176 / 311
第三章 人神代理戦争 勃発
四十九話 五大王国会議 其の拾伍
しおりを挟む
帰還者の双剣は互いに形を変えながら右手には赫い刀身の剣、左に手には蒼い刀身の刀が握られた。赫と蒼の二つの対をなす得物を帰還者は構えるとダラモスはそんな彼に向かって、一切の躊躇もなく走り出す。
「炉心解放、鉄機兵ダラモス! 殺戮形態に移行! 燃えろ、我が闘争の運命。守護者としての義務を果たすために!」
ダラモス、彼に与えられた運命は闘争。全身に宿るアダマンタイトに自身の運命を共鳴させることで、彼の肉体は限界の遙か向こう側へと前進させる。体に練られたアダマンタイトが共鳴と共に姿を変え、人型の美しい機体が、殺戮に特化し、凶々しい姿となっていた。
全身に宿る焔を使い、帰還者の目に追えない速度に到達した瞬間、ダラモスは彼の体を貫こうと跳んだ。
「火焔殺戮葬送」
音よりも速く帰還者の目の前に現れるとダラモスの蹴りが彼の体に直撃する。アダマンタイトですら耐え切れるかギリギリの業火を全身に宿し、帰還者を焼却しようと放たれた蹴りは正しく、この世界で耐え切るのは不可能な程の一撃であり、それは彼であっても同じであった。
ダラモスは完全に帰還者を捉えており、その一撃は防がれようとも彼を大幅に削ることができる、そう思っていた。
それが共鳴器を使い、運命を解放していない帰還者であれば。
帰還者は体にぶつかっている蹴りを全身で受けながら、左手に握っていた蒼の刀を動かすとダラモスが放っていた蹴りの威力が徐々に収まっていった。
(何故?! この威力であれば触れた途端に蒸発するはず?! それなのに蹴りを受けながら平然と立っている! そして、私の蹴りの威力が、火焔が全て蒼の刀、あれに吸われているのか?! まだ、まだだ! ここで、コイツをぉ!)
ダラモスは引くことを知らない。それは意地でも今ここで帰還者を殺せる術と決めつけているが故に、機械としての本来持つべき合理性を失っていた。
火焔は徐々に弱まり、そして、全てを出し切ったのか、帰還者を傷つけることもその場から一歩たりとも動かすことができないまま、蹴りは受け止められてしまう。
「火焔殺戮撃」
自身が放てる渾身の蹴りを止められるも全身に宿る火焔は消えず、それであればまだ、戦えると切り替え、ダラモスは帰還者目掛けて拳を突き立てようとした。
威力は下がっている、それでもダラモスは任務を遂行しようとする。だが、それが帰還者にぶつけられる事は無かった。
赫の剣が振るわれるとそれはダラモスが放つ突きを簡単に縦に割り、切り裂く。
帰還者の赫と蒼の対なる共鳴器・無量辺処、その本質は循環。
蒼の刀が自身に向かい放たれた攻撃を帰還者だけが操ることが出来る質量として「虚空」と呼ばれる空間に送る。そして、赫の剣がその虚空から送られた質量を吸収する事で斬撃を放つことが出来、その威力は吸収した質量によって変わると言うモノ。
ただ、これは全て、他の人間が持てばの話。帰還者、彼が持てば変わる。
帰還者が鍛い上げた技術、それは相手から吸収した質量に自身の築き上げた肉体の力を加えると言った合気の応用。
縦に切り裂かれた腕を再生せず、ダラモスはもう片方の腕を使い、最後まで諦めようとしなかった。ただ、そんなダラモスに対して最大限の称賛を込めて帰還者は赫の剣を容赦無く振るう。
斬撃はただ飛んでいく物では無く、質量を持ち、光り輝きながら振り下ろされた。解き放たれた光線はダラモスの機体を全てとその射線に入っていた山すらも飲み込む。ダラモスの眼が最後に捉えた光景、それは光線と言うに等しい一撃と、それを従え立ち塞がる帰還者の姿であった。
赫の刃からダラモス自身の攻撃の威力と帰還者の肉体の力を重ねて放たれる光線はルーヴェンの山を跡形もなく消し去るとそこにはダラモスであったものの頭だけが残っていた。
山を消し去り、ヴェープルの騎士を大破させる。五大王国会議の中、王達を強襲した帰還者、異界ゴルドバレーにおける最大の脅威であると言う事実を刻み込んだ瞬間であった。
「炉心解放、鉄機兵ダラモス! 殺戮形態に移行! 燃えろ、我が闘争の運命。守護者としての義務を果たすために!」
ダラモス、彼に与えられた運命は闘争。全身に宿るアダマンタイトに自身の運命を共鳴させることで、彼の肉体は限界の遙か向こう側へと前進させる。体に練られたアダマンタイトが共鳴と共に姿を変え、人型の美しい機体が、殺戮に特化し、凶々しい姿となっていた。
全身に宿る焔を使い、帰還者の目に追えない速度に到達した瞬間、ダラモスは彼の体を貫こうと跳んだ。
「火焔殺戮葬送」
音よりも速く帰還者の目の前に現れるとダラモスの蹴りが彼の体に直撃する。アダマンタイトですら耐え切れるかギリギリの業火を全身に宿し、帰還者を焼却しようと放たれた蹴りは正しく、この世界で耐え切るのは不可能な程の一撃であり、それは彼であっても同じであった。
ダラモスは完全に帰還者を捉えており、その一撃は防がれようとも彼を大幅に削ることができる、そう思っていた。
それが共鳴器を使い、運命を解放していない帰還者であれば。
帰還者は体にぶつかっている蹴りを全身で受けながら、左手に握っていた蒼の刀を動かすとダラモスが放っていた蹴りの威力が徐々に収まっていった。
(何故?! この威力であれば触れた途端に蒸発するはず?! それなのに蹴りを受けながら平然と立っている! そして、私の蹴りの威力が、火焔が全て蒼の刀、あれに吸われているのか?! まだ、まだだ! ここで、コイツをぉ!)
ダラモスは引くことを知らない。それは意地でも今ここで帰還者を殺せる術と決めつけているが故に、機械としての本来持つべき合理性を失っていた。
火焔は徐々に弱まり、そして、全てを出し切ったのか、帰還者を傷つけることもその場から一歩たりとも動かすことができないまま、蹴りは受け止められてしまう。
「火焔殺戮撃」
自身が放てる渾身の蹴りを止められるも全身に宿る火焔は消えず、それであればまだ、戦えると切り替え、ダラモスは帰還者目掛けて拳を突き立てようとした。
威力は下がっている、それでもダラモスは任務を遂行しようとする。だが、それが帰還者にぶつけられる事は無かった。
赫の剣が振るわれるとそれはダラモスが放つ突きを簡単に縦に割り、切り裂く。
帰還者の赫と蒼の対なる共鳴器・無量辺処、その本質は循環。
蒼の刀が自身に向かい放たれた攻撃を帰還者だけが操ることが出来る質量として「虚空」と呼ばれる空間に送る。そして、赫の剣がその虚空から送られた質量を吸収する事で斬撃を放つことが出来、その威力は吸収した質量によって変わると言うモノ。
ただ、これは全て、他の人間が持てばの話。帰還者、彼が持てば変わる。
帰還者が鍛い上げた技術、それは相手から吸収した質量に自身の築き上げた肉体の力を加えると言った合気の応用。
縦に切り裂かれた腕を再生せず、ダラモスはもう片方の腕を使い、最後まで諦めようとしなかった。ただ、そんなダラモスに対して最大限の称賛を込めて帰還者は赫の剣を容赦無く振るう。
斬撃はただ飛んでいく物では無く、質量を持ち、光り輝きながら振り下ろされた。解き放たれた光線はダラモスの機体を全てとその射線に入っていた山すらも飲み込む。ダラモスの眼が最後に捉えた光景、それは光線と言うに等しい一撃と、それを従え立ち塞がる帰還者の姿であった。
赫の刃からダラモス自身の攻撃の威力と帰還者の肉体の力を重ねて放たれる光線はルーヴェンの山を跡形もなく消し去るとそこにはダラモスであったものの頭だけが残っていた。
山を消し去り、ヴェープルの騎士を大破させる。五大王国会議の中、王達を強襲した帰還者、異界ゴルドバレーにおける最大の脅威であると言う事実を刻み込んだ瞬間であった。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる