123 / 311
第三章 人神代理戦争 勃発
一話 誰を英雄と讃えるのか 其の壱
しおりを挟む
三十年前、異界ゴルドバレー、そこは神による統治のなされた国であった。
「はは、やっぱり美しいね、人間は!」
そして、ゴルドバレーに住まう人間は神により、人生を一種の劇の様に扱われる。口を開いた神は目の前に広がる人の死体の山を見て、楽しそうにしていた。彼が起こしたのは人間同士の殺し合い、統治する地域にいる者達に嘘と真実を混ぜ込みながら疑心暗鬼を生み出してお互いを殺し合わせた。
流した嘘は実に簡単な嘘であるが常に神による統治がなされた地域の人間にその様な嘘を見抜く事など出来ず、小さな火種は一瞬にして広がる。
そして、簡単に殺し合った。相手に殺意を向け、生存を勝ち取るために意地汚く、騙し、女子供にすら容赦なく得物を突き刺す。
神にとっての最上の劇場、それこそが人の争い。
自身には一切汚れをつけず、太陽の絵が書かれたローブに身を纏った青年の様な神アポロンは血溜まりをパシャリパシャリと音を立てて歩くとそこにいる生存者を探した。
彼のもう一つの趣味、それは自身の起こした殺戮で生きている人間に手を伸ばし、自分の下で育てる事。自分に従順で、何をしても許してくれる肉の人形の人生を鑑賞し、それをみながら酒を飲む。
それこそが人とは時間の感覚が全く違う神であるアポロンにとっての最上の楽しみであった。
「今回は念入りに死んでるなー、面白くない! 一人くらい生きてろよ、全く」
独り言を呟いた瞬間、アポロンの背後から唐突に斧の様な物を彼の体に振り下ろした者がいた。
神にすら気配を気取られなかったそれは次に、腰に差していた剣をアポロンに向けて投擲した。虚を突かれるもそこからアポロンはすぐに建て直しており、剣の投擲は自身のローブを使い叩き落とす。
「不意打ちとは美しくないね、なんだい? 君は」
ローブを脱ぐと人とは明らかに違う感性で生まれた服を着ており、両手を前に構え、戦う意思を示した。アポロンの声掛けに少年は応じず、背負っていた漆黒の両刃剣を取り出すと彼は無言でアポロンとの距離を詰めてきた。
距離を詰めながらも手斧を使い投げつけるも正面からのそれは一切通じず、逆にそれを掴み少年へと投げ返す。投げ返された手斧を最低限の動きで避け、少年は両手で剣を握り締めた。
アポロンはそれを真っ向から潰そうと突きを放つと少年も同様に剣を振るう。剣と拳がぶつかった瞬間、アポロンの腕の表部分が綺麗に切り裂かれた。
「なっ?!」
神として生まれて2000年、一度たりとも敗北はなく、自身に迫る脅威など同じ神のみであったのにも関わらず、それが齢十五にも満たない少年により壊される。
「神技、偉大な太陽」
アポロンの切り裂かれた腕はすぐに再生し、両腕には太陽同様の熱を帯びた炎を纏った。神技、それは神のみに許された権能であり、神が神たる所以の秘技。アポロンの神技は擬似的な太陽を両腕に纏う事でその場にいる凡ゆる存在を融解させる。
だが、少年はモノともせず、アポロンの前に立つと自身の得物を構えて振るう準備をした。
「オイオイ! 不敬だな! でも、何だい? 君、私の拳を切り裂き、神技が通じない。人間じゃないだろう、それは!」
「人をお前の尺度で測るなよ、クソ神が」
アポロンは目の前に立つ少年に興味が湧いていた。自身の権能の象徴たる太陽を前にしても少年は焼き切れず、平然としており、プライドを傷つけられたはずなのに今は寧ろ、自分と対等に渡り合おうとする人の姿を見て、見た事もない光を見つけた、そんな気になった。
そして、アポロンも眼中にもなかった人間と言うおもちゃが自分を追い詰めようとしていることを全力で潰すために両腕を構える。
「太陽神アポロン! 君も名乗れよ、人間。私にとって最高の経験をさせてくれる少年よ!」
「死ぬヤツに名前言っても口無しだしな。いいよ、名乗ってやる。バサラ、カツラギ・バサラ、全ての神を殺す者だよ」
これがバサラにとって初めての神殺し。そして、2023年続いた創神期の終わりの始まりである。
「はは、やっぱり美しいね、人間は!」
そして、ゴルドバレーに住まう人間は神により、人生を一種の劇の様に扱われる。口を開いた神は目の前に広がる人の死体の山を見て、楽しそうにしていた。彼が起こしたのは人間同士の殺し合い、統治する地域にいる者達に嘘と真実を混ぜ込みながら疑心暗鬼を生み出してお互いを殺し合わせた。
流した嘘は実に簡単な嘘であるが常に神による統治がなされた地域の人間にその様な嘘を見抜く事など出来ず、小さな火種は一瞬にして広がる。
そして、簡単に殺し合った。相手に殺意を向け、生存を勝ち取るために意地汚く、騙し、女子供にすら容赦なく得物を突き刺す。
神にとっての最上の劇場、それこそが人の争い。
自身には一切汚れをつけず、太陽の絵が書かれたローブに身を纏った青年の様な神アポロンは血溜まりをパシャリパシャリと音を立てて歩くとそこにいる生存者を探した。
彼のもう一つの趣味、それは自身の起こした殺戮で生きている人間に手を伸ばし、自分の下で育てる事。自分に従順で、何をしても許してくれる肉の人形の人生を鑑賞し、それをみながら酒を飲む。
それこそが人とは時間の感覚が全く違う神であるアポロンにとっての最上の楽しみであった。
「今回は念入りに死んでるなー、面白くない! 一人くらい生きてろよ、全く」
独り言を呟いた瞬間、アポロンの背後から唐突に斧の様な物を彼の体に振り下ろした者がいた。
神にすら気配を気取られなかったそれは次に、腰に差していた剣をアポロンに向けて投擲した。虚を突かれるもそこからアポロンはすぐに建て直しており、剣の投擲は自身のローブを使い叩き落とす。
「不意打ちとは美しくないね、なんだい? 君は」
ローブを脱ぐと人とは明らかに違う感性で生まれた服を着ており、両手を前に構え、戦う意思を示した。アポロンの声掛けに少年は応じず、背負っていた漆黒の両刃剣を取り出すと彼は無言でアポロンとの距離を詰めてきた。
距離を詰めながらも手斧を使い投げつけるも正面からのそれは一切通じず、逆にそれを掴み少年へと投げ返す。投げ返された手斧を最低限の動きで避け、少年は両手で剣を握り締めた。
アポロンはそれを真っ向から潰そうと突きを放つと少年も同様に剣を振るう。剣と拳がぶつかった瞬間、アポロンの腕の表部分が綺麗に切り裂かれた。
「なっ?!」
神として生まれて2000年、一度たりとも敗北はなく、自身に迫る脅威など同じ神のみであったのにも関わらず、それが齢十五にも満たない少年により壊される。
「神技、偉大な太陽」
アポロンの切り裂かれた腕はすぐに再生し、両腕には太陽同様の熱を帯びた炎を纏った。神技、それは神のみに許された権能であり、神が神たる所以の秘技。アポロンの神技は擬似的な太陽を両腕に纏う事でその場にいる凡ゆる存在を融解させる。
だが、少年はモノともせず、アポロンの前に立つと自身の得物を構えて振るう準備をした。
「オイオイ! 不敬だな! でも、何だい? 君、私の拳を切り裂き、神技が通じない。人間じゃないだろう、それは!」
「人をお前の尺度で測るなよ、クソ神が」
アポロンは目の前に立つ少年に興味が湧いていた。自身の権能の象徴たる太陽を前にしても少年は焼き切れず、平然としており、プライドを傷つけられたはずなのに今は寧ろ、自分と対等に渡り合おうとする人の姿を見て、見た事もない光を見つけた、そんな気になった。
そして、アポロンも眼中にもなかった人間と言うおもちゃが自分を追い詰めようとしていることを全力で潰すために両腕を構える。
「太陽神アポロン! 君も名乗れよ、人間。私にとって最高の経験をさせてくれる少年よ!」
「死ぬヤツに名前言っても口無しだしな。いいよ、名乗ってやる。バサラ、カツラギ・バサラ、全ての神を殺す者だよ」
これがバサラにとって初めての神殺し。そして、2023年続いた創神期の終わりの始まりである。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる