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第三章 人神代理戦争 勃発
四十章 五大王国会議 其の陸
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ヴィクターの体は一度バラバラになりかける。涅焔の斬撃は静謐の運命の治癒能力を阻害し、全身を格子状にカッティングされたヴィクターであったがそんな状況の中でも、彼の中で過去一番に人生を謳歌していた。
痛みによる快楽、ヴィクターが戦いに求めるのはそれである。
幼い頃から他人よりも自分の肉体の再生が早く気味悪がられ、両親からも捨てられた自分に居場所を与えてくれたシャロンであった。戦場という居場所を、自分の生を感じれる世界を与えてくれた彼女には感謝しかないが今の自分はそんな事はどうでも良く、バサラという存在に惹かれていた。
切り落とされる肉片を無理矢理神経を繋げ、自身の首を大鎌で切り落とす。切り落とされた首をバラバラになる直前の体で蹴り上げるとそれだけがバサラの目の前に飛んできた。
ヴィクターの再生、それは死ぬ直前、彼が死を感じる瞬間に最大値となる。コンマ数秒の間に首から下が瞬く間に再生すると生えたての腕でバサラに突きを放つ。涅焔で防ぐも自身と同じ程の力で殴られると若干よろめいた。
「死ぬところだった! バサラ殿ぉ! 最高だよ! いや、死んでたな、うん。気持ちいい。死んでたのに再生したってことは自分の能力の限界が思ってたよりもまだまだ上回るな。うん、うん! 死ぬほど、気持ちがいい!」
素っ裸のヴィクターは背後に転がり落ちているかつて自分であった肉塊の腕らしきものを動かし、血で塗れた不死王行進曲を持って来させた。
(肉塊を動かしたのか。あれもしかしたら死体であれば誰でも動かせるのか? 自分のモノと思っているものだけを動かせるのか? どっちにしても能力の底が見えないな、面白い)
バサラはそんなことを考えながら、涅焔を前にすると体に回る再生による肉体への痛みが回るのを彼目掛けてヴィクターは述べ、それに対して狩れぬ獲物を見て嬉しそうに応えた。
「元気がいいな、ヴィクター。あんなん受けてたら普通は死んでるぞ?」
「そうか? 俺は生きてるから関係ないだろう?」
「はは、イカれてるな。でも、そういう奴は嫌いじゃない。寧ろ好きだ」
両者は言い終えると同時に再び互いの得物を構え、試合を続けようとした。だが、その時、彼らの真ん中に割って入るようにシャロンがいつの間か現れた。
「シャロン様?!」
先ほどまで頭になかった自国の王女の姿を見て、ヴィクターは驚くとシャロンは再び口を開いた。
「そこまでだ、ヴィクター」
「いや、でも、これからが」
「私との約束忘れたのか? 一度死ねばそこで終了。バサラ、すまないね、急なお願いしてしまって」
シャロンが頭を下げるとバサラもそれを見てもう戦うことはないと感じたのか鞘に涅焔を仕舞う。
「別に気にしないさ。僕も楽しかったし」
「なら良かった。明日帰るって聞いたからな。今日は宴会の準備をしたんだ、今日の詫びと言ってらなんだがな、楽しんでくれ」
それを聞き、ヴィクターは渋々諦めるも素っ裸のままでいた。シャロンはそんなヴィクターにローブのような物を渡し、彼はそれに身を包み、その場を後にする。
バサラはため息を吐き、吟千代とメタリカの二人と合流すると練習場の外に歩いて行った。吟千代はバサラと共に歩く中で、考え事をし、今日のヴィクターとの戦いを見て、とある確信を得るとそれを伝えようと彼に喋りかけた。
「なぁ、バサラ殿」
「? なんだ? 吟千代」
「今のバサラ殿は、本当にバサラ殿か?」
「どうしてそんな事を?」
バサラは本当に何の疑問にも思っていないこたを感じ取りながら、一度深呼吸をすると吟千代は彼の目を見て、ハッキリとその違和感を口にする。
「氣が違うんだ、以前の静かに滾る様な物ではない。今は、時折見せていた圧倒的なまでの強者の氣。なぁ、バサラ殿、本当のお主はどっちなんだ? 拙者は分からなくなっている」
「本当、ってなら。こっちの方が本来だよ、吟千代。それ以上でも、それ以下でも無い。僕は僕だ」
痛みによる快楽、ヴィクターが戦いに求めるのはそれである。
幼い頃から他人よりも自分の肉体の再生が早く気味悪がられ、両親からも捨てられた自分に居場所を与えてくれたシャロンであった。戦場という居場所を、自分の生を感じれる世界を与えてくれた彼女には感謝しかないが今の自分はそんな事はどうでも良く、バサラという存在に惹かれていた。
切り落とされる肉片を無理矢理神経を繋げ、自身の首を大鎌で切り落とす。切り落とされた首をバラバラになる直前の体で蹴り上げるとそれだけがバサラの目の前に飛んできた。
ヴィクターの再生、それは死ぬ直前、彼が死を感じる瞬間に最大値となる。コンマ数秒の間に首から下が瞬く間に再生すると生えたての腕でバサラに突きを放つ。涅焔で防ぐも自身と同じ程の力で殴られると若干よろめいた。
「死ぬところだった! バサラ殿ぉ! 最高だよ! いや、死んでたな、うん。気持ちいい。死んでたのに再生したってことは自分の能力の限界が思ってたよりもまだまだ上回るな。うん、うん! 死ぬほど、気持ちがいい!」
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(肉塊を動かしたのか。あれもしかしたら死体であれば誰でも動かせるのか? 自分のモノと思っているものだけを動かせるのか? どっちにしても能力の底が見えないな、面白い)
バサラはそんなことを考えながら、涅焔を前にすると体に回る再生による肉体への痛みが回るのを彼目掛けてヴィクターは述べ、それに対して狩れぬ獲物を見て嬉しそうに応えた。
「元気がいいな、ヴィクター。あんなん受けてたら普通は死んでるぞ?」
「そうか? 俺は生きてるから関係ないだろう?」
「はは、イカれてるな。でも、そういう奴は嫌いじゃない。寧ろ好きだ」
両者は言い終えると同時に再び互いの得物を構え、試合を続けようとした。だが、その時、彼らの真ん中に割って入るようにシャロンがいつの間か現れた。
「シャロン様?!」
先ほどまで頭になかった自国の王女の姿を見て、ヴィクターは驚くとシャロンは再び口を開いた。
「そこまでだ、ヴィクター」
「いや、でも、これからが」
「私との約束忘れたのか? 一度死ねばそこで終了。バサラ、すまないね、急なお願いしてしまって」
シャロンが頭を下げるとバサラもそれを見てもう戦うことはないと感じたのか鞘に涅焔を仕舞う。
「別に気にしないさ。僕も楽しかったし」
「なら良かった。明日帰るって聞いたからな。今日は宴会の準備をしたんだ、今日の詫びと言ってらなんだがな、楽しんでくれ」
それを聞き、ヴィクターは渋々諦めるも素っ裸のままでいた。シャロンはそんなヴィクターにローブのような物を渡し、彼はそれに身を包み、その場を後にする。
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「なぁ、バサラ殿」
「? なんだ? 吟千代」
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「どうしてそんな事を?」
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「氣が違うんだ、以前の静かに滾る様な物ではない。今は、時折見せていた圧倒的なまでの強者の氣。なぁ、バサラ殿、本当のお主はどっちなんだ? 拙者は分からなくなっている」
「本当、ってなら。こっちの方が本来だよ、吟千代。それ以上でも、それ以下でも無い。僕は僕だ」
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