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第三章 人神代理戦争 勃発
三十五章 五大王国会議 其の壱
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暗い底、閉じていた過去。
その濁流が流れ込み、沈んでいたはずの意識がハッキリとして行く。
「ん、っと」
目を開き、体をゆっくりと起こすとそこは見知らぬ部屋であった。辺りには誰も居らず、今、自分が置かれている状況を理解出来ずに居た。
「僕、何してたんだ?」
そう呟くと自分がどうしてこうなったかを思い出そうとした。少しして記憶が鮮明になって行くと自分の身に何が起きたのか彼は理解し始めた。
(そうだ、僕、師匠に負けたんだった。そんで、腕を落とされて、ってあれ? 腕あるじゃん?! 何でくっ付いてる? 誰かが直してくれたのか? と言うよりもなんか、いつもと違くね? 僕の口調)
バサラの思考はまとまらず、グチャグチャしているものの彼はベットから立ち上がり、その部屋から取り敢えず出ようとした。
バサラがドアノブに手をかけた時である。バサラがドアを開けるよりも早く、そのドアは開き、彼の目の前には見たこともない女性が立っていた。桃色の髪を後ろで括り、素朴な服に身を包んだ若い彼女はバサラが目を覚ましたのを見て、驚くこともなく部屋に入って行った。
「お、目が覚めたんだな、よかったよかった」
そう言うと彼女は部屋のカーテンを開き、換気をしようと窓を開けた。
「えーと、ここは?」
バサラは戸惑いながら彼女に聞くとそれに対して気にすることなく答えた。
「ここ? あー、そっか、あんた記憶がヴェープルで止まってるのか。ここはバンコク、五大王国、鍛治と秘湯の国だ! 四護聖達がここに運んで来たのは驚いたがメタリカが通せっててんだから通したってことよ!」
元気よく返すとバサラは戸惑いながらも四人が博士に勝利したことを知り、一先ず安堵のため息を吐くと彼は再び彼女に問いた。
「バンコクに居るのは分かった。でも、何でバンコクに?」
「あゝ? そりゃ、私の騎士の力を借りにきたんだろう。後で、会わせてやるから焦んなよ。ん、あー、そうだ、自己紹介まだだったな。忘れてた忘れてた。どうも最近物忘れが酷くてねえー」
彼女は自身の頭をポンポンと叩くと再び口を開いた。
「シャロン・フォルテ、バンコクを統べる主人だ! 宜しく頼まぁ!」
シャロンは言い終わると同時に手を前にし、握手を要求するとバサラはそれに応じ、彼も手を差し出した。
「素直なやつは嫌いじゃないよ! バサラ!」
「えーと、多分何だがジータ達が僕のことを教えてくれたんだと思うんだけど、なんでこうも手厚く看病してくれたんだ? 国益に繋がる様な人間じゃないぞ、僕」
「個人的な恩があるってだけだ。あ、見た目で判断すんじゃねえぞ。私こう見えてもアンタと同い年だ」
腕を組みながら話すシャロンの姿を二度見し、自分と同い年には見えない外見に驚嘆する。
「アンタは覚えてないと思うけど私はあんたに救われたことがある。太陽の神」
太陽の神という一言にバサラは反射的に呟いてしまう。
「アポロンか」
バサラの一言でシャロンはキョトンとした表情を浮かべ、続ける様に口を開いた。
「そうそう、名前覚えてるなんて律儀だな」
「あ、いや、そのなんだ。僕は殺してないぞ」
「まだ何も言って無いぞ」
「・・・・」
自分が口を滑らしたことを無言で貫こうとするもののシャロンはそれを気にすることなく話を続けた。
「あんたが神殺しをした事を喋らないのは知ってるし、言いたくねえのも分かってるさ。だから、変に持ち上げたりもしないから安心しろ。それはそうとここでは持てなさせてもらうよ、バサラ。とりあえず、今この国にいる知り合いを呼んでくるよ」
シャロンは笑顔を浮かべ、部屋の整理を終えるとその場を去って行った。一人残されたバサラはやる事がなく、シャロンが言っていた国にいる知り合いを待ちながらぼんやりと窓の外を眺める。
バンコク、それは鍛治と秘湯の国であり、最も観光に長けた国家。その国でバサラは一体どうなってしまうのか?
その濁流が流れ込み、沈んでいたはずの意識がハッキリとして行く。
「ん、っと」
目を開き、体をゆっくりと起こすとそこは見知らぬ部屋であった。辺りには誰も居らず、今、自分が置かれている状況を理解出来ずに居た。
「僕、何してたんだ?」
そう呟くと自分がどうしてこうなったかを思い出そうとした。少しして記憶が鮮明になって行くと自分の身に何が起きたのか彼は理解し始めた。
(そうだ、僕、師匠に負けたんだった。そんで、腕を落とされて、ってあれ? 腕あるじゃん?! 何でくっ付いてる? 誰かが直してくれたのか? と言うよりもなんか、いつもと違くね? 僕の口調)
バサラの思考はまとまらず、グチャグチャしているものの彼はベットから立ち上がり、その部屋から取り敢えず出ようとした。
バサラがドアノブに手をかけた時である。バサラがドアを開けるよりも早く、そのドアは開き、彼の目の前には見たこともない女性が立っていた。桃色の髪を後ろで括り、素朴な服に身を包んだ若い彼女はバサラが目を覚ましたのを見て、驚くこともなく部屋に入って行った。
「お、目が覚めたんだな、よかったよかった」
そう言うと彼女は部屋のカーテンを開き、換気をしようと窓を開けた。
「えーと、ここは?」
バサラは戸惑いながら彼女に聞くとそれに対して気にすることなく答えた。
「ここ? あー、そっか、あんた記憶がヴェープルで止まってるのか。ここはバンコク、五大王国、鍛治と秘湯の国だ! 四護聖達がここに運んで来たのは驚いたがメタリカが通せっててんだから通したってことよ!」
元気よく返すとバサラは戸惑いながらも四人が博士に勝利したことを知り、一先ず安堵のため息を吐くと彼は再び彼女に問いた。
「バンコクに居るのは分かった。でも、何でバンコクに?」
「あゝ? そりゃ、私の騎士の力を借りにきたんだろう。後で、会わせてやるから焦んなよ。ん、あー、そうだ、自己紹介まだだったな。忘れてた忘れてた。どうも最近物忘れが酷くてねえー」
彼女は自身の頭をポンポンと叩くと再び口を開いた。
「シャロン・フォルテ、バンコクを統べる主人だ! 宜しく頼まぁ!」
シャロンは言い終わると同時に手を前にし、握手を要求するとバサラはそれに応じ、彼も手を差し出した。
「素直なやつは嫌いじゃないよ! バサラ!」
「えーと、多分何だがジータ達が僕のことを教えてくれたんだと思うんだけど、なんでこうも手厚く看病してくれたんだ? 国益に繋がる様な人間じゃないぞ、僕」
「個人的な恩があるってだけだ。あ、見た目で判断すんじゃねえぞ。私こう見えてもアンタと同い年だ」
腕を組みながら話すシャロンの姿を二度見し、自分と同い年には見えない外見に驚嘆する。
「アンタは覚えてないと思うけど私はあんたに救われたことがある。太陽の神」
太陽の神という一言にバサラは反射的に呟いてしまう。
「アポロンか」
バサラの一言でシャロンはキョトンとした表情を浮かべ、続ける様に口を開いた。
「そうそう、名前覚えてるなんて律儀だな」
「あ、いや、そのなんだ。僕は殺してないぞ」
「まだ何も言って無いぞ」
「・・・・」
自分が口を滑らしたことを無言で貫こうとするもののシャロンはそれを気にすることなく話を続けた。
「あんたが神殺しをした事を喋らないのは知ってるし、言いたくねえのも分かってるさ。だから、変に持ち上げたりもしないから安心しろ。それはそうとここでは持てなさせてもらうよ、バサラ。とりあえず、今この国にいる知り合いを呼んでくるよ」
シャロンは笑顔を浮かべ、部屋の整理を終えるとその場を去って行った。一人残されたバサラはやる事がなく、シャロンが言っていた国にいる知り合いを待ちながらぼんやりと窓の外を眺める。
バンコク、それは鍛治と秘湯の国であり、最も観光に長けた国家。その国でバサラは一体どうなってしまうのか?
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