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第四章 人神代理戦争 霹靂
九話 五大王国合同演習 其の弍
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雑に纏められた黒い髪が風により、靡くも馘無侍吟千代は気にすることなく瞑想した。
全てが静まり返った瞬間、凡ゆるモノにある氣、それを読み解くと徐々に見える世界が変わって行く。
(うむ、常在戦場の身なれば、この世界は見えぬ。感情の凪、その中でしか見えぬとは拙者もまだまだ未熟者。徐々に掴み始めている氣とは違う洗練された世界、これが常に見える様に成れば、拙者はまだまだ強くなれる。だが、どうやって)
ジータの屋敷の木の下で一人瞑想を続ける吟千代の横、そこに急に腰掛けるものがいた。
その瞬間、吟千代は刀を抜き、横に座った者の首に刃を突き付けると彼は両手を挙げて、戦う意志がないことを示す。
「ご、ごめんね、邪魔しちゃって」
横に座った者の正体がバサラとしると彼の首元に迫る刃を仕舞った。
「バサラ殿か! すまぬな、無礼をしてしまい」
「あはは、僕の方こそごめんね。何も言わずに近づいちゃって」
バサラは謝るとそれを吟千代は気にすることなく、再び木の下に座り込んだ。
「吟千代は合同演習参加しないのかい?」
「む、まぁ、な。拙者、基本一人で訓練するのが好き故。まぁ、なんだ、拙者は戦狂いでな、あまり人が居る場所に居ると狂ってその場の大将首を狙いに行きかねん」
「そうなの?! 吟千代からはそんな氣見えないけどなー」
バサラからそう言われると嬉しかったのか吟千代は少し微笑んだ。そして、数分沈黙が流れると、吟千代が口を開いた。
「なぁ、バサラ殿、拙者、氣と言うのが見れると言った」
「そうだね、僕も見えているよ。人の感情の波、物に宿る輝き、纏うオーラみたいな膜、全てが氣だ。でも、それがどうしたんだい?」
「うむ、そうだ、そうだな。全て正しい、全て正解だ。だが、拙者、まだ未熟故に至れていないのだ。バサラ殿が見ているであろう世界を」
吟千代が放った世界という言葉に、バサラはどきりとした。
夢の中、ヴォルガに言われた魂の世界、それのことを指しているのかと思うと吟千代の見ようとしている世界について彼自身も深く掘り下げるべきだと感じて居たからである。
「僕が見ている、世界か。多分、まだ、吟千代と同じだよ。だけど、なんとなく見えてきたから、お互いに情報共有しておかないかい?」
「むむ? もしや、バサラ殿何か知っているな? この凪の視界を」
「あ、うーん、どうだろうかな? 凪の視界か。いいね、それ。魂の世界ってよりも言いやすいや」
「魂? うむ? もしや、バサラ殿もうこれについて全部理解してるのか?!」
「え?! いやいや! 違う! ただ、ちょっと夢の中で昔の知り合いにあってね。彼が魂の世界なんてことを言ってたからそれのことかと」
魂の世界、我ながら何を言っているのだろうかと思ったが、バサラはそれをなんとなく納得していた。
かつて神殺しを成す時に得た絶技、世界を断つ斬撃。相手の氣を捉え、世界を絵として破り、切り裂くと言う物である。
その時見ていた氣、それは明らかに相手の本質に近いものを捉えており、それが魂であると言われと妙に納得がいっていた。
「僕達はもしかしたら氣を更によく観察出来れば、魂と言うものを理解出来るんじゃないかな?」
バサラの言葉に、吟千代もまた、自分の抱いていた疑問への答えが現れたかの様に感じた。
「ふむ、ふむふむ! なるほど! バサラ殿、それはありだ。拙者は相手の動きを氣で読むと同時、相手の氣が薄くなる部位を首として捉えて切っていた。揺らぎが氣であり、その本質が魂か! ならば、そう言うことか! カラカラカラ! バサラ殿、拙者の目指す道、ハッキリと理解した! 最後に一つ質問良いか?」
吟千代はスッキリしたのか立ち上がると最後にバサラに問いかけた。
「ん? 良いよ、僕が答えられるならなんでも」
「バサラ殿、バサラ殿が氣を捉えられる様になったのはいつだ?」
いつから、いつからだろうか。
口が詰まった。
自分が氣を捉えられた、その瞬間、雷神の一撃、自分の命に危機が迫った時。
「命のやり取りをしてた時、かな」
濁しながら答えると吟千代も同じ答えを出した。
「カラカラ、拙者も同じだ。お互い、死に近い場所に居たから見えたのだろうなぁ。カラカラカラ、理解したぞ! バサラ殿! 拙者も合同演習とやらに顔を出す! 場所を教えてくれ!」
全てが静まり返った瞬間、凡ゆるモノにある氣、それを読み解くと徐々に見える世界が変わって行く。
(うむ、常在戦場の身なれば、この世界は見えぬ。感情の凪、その中でしか見えぬとは拙者もまだまだ未熟者。徐々に掴み始めている氣とは違う洗練された世界、これが常に見える様に成れば、拙者はまだまだ強くなれる。だが、どうやって)
ジータの屋敷の木の下で一人瞑想を続ける吟千代の横、そこに急に腰掛けるものがいた。
その瞬間、吟千代は刀を抜き、横に座った者の首に刃を突き付けると彼は両手を挙げて、戦う意志がないことを示す。
「ご、ごめんね、邪魔しちゃって」
横に座った者の正体がバサラとしると彼の首元に迫る刃を仕舞った。
「バサラ殿か! すまぬな、無礼をしてしまい」
「あはは、僕の方こそごめんね。何も言わずに近づいちゃって」
バサラは謝るとそれを吟千代は気にすることなく、再び木の下に座り込んだ。
「吟千代は合同演習参加しないのかい?」
「む、まぁ、な。拙者、基本一人で訓練するのが好き故。まぁ、なんだ、拙者は戦狂いでな、あまり人が居る場所に居ると狂ってその場の大将首を狙いに行きかねん」
「そうなの?! 吟千代からはそんな氣見えないけどなー」
バサラからそう言われると嬉しかったのか吟千代は少し微笑んだ。そして、数分沈黙が流れると、吟千代が口を開いた。
「なぁ、バサラ殿、拙者、氣と言うのが見れると言った」
「そうだね、僕も見えているよ。人の感情の波、物に宿る輝き、纏うオーラみたいな膜、全てが氣だ。でも、それがどうしたんだい?」
「うむ、そうだ、そうだな。全て正しい、全て正解だ。だが、拙者、まだ未熟故に至れていないのだ。バサラ殿が見ているであろう世界を」
吟千代が放った世界という言葉に、バサラはどきりとした。
夢の中、ヴォルガに言われた魂の世界、それのことを指しているのかと思うと吟千代の見ようとしている世界について彼自身も深く掘り下げるべきだと感じて居たからである。
「僕が見ている、世界か。多分、まだ、吟千代と同じだよ。だけど、なんとなく見えてきたから、お互いに情報共有しておかないかい?」
「むむ? もしや、バサラ殿何か知っているな? この凪の視界を」
「あ、うーん、どうだろうかな? 凪の視界か。いいね、それ。魂の世界ってよりも言いやすいや」
「魂? うむ? もしや、バサラ殿もうこれについて全部理解してるのか?!」
「え?! いやいや! 違う! ただ、ちょっと夢の中で昔の知り合いにあってね。彼が魂の世界なんてことを言ってたからそれのことかと」
魂の世界、我ながら何を言っているのだろうかと思ったが、バサラはそれをなんとなく納得していた。
かつて神殺しを成す時に得た絶技、世界を断つ斬撃。相手の氣を捉え、世界を絵として破り、切り裂くと言う物である。
その時見ていた氣、それは明らかに相手の本質に近いものを捉えており、それが魂であると言われと妙に納得がいっていた。
「僕達はもしかしたら氣を更によく観察出来れば、魂と言うものを理解出来るんじゃないかな?」
バサラの言葉に、吟千代もまた、自分の抱いていた疑問への答えが現れたかの様に感じた。
「ふむ、ふむふむ! なるほど! バサラ殿、それはありだ。拙者は相手の動きを氣で読むと同時、相手の氣が薄くなる部位を首として捉えて切っていた。揺らぎが氣であり、その本質が魂か! ならば、そう言うことか! カラカラカラ! バサラ殿、拙者の目指す道、ハッキリと理解した! 最後に一つ質問良いか?」
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「ん? 良いよ、僕が答えられるならなんでも」
「バサラ殿、バサラ殿が氣を捉えられる様になったのはいつだ?」
いつから、いつからだろうか。
口が詰まった。
自分が氣を捉えられた、その瞬間、雷神の一撃、自分の命に危機が迫った時。
「命のやり取りをしてた時、かな」
濁しながら答えると吟千代も同じ答えを出した。
「カラカラ、拙者も同じだ。お互い、死に近い場所に居たから見えたのだろうなぁ。カラカラカラ、理解したぞ! バサラ殿! 拙者も合同演習とやらに顔を出す! 場所を教えてくれ!」
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