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第三章 人神代理戦争 勃発
六十話 五大王国会議 其の弐拾陸
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ジータの間合い、それは弓であるが故の強みであり、その距離のアドバンテージすらバサラに今、潰された。
四護聖三人とルーヴェンの騎士団長が倒され、誰もがジータ・グランデの敗北を確信する。
バサラという異次元の強さを持つ強者、それを前にしても諦めずに果敢に立ち向かったジータ達をスカンダですらもここからの逆転は無理だと諦め、彼を心の底から認め、彼女達が負けようとも讃えようとしていた。
そんな中、ジータ本人はまだ諦めていなかった。涅槃静寂がジータの体に振られるも、彼女にはそれがゆっくりと見えており、走馬灯の様に今までの出来事が脳内を駆け巡る。
(あの時、あれはそう、吟千代との会話)
***
朝の鍛錬を行なっていたある日。
互いに剣と刀を振るう中、ふと吟千代が聞いた。
「ジータは何故、弓を極めた?」
吟千代の問いにジータは剣を振るいながら答えた。
「それが私の共鳴器の本当の姿でしたから」
「ふむ、勿体無いな。お前は剣術の道を極めれば更に強くなろうに」
「そうですね。御師様にもそれが通用するなら極めます」
「?? お主気付いていないのか?」
吟千代はジータの顔を見て、頭に疑問符を浮かべており、彼女はそれに対して聞き返した。
「何に気付いてないのです?」
「お主、剣の道を極めれば、バサラ殿すら勝ち得るぞ」
吟千代のぐるぐるとした目はジータを真っ直ぐ見ており、彼女はそれを笑って返した。
「あはは! それなら昔、御師様にも言われました! でも、私は剣では御師様に勝てないと思っているので、結構です。いや、ちゃんと基礎はしっかりしますよ。私、四護聖の中で共鳴器を持てば、最強なので」
***
何度も、何度も考えてきた。
師であるバサラの剣を越えるにはどうすればいいかを。
無窮壱尽を解放させた日、そこで自分はこの道でバサラを越えようとした。
だが、弓ではバサラを越せない。
それが今の状況であり、今の得物では傷つけることができないとジータは理解していた。
バサラの一撃を止めるものが欲しい。
無窮壱尽・嵐廼王はその主人の願いに呼応した。
共鳴同化により、これまで以上に主人の願いに反応出来るようになった無窮壱尽・嵐廼王自身が、今、ジータを救うために、彼女の願いと勝利のために新たな力を彼女に与える。
右手を包んでいたガンドレッドに嵐が宿った。
ジータはその瞬間、走馬灯の中で見えた、吟千代との会話から右手に宿る嵐を解放させ、今の自分に必要なものを顕現させる。
バチンと音を立て、バサラが放つ涅槃静寂による一撃を、右手に作り出したと新たな武器で弾いた。
「?!」
バサラですら戸惑う程であり、その一撃で全てが終わると彼は思い込んでいた。
一方のジータは自分が手にした武器が何かをすぐに理解し、突きを放った。
「行くよ! 嵐刀・無窮壱尽・嵐廼王!」
ジータの願いに呼応して、無窮壱尽・嵐廼王がそれに応えたいと自身の能力を拡張させた結果、彼女の右手につけたガンドレッドは嵐を矢のみでは無く、他の武器の形へと変化させることが可能となる。
ジータが欲したのは刀。
使ったこともない得物でありながら、流れた走馬灯にいた吟千代が刀を振るう姿を見て、今の自分が欲しい全てがそこに詰まっていると確信し、刃渡は通常よりも遥かに長く、ジータの体には似つかわない物であった。
そんな長刀でバサラ目掛けて突きを放つと嵐を纏う一突きは彼ですら両手で塞がなければならないほどの威力を見せた。
この場にいる人間、全員が、あの絶望的な状況でありながらも持ち直したジータの姿を見て呟いた。
ジータ・グランデは天才であると。
ジータも急激な成長に体が追いついておらず、鼻血を流すもそれを左腕でぬぐうとまだ、自分は倒れて行った仲間達より元気であると自信を奮い立たせて叫んだ。
「最終決戦です! 御師様! 私とあなた! 最後の競い合いです!」
四護聖三人とルーヴェンの騎士団長が倒され、誰もがジータ・グランデの敗北を確信する。
バサラという異次元の強さを持つ強者、それを前にしても諦めずに果敢に立ち向かったジータ達をスカンダですらもここからの逆転は無理だと諦め、彼を心の底から認め、彼女達が負けようとも讃えようとしていた。
そんな中、ジータ本人はまだ諦めていなかった。涅槃静寂がジータの体に振られるも、彼女にはそれがゆっくりと見えており、走馬灯の様に今までの出来事が脳内を駆け巡る。
(あの時、あれはそう、吟千代との会話)
***
朝の鍛錬を行なっていたある日。
互いに剣と刀を振るう中、ふと吟千代が聞いた。
「ジータは何故、弓を極めた?」
吟千代の問いにジータは剣を振るいながら答えた。
「それが私の共鳴器の本当の姿でしたから」
「ふむ、勿体無いな。お前は剣術の道を極めれば更に強くなろうに」
「そうですね。御師様にもそれが通用するなら極めます」
「?? お主気付いていないのか?」
吟千代はジータの顔を見て、頭に疑問符を浮かべており、彼女はそれに対して聞き返した。
「何に気付いてないのです?」
「お主、剣の道を極めれば、バサラ殿すら勝ち得るぞ」
吟千代のぐるぐるとした目はジータを真っ直ぐ見ており、彼女はそれを笑って返した。
「あはは! それなら昔、御師様にも言われました! でも、私は剣では御師様に勝てないと思っているので、結構です。いや、ちゃんと基礎はしっかりしますよ。私、四護聖の中で共鳴器を持てば、最強なので」
***
何度も、何度も考えてきた。
師であるバサラの剣を越えるにはどうすればいいかを。
無窮壱尽を解放させた日、そこで自分はこの道でバサラを越えようとした。
だが、弓ではバサラを越せない。
それが今の状況であり、今の得物では傷つけることができないとジータは理解していた。
バサラの一撃を止めるものが欲しい。
無窮壱尽・嵐廼王はその主人の願いに呼応した。
共鳴同化により、これまで以上に主人の願いに反応出来るようになった無窮壱尽・嵐廼王自身が、今、ジータを救うために、彼女の願いと勝利のために新たな力を彼女に与える。
右手を包んでいたガンドレッドに嵐が宿った。
ジータはその瞬間、走馬灯の中で見えた、吟千代との会話から右手に宿る嵐を解放させ、今の自分に必要なものを顕現させる。
バチンと音を立て、バサラが放つ涅槃静寂による一撃を、右手に作り出したと新たな武器で弾いた。
「?!」
バサラですら戸惑う程であり、その一撃で全てが終わると彼は思い込んでいた。
一方のジータは自分が手にした武器が何かをすぐに理解し、突きを放った。
「行くよ! 嵐刀・無窮壱尽・嵐廼王!」
ジータの願いに呼応して、無窮壱尽・嵐廼王がそれに応えたいと自身の能力を拡張させた結果、彼女の右手につけたガンドレッドは嵐を矢のみでは無く、他の武器の形へと変化させることが可能となる。
ジータが欲したのは刀。
使ったこともない得物でありながら、流れた走馬灯にいた吟千代が刀を振るう姿を見て、今の自分が欲しい全てがそこに詰まっていると確信し、刃渡は通常よりも遥かに長く、ジータの体には似つかわない物であった。
そんな長刀でバサラ目掛けて突きを放つと嵐を纏う一突きは彼ですら両手で塞がなければならないほどの威力を見せた。
この場にいる人間、全員が、あの絶望的な状況でありながらも持ち直したジータの姿を見て呟いた。
ジータ・グランデは天才であると。
ジータも急激な成長に体が追いついておらず、鼻血を流すもそれを左腕でぬぐうとまだ、自分は倒れて行った仲間達より元気であると自信を奮い立たせて叫んだ。
「最終決戦です! 御師様! 私とあなた! 最後の競い合いです!」
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