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第三章 人神代理戦争 勃発
二十五話 誰を英雄と讃えるのか 其の弍拾伍
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相手に刹那すらも与えることが無いユピテルの神技、それは時間を止めること。
精密に言うと、止めるのではなく時間を極限まで圧縮することで相手と自分の間にある時の流れをゆっくりさせ、その間に相手を切り付ける、不可避の斬撃、それがユピテルの剣であり、バサラを一方的に切りつけたものの正体であった。
時間を圧縮する間の斬撃、そのコースは決めなければならないが相手からすれば切られたと言う事実だけが残る。故に、その種が明かされたところで止められると言う問題はないとユピテルはそう考えていた。だが、それは今、カツラギ・バサラと言う怪物を前に打ち砕かれる。
一方のバサラは予想した訳ではない。ただ、切り傷から明確に自分の防御が薄い部分、そこに切り傷が生まれている事をある程度理解していたからこそ、ユピテルの攻撃のコースを意図的に留めていた。
そして、自分を確実に仕留める様に動くユピテルが首を狙うと知った上で自分の体を予測させ、五感を研ぎ澄まさせた結果、偶々であるが彼の剣を防いだ。
「ようやく、当たったな」
その一言にユピテルは一瞬、一歩引こうとするものの彼は思考を切り替えた。バサラの言葉は本物、だが、それよりも彼が対応するまでの時間を与えることなく切り殺す、そう判断し、すぐさま、 自身の神技を使い、切り掛かった。
バサラは一度止まると考えていた故に、ユピテルが踏み込んできた事に驚き、その剣を防げずに右肩を切り裂かれた。致命的では無いもののこれまでで一番深い傷を負い、バサラにも幾千と重ねて来た死の予感を感じ取る。
(痛い。いつも思うんだが痛みってのは幾ら重ねようと慣れないもんだな。痛い、痛い、だけど、そんな痛みが心地良い)
全身に及ぶ出血、息が切れる様な感覚、それら全てが今の自分の全てであり、限界などはとうに超えていた。目の前に立つ、神を統べる者、それは自身を殺そうとしており、視線や、体の動きは再び自分の体を切り裂こうと動く。
「ドドメだ、バサラ」
ユピテルはその一言後、瞬く間にバサラの左肩に右肩同様の傷を生んだ。それとほぼ同時、遅れながら、バサラは剣を振るった。
その時を待っていたかの様に、その瞬間を待ち望んでいたかの様にバサラは剣を力一杯振るう。ユピテルはバサラの背後に立っており、その斬撃が直接当たることは無い。
バサラの行動に意味があるのか? それは今からユピテルに襲いかかるものが結果であり、答えである。
ユピテルはバサラの背後に立っていながら彼の体に大きな切り跡が刻まれるとそこから血が勢いよく吹き出した。溢れる血を見て、ユピテルは思わず声を漏らしてしまう。
「な、に?!」
ここに来て、ユピテルは初めて動揺した。これまで生まれてこの方、怒りを向けることはあれど動揺したことなどは一切無く、自分はどんなことが起きようとも冷静に、そして、確実に物事を進めることができると言う自信があった。
そんな自分が今、動揺した。理解の出来ない斬撃、それに身を晒され、切り裂かれたと言う事実は神である自身の絶対性を崩した瞬間であり、この傷を見て、ユピテルはバサラに喋りかけた。
「何故切れた?? いや、どうやって過去の僕を切り裂いた?」
動揺しながらも口調は冷静であり、満身創痍のバサラはその声を聞くとユピテルの体に付いている傷を見た。
ようやく入った一撃、それによりかつてトールを捉えたかのような達成感から発せられたアドレナリンが脳内の痛みを鈍らせ、普段よりもテンションが上がった口ぶりでユピテルの問いに答える。
「世界を絶つ斬撃、オーディンとやった時に覚えた技だ。アイツが体に纏ってた見えない壁、あれはアイツが俺の体を傷つけていた何かと同じだと勝手に思ってな撃ち合いながら俺の意識を拡張した。後は、簡単、斬撃を放つ度に調整を繰り返し、最後に俺は世界を絶った。オーディンを切るんじゃなくて世界を絶つ、そう意識を拡張した結果、俺の剣は不可能を可能にした」
バサラは剣を構えると嬉しそうに再び口を開いた。
「説明終了、神様なら分かるだろ?」
その問いにユピテルはため息を吐きながらも彼もまた剣を構えるとそれに答えた。
「分かるか。神でも出来ないことをやって退けるなよ、人間風情が」
精密に言うと、止めるのではなく時間を極限まで圧縮することで相手と自分の間にある時の流れをゆっくりさせ、その間に相手を切り付ける、不可避の斬撃、それがユピテルの剣であり、バサラを一方的に切りつけたものの正体であった。
時間を圧縮する間の斬撃、そのコースは決めなければならないが相手からすれば切られたと言う事実だけが残る。故に、その種が明かされたところで止められると言う問題はないとユピテルはそう考えていた。だが、それは今、カツラギ・バサラと言う怪物を前に打ち砕かれる。
一方のバサラは予想した訳ではない。ただ、切り傷から明確に自分の防御が薄い部分、そこに切り傷が生まれている事をある程度理解していたからこそ、ユピテルの攻撃のコースを意図的に留めていた。
そして、自分を確実に仕留める様に動くユピテルが首を狙うと知った上で自分の体を予測させ、五感を研ぎ澄まさせた結果、偶々であるが彼の剣を防いだ。
「ようやく、当たったな」
その一言にユピテルは一瞬、一歩引こうとするものの彼は思考を切り替えた。バサラの言葉は本物、だが、それよりも彼が対応するまでの時間を与えることなく切り殺す、そう判断し、すぐさま、 自身の神技を使い、切り掛かった。
バサラは一度止まると考えていた故に、ユピテルが踏み込んできた事に驚き、その剣を防げずに右肩を切り裂かれた。致命的では無いもののこれまでで一番深い傷を負い、バサラにも幾千と重ねて来た死の予感を感じ取る。
(痛い。いつも思うんだが痛みってのは幾ら重ねようと慣れないもんだな。痛い、痛い、だけど、そんな痛みが心地良い)
全身に及ぶ出血、息が切れる様な感覚、それら全てが今の自分の全てであり、限界などはとうに超えていた。目の前に立つ、神を統べる者、それは自身を殺そうとしており、視線や、体の動きは再び自分の体を切り裂こうと動く。
「ドドメだ、バサラ」
ユピテルはその一言後、瞬く間にバサラの左肩に右肩同様の傷を生んだ。それとほぼ同時、遅れながら、バサラは剣を振るった。
その時を待っていたかの様に、その瞬間を待ち望んでいたかの様にバサラは剣を力一杯振るう。ユピテルはバサラの背後に立っており、その斬撃が直接当たることは無い。
バサラの行動に意味があるのか? それは今からユピテルに襲いかかるものが結果であり、答えである。
ユピテルはバサラの背後に立っていながら彼の体に大きな切り跡が刻まれるとそこから血が勢いよく吹き出した。溢れる血を見て、ユピテルは思わず声を漏らしてしまう。
「な、に?!」
ここに来て、ユピテルは初めて動揺した。これまで生まれてこの方、怒りを向けることはあれど動揺したことなどは一切無く、自分はどんなことが起きようとも冷静に、そして、確実に物事を進めることができると言う自信があった。
そんな自分が今、動揺した。理解の出来ない斬撃、それに身を晒され、切り裂かれたと言う事実は神である自身の絶対性を崩した瞬間であり、この傷を見て、ユピテルはバサラに喋りかけた。
「何故切れた?? いや、どうやって過去の僕を切り裂いた?」
動揺しながらも口調は冷静であり、満身創痍のバサラはその声を聞くとユピテルの体に付いている傷を見た。
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バサラは剣を構えると嬉しそうに再び口を開いた。
「説明終了、神様なら分かるだろ?」
その問いにユピテルはため息を吐きながらも彼もまた剣を構えるとそれに答えた。
「分かるか。神でも出来ないことをやって退けるなよ、人間風情が」
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