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第三章 人神代理戦争 勃発

五十六話 五大王国会議 其の弐拾弐

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「我、運命は狩人! 獲物を屠る矢であり、それを番う弓! 共鳴器・天空交響曲スカイシンフォニーよ! 我が運命の導に従い解き放て、その真なる姿を!」

 エイブラハムが握る戦斧は彼の言葉に応える様、その姿を変える。戦斧であった物は刃先を伸ばし、絵を短くするおエイブラハムの手には巨大な大剣が握られ、彼の周囲を回るフギン・ムニンがバサラ目掛けて攻撃を放った。

 手斧であれどそれは狩人の運命の風を宿しており、致命的にはならないが、ハッキリと自身を動きを悪くする物とバサラは理解していた。故に、それらを二つの得物で弾くとその瞬間、バサラの目の前にエイブラハムが現れる。

空間捕食プレデターブレイク

 バサラにエイブラハムは大剣による一撃を打つけるとその瞬間、彼の手に握られていた涅槃静寂ニルヴァーナが曲がった。

 曲がったと言うよりも見た目がぐにゃりと正しく捉えられなくなるとエイブラハムは笑顔で再び大剣を振るう。バサラの分析による解析と的確な一手、それをエイブラハムは警戒しており、一切の情報を与える前に畳み込もうとする作戦であった。

 人の視覚から送られる情報量は55%、エイブラハムの持つ大剣の共鳴器、天空交響曲スカイシンフォニーはそれをぶれさせる。バサラは特に視界に頼ることが多く、エイブラハムが振るう大剣と自身が持つ涅槃静寂ニルヴァーナの大体の長さを仮定するもそれを見誤った。

 大剣から放たれる重い一撃、それを涅槃静寂ニルヴァーナの刃先で弾いてしまい、バサラの体がほんの少しだけ軸がぶれた。その時、準備をしていたグランが叫んだ。

「我、運命は闘士! 猛る闘争、握るは剣! 友を照らす、沈まぬ太陽! 共鳴器・紅蓮御旗ミネルヴァよ! 我が運命と歩め! 同志の歩みを止めさせぬために!」

 詠唱の後、見せるのはグラン・フーガの新たな力であり、師であるバサラを越えようとする覚悟の示し。

共鳴同化レゾナント・ユナイト! 紅蓮御旗・不沈太陽ミネルヴァ・サンシャイン!」

 左腕に赤いガンドレッドを付け、その手には雄々しくはためく御旗が握られている。グランはもう片方の手に握る剣を振るう瞬間に声を上げた。

「大紅蓮斬!」

 バサラの同様の威力の紅蓮の斬撃が放たれると彼は羽織っていたマントを向け、それを防いだ。強化の焼却により、グランの一撃は防がれるも、それはバサラ自身の視界を再び遮る物であり、エイブラハムとジータは一矢乱れぬタイミングで動き出す。

「穿て、無窮壱尽バアル

空間捕食IIプレデターブレイク・セカンド

 ジータは焼却のマントの焼却能力が一つのみに対応することを見抜いており、それを悟らせないために、この一瞬のギリギリまで撃つのを待っていた。マントを貫通し、バサラの左肩を穿つと、彼の肩からダバダバと血が流れ、その腕目掛けて今度はエイブラハムが追撃した。

 空間捕食プレデターブレイクによる二度目の攻撃をバサラはエイブラハムの鍛え上げられた一撃による衝撃を抑えきれず、彼らから距離を離されてしまう。

(エイブラハムの攻撃、大剣自体もそうだが、あの能力、涅焔カーラも見た目を変えられたし、両手の得物の距離感が分かりづらくなった。グランの放った斬撃は何重にも強化を重ねることで斬撃自体は防げてもマントに強化が残り、それを受けたジータの矢が強化を吸収して威力が上がっている。ジータはグランを信じて矢を放つし、涅焔カーラの焔は焼却できる能力が一つまでってのを見抜いてた。流石に、キツイね。でも、やらなきゃいけないんだ。君達がおれを否定するなら、尚更)

 全ての情報をまとめ切るもその間にグランとエイブラハムは空いていた距離を詰め、バサラに攻撃を仕掛けていた。絶体絶命のピンチの中、バサラは呟く。

 凡ゆる不条理を壊してきた、壊滅の運命を持つ者として、今、目の前に立つ弟子達の全力を破壊するために。

「我が運命は壊滅。求めるは終焉、目覚めるは破壊者。共鳴器・涅槃静寂ニルヴァーナ涅焔カーラよ、我が運命の導に従い解き放て。その真なる姿を」

 黒き焔がバサラを包み込み、燃え上がる。

 涅槃静寂ニルヴァーナ涅焔カーラはエイブラハムに変えられた姿から元通りになっており、両腕には互いに違う形をした漆黒のガンドレッドが握られていた。

涅焔カーラ死装束シュラウド

 一言残すと共に、距離を詰めていたエイブラハムとグランを巻き込む様に黒い焔が燃え盛る。
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