたのせいよ、ローズル」
背を向けた途端、その声を聞き、ロキは直ぐに踵を返し、背後に視線を寄越した。
「アイリス、なのかい?」
珍しく戸惑いにより、きょとんとした表情をロキは見せると白い美しい髪を靡かせ、その翡翠の双眸を持つアイリスと思われる少女は彼の質問に対して応えた。
「当たり前でしょ、あんたの家族は私なんだから」
「いやいや、幾ら何でもそれはないだろう? 僕は君を殺した張本人だ、それを家族だなんて」
「それはそれ、これはこれでしょ」
アイリスは不思議そうにロキを見ると彼は眼に手を置いた。
「普通は僕の兄、オーディンとか、トールとかじゃないの?」
「あの人たち声かけたらあいつは好きにしたから自分達も好きにするって言って来なかったわよ」
「まぁ、兄さん達らしい」
「でも、好きにした結果は褒めてやるって伝えろって強めに言われた。正直、あれをバサラが殺したとか本当なのか疑問に思えるくらい怖かったんだけど」
「それ、は…、らしくないな」
アイリスはロキの目の前に手を出すとニコリと笑顔を浮かべ、彼が手を置くのを待った。その手をロキは素直に取ることなどは絶対に出来ないと自身で決めており、彼は手を出そうとしなかった。
「アイリス、君はさ、僕のことを恨んでいないのかい?」
「恨んでるわよ! せっかくバサラに告白したその日に殺されてんだから! しかも、私の体はバサラに切られるし! 恨み言も、文句も幾らでも出てくるくらいには怒ってるわ! でもね、あんたはあんたの運命のために一生懸命になっていた。そして、それが結果として、バサラがあんた達、神と言う名の不条理を殺すに至った。両方ともいっぱいいっぱいでそれでも自分を曲げずにやり抜いたんだから、私はそんなあんたらを責めることなんてするわけないでしょ!」
そう言うとニッと口角を上げ、アイリスは眩いまでの笑みを見せるとついさっきまで戦っていたナナシとは全く違う、あたたかく優しいものであり、ロキは込み上げるものがあったのか何も言わずに俯いた。
「はぁ、バサラもアイリスも、本当に大馬鹿野郎だね」
「そんなん当たり前でしょ! あんたの家族よ! 三人とも大馬鹿野郎。それでいいじゃない」
自身の顔に流れていた様に感じた水玉を直ぐに拭い、ロキはアイリスの手を取った。
「ほら、早く立って! 色々聞きたいことあるんだから!」
「はは、そうかい。君の質問には何でも答えないとなぁ」
「先ずはねー、バサラの弟子のジータって子の話聞かせてよ」
「それ僕に聞いても対して情報ないよ」
互いに話したいことは幾つもあり、話題にかけることは無い。ロキはアイリスの手に引かれながら二人は光が差す方へと歩き出す。
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