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第三章 人神代理戦争 勃発

四十八話 五大王国会議 其の拾肆

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 攻戦一方のダラモスであったが帰還者リターナーの一言でそれは逆転する。一挙手一投足、動かせば自分の動きを潰し、ダラモスの最適を一つ残らず更地にされた。

 機械ダラモスの合理性、それをまるで全て理解しているかのように、上回るかのように合理的に双剣だけでは無く、全身で潰していった。

 右手から砲身を構えるとそれが現れるのかを待っていたかの様に帰還者リターナーの右手に握られた剣は縦に振られる。斬撃により砲身は縦に真っ二つになると次の瞬間、ダラモスの視界が揺れた。

 帰還者リターナーの蹴りが顔に入り、ダラモスの視界がぶれるとその一瞬の隙を突かれ、彼の両腕が切り落とされた。

「!!」

 驚きを見せるも切り落とされたと同時にガラ空きになった体に帰還者リターナーは蹴りを放ち、腕をなくしたダラモスがその威力を抑えることが出来ず、地面を転がった。

 ダラモスの肉体、それはアダマンタイトと他金属のハイブリッド記憶合金である。博士プロフェッサーが作り出した、火葬大黒天バイラヴァを元に彼が残したこの世界の異物である人工知能を搭載させた、異界ゴルドバレーきっての最新共鳴器。

 記憶合金による自己再生と武器生成、人工知能による自己成長、機械ながらの正確性と合理性を兼ね備えた戦闘、それらがダラモスの強みであった。だが、その正確性も、合理性も、帰還者ひとが凌駕し続ける。

 両手を破壊され、その再生が最善であるとし、ダラモスは足に付いている、加速器でわざと帰還者リターナーに距離を詰めた。そして、彼に対して蹴りを入れるふりをして、砂煙を起こした。

 腕の再生を間に合わせる。
 その選択をダラモスは下した。
 みるみる腕は再生され、自身が立てた砂煙の中から帰還者リターナーに再生した腕から産んだ砲身を向ける。

 相手よりも合理的且つ正確な動きであれば上回れる、それがダラモスが下した判断。それはただの人間であれば通じ、実に機械らしい正確な行動である。

 だが、目の前に立つ、帰還者リターナーと言う人の枠に収まる怪物にそれが通じるのか。

 否。

 ダラモスが双剣を構えた帰還者リターナーの姿を捉えた時、彼は既に剣を振るっていた。精製した砲身も、機械の肉体も一瞬にして傷が生まれ、再生させた両腕は再び切り裂かれる。

(怪物、人の形をした、いや、人に収まろうとしている怪物! 攻撃が出来ない。いや、攻撃を、武器を生み出そうとする瞬間も、隙も与えて貰えない。先ほどまでは遊び、あの言葉本当だった。ターニャ様が遠くに行ったことは確認出来た。ならば、ここでコイツをこの怪物を殺す!)

 ダラモスは今、自分に渡された役割を理解する。

 差し違えてでも、帰還者リターナー、彼を殺すこと。それを理解すれば、体に馴染ませるのは機械であれば簡単であった。

 再び両手を前にし、ダラモスはまだ戦える意思を示すと帰還者リターナーはそれを見て嬉しそうに口を開いた。

「ダラモス、いいなぁお前。今、自分で役割を与え、それを理解した人間の表情だ。機械なのに人らしい。ダラモス、私の仲間にならないか?」

 帰還者リターナーの手を前に出しダラモスに問うとダラモスは自身をぶらさないために答えた。

「ならない。私はヴェープルの守護者だ。お前は今、役割を理解したと言ったな。ならば、私はそれを全うする。それが、いや、それこそが機械と言うものだ」

「そうか、なら、ここで死ね」

 帰還者リターナーはそう残すとダラモスに向けた視線はここ一番に冷ややかになり、初めてそこで彼を敵として見た。帰還者リターナーにとって、自分が敵とみなすことすら珍しく、ダラモスはそれだけでも、彼の強さを認められたようなものであった。

 その視線にダラモスは怖気ずくことはなく、踏み込もうとした瞬間、帰還者リターナーは彼を認めた上で力の全てを持って破壊の運命に従うために呟く。

「我が運命は壊滅。求めるは終焉、目覚めるは破壊者。共鳴器・空無辺処アーカシャよ、我が運命の導に従い解き放て。その真なる姿を」

 帰還者リターナー、彼が握る共鳴器、その能力をダラモスは目の当たりする事になる。
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