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第二章 人神代理戦争 予兆
六十五章 博士の愛した蒸気国 其の弍拾肆
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ジータの額を赤い閃光が貫こうとする直前、その腕を霧の中から何者かが切り落とした。光線は放たれるもののそれはジータには当たらず、博士は何が起きたかを知るために自身の目の前に出ている画面越しで辺りを見渡した。
(サーモグラフィーで見ても観測出来ない、だと?! 何が起きている?!)
有利に立っていた自分がわからないことが出てくるとそれを博士は追わずにはいられない。ジータは自分が何故か死んでいないことに戸惑うと霧が溢れ、目の前にいた博士の姿が見えなくなった。
「何が起きてるの?」
ジータが呟くとその霧の中から、彼女の共鳴器である無窮壱尽を握りしめたシンクが姿を現した。
「くくく、随分な様子じゃないかジータ。概ね、死を覚悟していたってところか?」
「シンク! 無事だったのね?! 大丈夫?! 怪我は?!」
「安心しろ、お前達のおかげでピンピンしてる。そして、よく耐え切ってくれたな。分析は完了した、これからが本番だ」
シンクはそう言うと無窮壱尽をジータに手渡した。それを握るもジータは既に自分の最大の技が簡単に破られたことを思い出し、少しばかり腕の震えが出てしまう。
「どうした? 勝つ算段が出来たんだ、いつも通りの悪態をつけよ、ジータ」
「それは、そうですが、本当にあれに勝てますか? シンク。私は自分が築いた技が一瞬に踏み躙られ、竜種ですら仕留め切った一矢が相手の攻撃により一切通じなかった。そんな相手に、私達は!」
「馬鹿言え、何故お前が負ける気になっている? 俺達の中で一番強いのはお前だぞ? そんなお前が俺達の士気を下げてどうするんだ? ジータ、俺はお前のことが嫌いだ。だがな、幼馴染であり、四護聖という同僚としては最も信頼における相手だと思ってる。それにまだ、お前は本気じゃない。何のために俺が昨日の夜丸々かけてそいつを改造したと思ってる? ジータ、俺はこれから他の二人も叩き起こすそれまで耐えれるか?」
シンクの言葉に嘘偽りなく、ジータはそれを聞き、自分の胸につっかえていたものがするりと落ちた。すると、ジータは思わず、先ほどとは違う安心した様な笑みを見せるとシンクに対して口を開いた。
「あなたにそんなことを言われると背筋がゾアゾアしますね。ミカはこんな男の何処が良かったんだか。ふふ、でも、ありがとう」
「くくく、馬鹿言え。弱気なお前を見てたら気持ち悪くなっただけだ。作戦は伝えた、後はやることは一つ、勝つぞ」
「ええ、勝って御師様を探しましょう。全然姿が見えないのは少々心配だし」
ジータは無窮壱尽を力強く握りしめると彼女に恐怖は無く、霧を自身の持つ運命の風を使い、切り裂く。
そして、博士の目の前に立つと彼は自分の斬られた腕をつけている最中であり、嬉しそうに口を開いた。
「おや、おやおやおやおや! どうしたんだい! ジータ? さっきまでは死を覚悟したかの様だったのに武器なんて握って目の前に出てくるとは。どう言う風の吹き回しだい? 大方、シンクの能力を使い逃げたんだろう? やっぱり、彼が一番用心すべきだったかな」
「うるさい、シンクよりも私が弱いって言いたいの? それなら間違えよ。四護聖の中で一番強いのは私、なら、用心すべきは私であるべきでしょ?」
「アッハハハ! キミィ! さっきの蹂躙を前にしてもまだ、そんなことを言えるのか! 恐れ入った恐れ入った! 蛮勇とも捉えれるがそれよりも尊敬が勝るばかりだ! 四護聖ジータ!」
「うっさいなぁ! 聞こえてるわよ! 博士! それでも勝てるって言ってるの。こっからが本気、見せてあげる」
すると、手に握っていた無窮壱尽が翠色の光を纏いながら輝いた。無窮壱尽はジータが勝つために、己の勝利と言う結果を貫こうとする意志に共鳴する。
(サーモグラフィーで見ても観測出来ない、だと?! 何が起きている?!)
有利に立っていた自分がわからないことが出てくるとそれを博士は追わずにはいられない。ジータは自分が何故か死んでいないことに戸惑うと霧が溢れ、目の前にいた博士の姿が見えなくなった。
「何が起きてるの?」
ジータが呟くとその霧の中から、彼女の共鳴器である無窮壱尽を握りしめたシンクが姿を現した。
「くくく、随分な様子じゃないかジータ。概ね、死を覚悟していたってところか?」
「シンク! 無事だったのね?! 大丈夫?! 怪我は?!」
「安心しろ、お前達のおかげでピンピンしてる。そして、よく耐え切ってくれたな。分析は完了した、これからが本番だ」
シンクはそう言うと無窮壱尽をジータに手渡した。それを握るもジータは既に自分の最大の技が簡単に破られたことを思い出し、少しばかり腕の震えが出てしまう。
「どうした? 勝つ算段が出来たんだ、いつも通りの悪態をつけよ、ジータ」
「それは、そうですが、本当にあれに勝てますか? シンク。私は自分が築いた技が一瞬に踏み躙られ、竜種ですら仕留め切った一矢が相手の攻撃により一切通じなかった。そんな相手に、私達は!」
「馬鹿言え、何故お前が負ける気になっている? 俺達の中で一番強いのはお前だぞ? そんなお前が俺達の士気を下げてどうするんだ? ジータ、俺はお前のことが嫌いだ。だがな、幼馴染であり、四護聖という同僚としては最も信頼における相手だと思ってる。それにまだ、お前は本気じゃない。何のために俺が昨日の夜丸々かけてそいつを改造したと思ってる? ジータ、俺はこれから他の二人も叩き起こすそれまで耐えれるか?」
シンクの言葉に嘘偽りなく、ジータはそれを聞き、自分の胸につっかえていたものがするりと落ちた。すると、ジータは思わず、先ほどとは違う安心した様な笑みを見せるとシンクに対して口を開いた。
「あなたにそんなことを言われると背筋がゾアゾアしますね。ミカはこんな男の何処が良かったんだか。ふふ、でも、ありがとう」
「くくく、馬鹿言え。弱気なお前を見てたら気持ち悪くなっただけだ。作戦は伝えた、後はやることは一つ、勝つぞ」
「ええ、勝って御師様を探しましょう。全然姿が見えないのは少々心配だし」
ジータは無窮壱尽を力強く握りしめると彼女に恐怖は無く、霧を自身の持つ運命の風を使い、切り裂く。
そして、博士の目の前に立つと彼は自分の斬られた腕をつけている最中であり、嬉しそうに口を開いた。
「おや、おやおやおやおや! どうしたんだい! ジータ? さっきまでは死を覚悟したかの様だったのに武器なんて握って目の前に出てくるとは。どう言う風の吹き回しだい? 大方、シンクの能力を使い逃げたんだろう? やっぱり、彼が一番用心すべきだったかな」
「うるさい、シンクよりも私が弱いって言いたいの? それなら間違えよ。四護聖の中で一番強いのは私、なら、用心すべきは私であるべきでしょ?」
「アッハハハ! キミィ! さっきの蹂躙を前にしてもまだ、そんなことを言えるのか! 恐れ入った恐れ入った! 蛮勇とも捉えれるがそれよりも尊敬が勝るばかりだ! 四護聖ジータ!」
「うっさいなぁ! 聞こえてるわよ! 博士! それでも勝てるって言ってるの。こっからが本気、見せてあげる」
すると、手に握っていた無窮壱尽が翠色の光を纏いながら輝いた。無窮壱尽はジータが勝つために、己の勝利と言う結果を貫こうとする意志に共鳴する。
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