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第四章 人神代理戦争 霹靂
五十二話 人神代理戦争 其の参拾伍 戦鬼召使⑧
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「なんで、死んでないだろ」
召使が呟くと横でエイブラハムが座っていた。互いにボロボロになっており、それでもエイブラハムがトドメを刺さなかったことで自身に生殺与奪権は無いと納得し、召使は彼に喋りかけた。
「なぁ、エイブラハム、なんで殺さなかった?」
「ああん? そりゃ、死にたそうにしてるやつを殺すのは贅沢だろ。勝負でもなんで勝った方が得するんだよ。それなら俺はお前を殺さずに生かしたいってだけだ」
「そうか、なぁ、僕はなんのために生きてるんなにもだと思う?」
「質問が多いな。別に生きるのに目標なんて要らねえだろ。あった方が有意義かもしれんが、無くてもぶっちゃけ生きてけると思うぜ。昔の俺はそう言うタイプだったしな」
エイブラハムも疲れたのか自身の体についていた幾つもの切り傷に包帯を巻き始めると召使はぼんやりと空を眺めながら声を上げた。
「僕はさ、昔、依頼でなんでもこなす、なんでもやる、そんな人間だった。家事も、育児も、結婚も、殺しも全て依頼を受けたからこなしてきた。だけど、この一度だけ受けた結婚と言う依頼、それがあまりにも僕と言う存在に、何もなかった存在に色をつけてしまった」
「んだよ、後悔ばっかだな。お前、あんなにキレてたのに語るのは後悔だけか?」
「そうだよ。でもね、僕に色をつけてくれた彼女を僕は、自分の手で殺した。彼女が最後に自由に生きろって言われて何をしていいか分からず、いつの間にか、ここに来て何をすべきか分からずに流されるがままに」
「だぁー! もういいわ! 別にいいんにじゃねえか? 過去の後悔はいつになっても消えねえし、過去への未練はいつまでもついてくる。結婚を依頼で受けて自分が変わったが、その相手を自分で殺した? そりゃ、その時のお前の選択を悔いるのはいい。だけどな、そいだ言ってたんだろ? 好きに生きろって。お前は今それに則ってんじゃねえの?」
エイブラハムの言葉、それの意味がわからず、召使は返すことが出来ずに黙ってしまう。それに対してエイブラハムはため息を吐きながら再び口を開いた。
「無意識のうちにこなしてんだよ、お前は。好きに生きろって言葉を。別に死にたきゃ死にゃいいだろ。だけど、お前は俺と戦って生き延びた。死にたい死にたいって言いながら、体は生きようとしてる。随分と良い人に出会えたんじゃねえか。最後にかける言葉が生きろなんて」
エイブラハムはニッと笑い、召使に笑いかける。召使は何も言わずに、隠すために腕を顔に置いた。
「そうか、僕は好きに生きてるからこそ、悩んでるのか」
「少なくとも俺はそう思うね。いつか、自分の目標が生まれるかもしれないし、見つけられずに死ぬかもしれない」
「はは、それなら最後まで生きて、みようかな。彼女の依頼のため」
「てか、そんなに良い人なら馴れ初めとか聞かせろよ。俺、詳細もなん知らずにお前の話聞いてんだけど」
「そうか、それなら、少し話そうかな」
召使が呟くと横でエイブラハムが座っていた。互いにボロボロになっており、それでもエイブラハムがトドメを刺さなかったことで自身に生殺与奪権は無いと納得し、召使は彼に喋りかけた。
「なぁ、エイブラハム、なんで殺さなかった?」
「ああん? そりゃ、死にたそうにしてるやつを殺すのは贅沢だろ。勝負でもなんで勝った方が得するんだよ。それなら俺はお前を殺さずに生かしたいってだけだ」
「そうか、なぁ、僕はなんのために生きてるんなにもだと思う?」
「質問が多いな。別に生きるのに目標なんて要らねえだろ。あった方が有意義かもしれんが、無くてもぶっちゃけ生きてけると思うぜ。昔の俺はそう言うタイプだったしな」
エイブラハムも疲れたのか自身の体についていた幾つもの切り傷に包帯を巻き始めると召使はぼんやりと空を眺めながら声を上げた。
「僕はさ、昔、依頼でなんでもこなす、なんでもやる、そんな人間だった。家事も、育児も、結婚も、殺しも全て依頼を受けたからこなしてきた。だけど、この一度だけ受けた結婚と言う依頼、それがあまりにも僕と言う存在に、何もなかった存在に色をつけてしまった」
「んだよ、後悔ばっかだな。お前、あんなにキレてたのに語るのは後悔だけか?」
「そうだよ。でもね、僕に色をつけてくれた彼女を僕は、自分の手で殺した。彼女が最後に自由に生きろって言われて何をしていいか分からず、いつの間にか、ここに来て何をすべきか分からずに流されるがままに」
「だぁー! もういいわ! 別にいいんにじゃねえか? 過去の後悔はいつになっても消えねえし、過去への未練はいつまでもついてくる。結婚を依頼で受けて自分が変わったが、その相手を自分で殺した? そりゃ、その時のお前の選択を悔いるのはいい。だけどな、そいだ言ってたんだろ? 好きに生きろって。お前は今それに則ってんじゃねえの?」
エイブラハムの言葉、それの意味がわからず、召使は返すことが出来ずに黙ってしまう。それに対してエイブラハムはため息を吐きながら再び口を開いた。
「無意識のうちにこなしてんだよ、お前は。好きに生きろって言葉を。別に死にたきゃ死にゃいいだろ。だけど、お前は俺と戦って生き延びた。死にたい死にたいって言いながら、体は生きようとしてる。随分と良い人に出会えたんじゃねえか。最後にかける言葉が生きろなんて」
エイブラハムはニッと笑い、召使に笑いかける。召使は何も言わずに、隠すために腕を顔に置いた。
「そうか、僕は好きに生きてるからこそ、悩んでるのか」
「少なくとも俺はそう思うね。いつか、自分の目標が生まれるかもしれないし、見つけられずに死ぬかもしれない」
「はは、それなら最後まで生きて、みようかな。彼女の依頼のため」
「てか、そんなに良い人なら馴れ初めとか聞かせろよ。俺、詳細もなん知らずにお前の話聞いてんだけど」
「そうか、それなら、少し話そうかな」
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