【完結!】田舎暮らしの神殺し、二度目の神殺しに挑む〜余生は静かに暮らしたいのに弟子達がさせてくれない件〜

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第三章 人神代理戦争 勃発

十三話 誰を英雄と讃えるのか 其の拾参

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 振り下ろした戦斧に涅槃静寂ニルヴァーナがぶつけられた瞬間、トールは違和感を覚えた。先ほどまで反応出来ずにいたバサラが何故か戦斧の一撃をことに。

(? 何だ? 何故、コイツは俺の攻撃を?)

 覚えた違和感を消し飛ばさずにはいられない。そう考え、トールは戦斧を連続で振い、バサラを切り裂こうとするもののそれら全てを彼は対応した。

 光の速度で放たれる連撃、それは目で追う限りでは防ぐことは不可能、それなのにバサラは全て捌き切った。

 自身の必殺の一撃全てを防がれたトールが初めて抱いたのは怒りなのでは無く、完全なる疑問であった。バサラは目でトールの連撃を追っておらず、それなのに彼は戦斧による攻撃を一切受け付けない。

 それどころか、戦斧を振るうよりも速く、剣が振るわれ神の中での最速をトールは人によって打ち破られることになる。

 光の速度で放つ連撃に弱点はない。それはバサラ自身がそう判断しており、一撃一撃が不可避且つ不可視の必殺であると確信していた。

 故に、バサラは視界を捨て、彼だけの見える物、を見ることで対処することにした。

 一度目は急に放たれたもので把握し切れず、二度目でその輪郭を捉えた。だが、輪郭を捉えたところで焦点が合わず、ギリギリで弾けたのと更に速度が上がると予想していたために、三度目を受けることにした。

 そして、その予想は的中する。
 右肩は裂かれ、筋肉も焼き切られた。だが、その代わりにバサラはトールの氣を完全に捉えるに当たった。神技グランスキルを使用時、神の全身に氣が巡り、攻撃を放つ箇所にそれが集中する。

 トールの場合、早すぎて攻撃する箇所の氣がぼんやりと浮かび上がっていた。バサラはそれを三回の攻防により、見抜くことに成功し、高速の連撃を封じ込めることに成功した。

「何なんだ!? お前は!」

 トールが構えた瞬間、それよりも速くバサラの斬撃が彼の体を刻む。技も放てず、自分を追い込むバサラに対してトールが覚えた違和感の答えに気づくと同時にあることを認識した。

 死。
 迫り来る暗がりが広がる感じたこともない表現出来ない根源的な物。

「この、この人間風情ガァ!」

 一言が終えた瞬間、両腕が刻まれ、重さに耐えきれなくなった戦斧が持てなくなると地面に落ちた。ドンと言う音だけがこだまするとバサラは涅槃静寂ニルヴァーナの持ち方を変え、トールの体目掛けて容赦無く、それを投げつける。

 トールの視界が暗く染まり、目を開けるとそこにはバサラが目の前にいた。明るくなった視界の上から振り翳され下ろさせるのは彼の拳であった。

 両手の傷は再生されず、その上でバサラが振り下ろす拳全ては殺意の籠り切った物。リズミカルにドンドンと音を立て、トールの顔はアザだらけになっていく。

 そんな中、拳を振るいながらバサラは呟いた。

「なぁ、神様よ。あんた殴り殺されそうになる時ってあるか?」

 トールに振り下ろされる拳は止まらず、彼は応える事が出来ない。だが、バサラはそれを知った上であえて止めずに殴り続けた。

「まぁ、知らねえよな。俺もつい一年くらい前に受けたばっかでさ、よーく考えれば師匠じじいもひでえけどよ。やってみると案外悪くないな。嫌な相手をボコボコに殴るのは」

 再生されない肉体と刻み込まれる痛みの数々。トールにとって全てが初めてで恐怖そのものとなる。呼吸すらもままならなくなった時、トールはバサラに対して神である自分ではあり得ない、そう考える程の一言を口にした。

「た、すけて、ころ、さないで」

「は?」

 その一言にバサラの怒りは限界値を裕に超えた。神が人間の思考に堕とされ、命を乞うとは思いもせず、それだけはあってはならないとバサラは感じると体を貫いていた涅槃静寂ニルヴァーナを蹴り上げ、突き刺していたトールと木ごと左右半分に切り裂いた。

 トールの目には涙が溢れており、それは彼の流す血と混じると赤く染まる。

 その一瞬が神にとっての苦痛の時間であったことを確認すると血に濡れた涅槃静寂ニルヴァーナを振るい、よごれを落とす。

「神が乞うなよ、命を。お前達が奪って来た物を乞うのはお門違いだろ」

 この日、カツラギ・バサラは神すらも反応出来ない高速の斬撃を得るに至った。そして、ここから神殺しの数は一気に加速して行くことになる。
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