120 / 311
第二章 人神代理戦争 予兆
六十八章 博士の愛した蒸気国 其の弍拾漆
しおりを挟む
だが、そんな彼の体に無慈悲にその一矢はもう片方の腕を消し飛ばす。ジータが放った一撃は極限までに圧縮し、威力よりも速度に寄せた不可避の速攻。
それは博士の左腕を消失させ、両腕がなくなることになった。得物を失った博士。
ジータは自身の一矢が博士を穿ち、彼が抵抗する術を失ったことで勝利を確信する。そんな中、博士が不適な笑みを浮かべた。
「見事だよ、ジータ。だが、惜しい、シンクの適応の予想は間違えだ! 一度受けた攻撃を時間で適応する、そこまでは正解! 一度受けた攻撃をもう一度喰らえばどうなるか! 答えは簡単! 適応が早くなる! するとどうなるか!」
博士の無くなっていたはずの両手が徐々に戻って行く。ジータ達はそれに唖然とし、博士がそれを見て、自身が再び限界を超え、真の勝利を掴んだと確信した。
次の瞬間、博士の首が地面へと叩き落とされる。何が起きたか、それは博士自身も理解しておらず、落とされた首の状態でありながら思わず溢した。
「は?」
その一撃は背後から放ったものであり、不意打ちでありながらも自身の正義を執行するために心を殺し、友を殺す決断をしたシンクによるものであった。
「沈めろ、魂の器・夜想曲」
シンクは知っていた。博士の共鳴器の能力、その適応が受けた攻撃の数で適応が早まること理解した上でジータ達に伝えたのであった。
博士の共鳴器の弱点は最初の一撃で殺し切ること。一度受けた攻撃は緩やかに適応が始まり、同じ攻撃を受けるたびに適応が早まる。たた、その攻撃に適応しただけであり、一度も受けたことのない攻撃には脆い。
そして、この決戦が始まってからシンクは一度も剣での攻撃を行っておらず、シンクはジータ達があくまで本命であると博士を錯覚させた。
ジータが決死の覚悟で博士に啖呵を切り、彼女が自分達の中で一番強いと刷り込ませる。そうすることで博士が注目する視線を自分では無く四護聖へ、ジータへと移し切った。
最後にトドメを刺すのは自分とジータ達にすら言わず、その場にいる全員を騙したシンク・ホーエンハイム、彼の策に博士は敗北を期した。
「はは、まさか知ってたのか? 私の適応の能力を」
生首は地面に落ちているのに博士は口を動かし、シンクは驚きもせず、そんな彼の目を見て答える。
「そうだな、最初ジータの矢を受けた後から次の攻撃を受けておよそ一分半で攻撃が通らなくなった。他のは三分~二分半、同じ攻撃を受けた際は三十秒ほど上振れる。ジータの攻撃はお前に対して十本、そこから共鳴器が貫けなくななったのを見てそう考えた。確信は無いからこそ、他の奴らにはアイツらでトドメを指してもらうことを伝え、このルートにハマった瞬間、俺がトドメを刺した」
「はは、本当にまぁ、生意気だなぁ、君は。そうか、私は負けたのか、首を切られたからにはもう動かせないし、共鳴器の適応は使えない。それにしても容赦無いな君は」
「四護聖だからな。仕事と私事は分てるんだ」
「はは、は、その割にはなんだいその顔は? 泣くなよ、友よ。私達は敵同士だろう? 怨敵が死ぬんだ、勝利の涙を流せよ。そうじゃなきゃ、死ぬのが悲しくなるだろう」
その一言を残して、博士は動かなくなった。博士は彼が愛した蒸気の国で、その命を朽ちた。
それは博士の左腕を消失させ、両腕がなくなることになった。得物を失った博士。
ジータは自身の一矢が博士を穿ち、彼が抵抗する術を失ったことで勝利を確信する。そんな中、博士が不適な笑みを浮かべた。
「見事だよ、ジータ。だが、惜しい、シンクの適応の予想は間違えだ! 一度受けた攻撃を時間で適応する、そこまでは正解! 一度受けた攻撃をもう一度喰らえばどうなるか! 答えは簡単! 適応が早くなる! するとどうなるか!」
博士の無くなっていたはずの両手が徐々に戻って行く。ジータ達はそれに唖然とし、博士がそれを見て、自身が再び限界を超え、真の勝利を掴んだと確信した。
次の瞬間、博士の首が地面へと叩き落とされる。何が起きたか、それは博士自身も理解しておらず、落とされた首の状態でありながら思わず溢した。
「は?」
その一撃は背後から放ったものであり、不意打ちでありながらも自身の正義を執行するために心を殺し、友を殺す決断をしたシンクによるものであった。
「沈めろ、魂の器・夜想曲」
シンクは知っていた。博士の共鳴器の能力、その適応が受けた攻撃の数で適応が早まること理解した上でジータ達に伝えたのであった。
博士の共鳴器の弱点は最初の一撃で殺し切ること。一度受けた攻撃は緩やかに適応が始まり、同じ攻撃を受けるたびに適応が早まる。たた、その攻撃に適応しただけであり、一度も受けたことのない攻撃には脆い。
そして、この決戦が始まってからシンクは一度も剣での攻撃を行っておらず、シンクはジータ達があくまで本命であると博士を錯覚させた。
ジータが決死の覚悟で博士に啖呵を切り、彼女が自分達の中で一番強いと刷り込ませる。そうすることで博士が注目する視線を自分では無く四護聖へ、ジータへと移し切った。
最後にトドメを刺すのは自分とジータ達にすら言わず、その場にいる全員を騙したシンク・ホーエンハイム、彼の策に博士は敗北を期した。
「はは、まさか知ってたのか? 私の適応の能力を」
生首は地面に落ちているのに博士は口を動かし、シンクは驚きもせず、そんな彼の目を見て答える。
「そうだな、最初ジータの矢を受けた後から次の攻撃を受けておよそ一分半で攻撃が通らなくなった。他のは三分~二分半、同じ攻撃を受けた際は三十秒ほど上振れる。ジータの攻撃はお前に対して十本、そこから共鳴器が貫けなくななったのを見てそう考えた。確信は無いからこそ、他の奴らにはアイツらでトドメを指してもらうことを伝え、このルートにハマった瞬間、俺がトドメを刺した」
「はは、本当にまぁ、生意気だなぁ、君は。そうか、私は負けたのか、首を切られたからにはもう動かせないし、共鳴器の適応は使えない。それにしても容赦無いな君は」
「四護聖だからな。仕事と私事は分てるんだ」
「はは、は、その割にはなんだいその顔は? 泣くなよ、友よ。私達は敵同士だろう? 怨敵が死ぬんだ、勝利の涙を流せよ。そうじゃなきゃ、死ぬのが悲しくなるだろう」
その一言を残して、博士は動かなくなった。博士は彼が愛した蒸気の国で、その命を朽ちた。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
最強の職業は付与魔術師かもしれない
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。
召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。
しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる――
※今月は毎日10時に投稿します。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~
飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。
彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。
独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。
この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。
※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる