【完結!】田舎暮らしの神殺し、二度目の神殺しに挑む〜余生は静かに暮らしたいのに弟子達がさせてくれない件〜

文字の大きさ
上 下
153 / 311
第三章 人神代理戦争 勃発

二十七話 誰を英雄と讃えるか 其の弍拾漆

しおりを挟む
 自爆技が行われた直後、そこには穴が空いていたはずであった。しかし、ヘイムダルは自身の体が切り落とされ、綺麗に半分にされていたことに気づく事なく、息絶えていた。

 ユピテルが起こした時限圧縮、それは無差別に行われたはずであるのに、そこには彼の切り落とされた上半身が綺麗に地面に落ちていた。

 バサラは涅槃静寂ニルヴァーナを振るった姿でその場に居り、それを腰に差すと半分になったユピテルを見て、口を開く。

「お前の神技グランスキル、その破り方がどうしても分かんなくてな。ひたすら考えた後、お前を過去の時点で斬ることにしたんだ。世界を絶つ斬撃、それをお前はの自分を切ったと言ったよな。世界を絶つ斬撃だけは空間時間を捻じ曲げて過去を切る事ができる。だから、時限圧縮の中、潰れかけのギリギリの状態だが、技を放つ前の過去のお前に放った。一種の賭けだな、お前が自爆技を放つ前に死んでいたらそれはどうなるかって言う。結論、過去で死んだ結果が勝り、俺は生き残りお前達は死んだ。ギリギリの賭けすぎてもう二度とやりたくないよ」

 ユピテルは既に息は在らず、バサラは全身から流れる血を止めるために止血しようと持って来ていた包帯を巻きつける。ぐるぐる巻きで包帯に血が滲むも痛みは徐々に引き始めるのを感じると再びバサラはユピテルに手向けの様に呟いた。

「天晴れだよ、ユピテル。俺が死ぬまであんたを忘れる事はない」

 時間差でヘイムダルの空間が崩れ、久々の外に出て来るとそこには自分の宿敵である神、それが笑顔で立っていた。彼の手にはユピテル同様の実力を持っていた女の姿をした神が体を貫かれており、彼女は恨めしそうにロキを睨みつけながら声を出した。

「ロキぃぃぃ! あ、んたぁ! 私達を、神という種を絶やす気なの?!」

「マドモアゼル、そう怒るなよ~。僕は今だけ友達バサラの味方、君らの敵! 戦意喪失した神も逃さない。一人の殺さず、ここで死ぬかバサラを殺すかのゲームに参加してもらうんだ! でも、君は強すぎ~。ユピテルに、オーディン兄さん二人も相手にしてんるだから、ちょっと手助けした上げただけさ。僕の英雄は完成して出て来ると言った矢先にか! や! バサラ!」

 喋りかけられたバサラであったがそれを完全に無視し、ロキを見るとゆっくりと歩き出す。

 そして、徐々にその速度を上げ、自分の間合いに入った瞬間、涅槃静寂ニルヴァーナの柄を力いっぱい握り締め、これまでの全てを込めて剣を振った。ロキはそれを手に持っていたユノーで防ぐと彼女の体は上下半分に切られ、血が一気に溢れ出た。

 切られると同時に生気が失われると溢れた血の中からロキは蹴りを入れ、バサラにぶつける。一瞬、バサラが怯んだその間にロキの手には幾つものナイフが握られており、それも彼に投げ付けると嬉しそうに叫んだ。

神技グランスキル狂宴の切り札ジョーカー

 投げ付けられたナイフはバサラにぶつかる手前に爆発する。バサラは涅槃静寂ニルヴァーナを前にし、防ぐも爆煙が上がり、ロキの姿を見失ってしまった。煙の両脇、そこから感じた氣を読み、バサラは自身の体を伏せると煙を割きながら巨大な鋏の様なモノがガチリと音を鳴らし、彼の体を細切れにしようとしていた。

「あら残念」

 ロキは嬉しそうにそう漏らすとバサラは伏せたまま、若干の力を込め、彼との距離を詰め、涅槃静寂ニルヴァーナを振おうとした。だが、真上にあった筈の巨大な鋏はいつの間にか消えており、今度は彼を押し潰そうと真上に鉄塊が現れる。

 自身が潰される寸前、目にも止まらぬ速度で剣を振るうとその鉄塊が半分に切り裂かれ、その斬撃がロキの体に傷をつけた。

 そして、バサラはようやくロキと顔を合わせる距離に立つとこれまでの全てをぶつける為に口を開く。

「お前は何なんだよ! ロキ!」

「デケェ声出さなくても聞こえてるよ~、バサラァ!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...