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第四章 人神代理戦争 霹靂

二十二話 人神代理戦争 其の捌 竜殺帰還③

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 虚空万象ヴォイドゾーン
 帰還者リターナー本人が作り出した、無量辺処アーカシャの蒼の刀の能力の最大活用。

 吸収の能力を拡大し、全身に纏わす事で相手の攻撃を無効化するだけではなく、凡ゆる事象をを飲み込む存在その者が「虚空」となる。

 しかし、それは長くは保たず、ジークフリートの攻撃全てに適用させるのは不可能であった。

 ジークフリートの攻撃、それらを一度、防ぐと彼はその「虚空」の形を変化させる。

 帰還者リターナーはジークフリートに向けて、全身の虚空万象ヴォイドゾーンを一瞬だけ、蒼の刀に纏わせるとそれを振るった。

 次の瞬間、邪竜失墜混沌大剣バルムンクを振るっていたジークフリートの右肩が削り落とされる。

 いや、削り落とすというよりも血が溢れることもなく、ただそこに無かったかのような、右腕という存在自体が抹消された。

「!?」

 ジークフリートはそれに気づくも、彼女の体に目掛けて、帰還者リターナーは赫の剣、その刃先を向けた。

「吹き飛べ」

 帰還者リターナーの赫の剣から放たれるはここまで貯め、「虚空」に飛ばされるされていた全てのエネルギーの限界解放。

 剣すら失い、残ったものは血の騎士とその翼。咄嗟の判断でジークフリートは防御の姿勢をとるも、それは容赦無く、彼女の体を消し飛ばす。

 いくつもあったビルの数々、それら全ての窓ガラスを破った。

「少し興醒めだったな、ジーク」

 帰還者リターナーの目の前にジークフリートが現れるも彼女の体は様々な部位が欠損していた。

 かろうじて残っていたのは体と右足、左腕のみ。手は指が幾つも消えており、三本だけが残っている。

「いってえよ、アホ」

 ジークフリートは声を出すもそれは弱々しく、先ほどまでの覇気が感じられるものでは無かった。帰還者リターナーはジークフリートに一歩ずつ近付くと彼女の首に剣を突きつけた。

「終わりだ。25年前、俺はお前に負けた。だが、今度は逆」

「そう、かよ。だが、こんなにおしゃべりしていいのか?」

「ああ、そうだな」

 帰還者リターナーはジークフリートの首に剣を振り下ろすと彼女の首に迫った途端、彼の剣に血の糸まとわりついていた。

 ジークフリートにとって、ここまでは予定調和。自身が追い詰められることは幾らでもあり得ると知っていた。

 故に、帰還者リターナーを倒すための手段もまた、同様に考えていた。

邪竜の血糸ファフニール・フィル

 血の糸が帰還者リターナーの剣を一瞬だけ止めるとジークフリートは闘争心を剥き出しにしながら、彼の顔に残った腕を使い、拳を振り抜いた。

(その様な攻撃、効くわけないだろう)

 帰還者リターナーはジークフリートの攻撃を「虚空」に飛ばし、直ぐに剣と刀を止める血の糸を振り切るも目の前に映る彼女の姿が変わっていた。

 欠けた部位を己が血を使い、補う。
 赤く染まり、血を無理矢理固めて動こうとすると固った血がバギリバギリと音を立てた。

 鮮血で生まれた腕と足、そして、背中には尻尾と翼、顔は相変わらず笑顔を浮かべており、その形を安定させようとした。

 こして、ジークフリートは自身の意識を集中させ、その姿を作り出す。

邪竜結合暴血の装ファフニール・リレイゾンタイラント

 邪竜に愛され、魅入られた英雄の体はその邪竜の存在を証明する様に、雄叫びをあげる。

「随分とまぁ、禍々しいな、ジーク」

 帰還者リターナーは目の前に現れた邪竜の権化に対して、冷静な口調で話しかけた。

 ジークフリートはそれに対して地面に突き刺さっていた邪竜失墜混沌大剣バルムンクを尻尾で拾い上げると両腕に地で生み出した赤い爪を構える。

「まだまだ、これから! もりもりいこうかぁ!」

 そう言うと両翼を広げ、飛翔する。
 帰還者リターナー、彼を自身の舞台フィールドに追い上げるために一気に距離を詰めた。
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