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第二章 人神代理戦争 予兆
六十章 博士の愛した蒸気国 其の拾玖
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四護聖達が戦う一方でその逆の方へとバサラは走る。見覚えがある、いや、忘れることの出来ない姿、それが視界に入った途端、走らずにはいられなかった。
(あー! もう! 何で、何で今見せたんだ! 何で何だよ!)
バサラが霧の中を進み、影が見えるとそれに向かい声を上げた。
「なぁ! そこにいるんだろ! 何で逃げんだよ! 師匠!」
師匠、バサラがそう言うと影が霧を切り裂き、その正体を自ら明かした。長い髭を左手で弄りながらカツリカツリと音を立て、腰に差した剣に手を置き、その姿をバサラの目の前に見せた。
「おう、坊元気か?」
白髪を括り、軍服の様なものに身を包んだ老人はバサラに喋りかけると彼はそれに答える。
「元気も何も31年ぶりだろ! 何してたんだよ! 心配したんだぞ!」
困惑と戸惑い、そして、その中に密かに隠している師匠に対しての尊敬。それがまざり、ぐちゃぐちゃになりながらもバサラは嬉しそうにしていた。師匠と呼ばれた男もバサラと出会えたのかにこりと笑っており、彼もまた喜びを露わにするかと思えた。
「ハハッ、坊。俺を心配か? この俺だぞ? お前に神殺しの技術を教えた俺に心配だと? 片腹痛いな」
「そんなこと言っても、いきなり消えたのはあんたの方だろ! それよりも何でこんなとこにいんだよ! これからここ危ないからどっか行っておいてくれ。後で、会いに行くから地下にでも」
「坊、俺は別に遊びに来た訳でも、お前と飯を食いに来た訳じゃないんだよ」
「?? じゃあ、何しに来たんだ?」
バサラの問いに優しく微笑みながら男はゆっくりと答えた。
「そりゃ、お前を殺すためだよ、坊」
その一言を後に男は腰に差していた刃がボロボロになった剣を抜き、バサラに向けて払う。それはバサラ同様、飛ぶ斬撃、いや、同様ではなく、かつて神殺しを成した男よりも大きく、そして、無慈悲なモノであった。
バサラは手に握っていた涅槃静寂を挟み、自身を首を断とうとする一撃を何とか逸らすとその瞬間、彼のスイッチが切り替える。
左手で涅焔を握り、両手に持つ得物を携えると自身の間合いに相手を入れるために距離を詰めた。
「師匠! 何しやがる!」
「少しは戻って来たか? 坊よ。お前の目、前から見てたが修羅が抜けてる」
「んだと!」
男はバサラが放つ涅槃静寂による一撃を簡単に塞ぐと彼の体に蹴りを入れる。だが、それを左手に握っていた涅焔により、弾くと男の顔目掛けて回し蹴りを放った。
男は顔に蹴りがほんの少し入りよろめくとその瞬間を狙い、バサラは追撃した。両手に握る剣と刀による連撃、片腕で振るいながらも一撃一撃が重く、尚且つ、涅槃静寂と涅焔から放たれるもの、その威力はかつて程では無いにしても確実にダメージを与えるには十分である。
ただし、それが人であれば。
神殺しを成したバサラの師匠。
その男は、人では無い。
「坊、そんなもんはなっちまったんか? お前は」
男の一言を聞き、バサラは思わず両腕に握っていた得物を前にし、防御の構えを取っていた。
無理矢理取ったのではなく、自らが取らねばならないそう思わせられる程の圧倒的なまでの氣。
バサラは自分の記憶の奥底に眠るかつて師匠である男が自分につけた稽古と呼ぶ殺し合い、その時に見た死を予感させる動き、そのモノであった。
(や、っば)
男は何もしていない。それなのにバサラの本能が彼が自分を本当に殺しに来ていると錯覚させるほど。
絶対的な捕食者でありながら強者。
「ハハッ、坊よ、もっとひりつけ。そうだなぁ、戦う理由をやろう、廃棄孔二席、公爵、お前の師ではなく、お前の敵、それが今の俺だ」
(あー! もう! 何で、何で今見せたんだ! 何で何だよ!)
バサラが霧の中を進み、影が見えるとそれに向かい声を上げた。
「なぁ! そこにいるんだろ! 何で逃げんだよ! 師匠!」
師匠、バサラがそう言うと影が霧を切り裂き、その正体を自ら明かした。長い髭を左手で弄りながらカツリカツリと音を立て、腰に差した剣に手を置き、その姿をバサラの目の前に見せた。
「おう、坊元気か?」
白髪を括り、軍服の様なものに身を包んだ老人はバサラに喋りかけると彼はそれに答える。
「元気も何も31年ぶりだろ! 何してたんだよ! 心配したんだぞ!」
困惑と戸惑い、そして、その中に密かに隠している師匠に対しての尊敬。それがまざり、ぐちゃぐちゃになりながらもバサラは嬉しそうにしていた。師匠と呼ばれた男もバサラと出会えたのかにこりと笑っており、彼もまた喜びを露わにするかと思えた。
「ハハッ、坊。俺を心配か? この俺だぞ? お前に神殺しの技術を教えた俺に心配だと? 片腹痛いな」
「そんなこと言っても、いきなり消えたのはあんたの方だろ! それよりも何でこんなとこにいんだよ! これからここ危ないからどっか行っておいてくれ。後で、会いに行くから地下にでも」
「坊、俺は別に遊びに来た訳でも、お前と飯を食いに来た訳じゃないんだよ」
「?? じゃあ、何しに来たんだ?」
バサラの問いに優しく微笑みながら男はゆっくりと答えた。
「そりゃ、お前を殺すためだよ、坊」
その一言を後に男は腰に差していた刃がボロボロになった剣を抜き、バサラに向けて払う。それはバサラ同様、飛ぶ斬撃、いや、同様ではなく、かつて神殺しを成した男よりも大きく、そして、無慈悲なモノであった。
バサラは手に握っていた涅槃静寂を挟み、自身を首を断とうとする一撃を何とか逸らすとその瞬間、彼のスイッチが切り替える。
左手で涅焔を握り、両手に持つ得物を携えると自身の間合いに相手を入れるために距離を詰めた。
「師匠! 何しやがる!」
「少しは戻って来たか? 坊よ。お前の目、前から見てたが修羅が抜けてる」
「んだと!」
男はバサラが放つ涅槃静寂による一撃を簡単に塞ぐと彼の体に蹴りを入れる。だが、それを左手に握っていた涅焔により、弾くと男の顔目掛けて回し蹴りを放った。
男は顔に蹴りがほんの少し入りよろめくとその瞬間を狙い、バサラは追撃した。両手に握る剣と刀による連撃、片腕で振るいながらも一撃一撃が重く、尚且つ、涅槃静寂と涅焔から放たれるもの、その威力はかつて程では無いにしても確実にダメージを与えるには十分である。
ただし、それが人であれば。
神殺しを成したバサラの師匠。
その男は、人では無い。
「坊、そんなもんはなっちまったんか? お前は」
男の一言を聞き、バサラは思わず両腕に握っていた得物を前にし、防御の構えを取っていた。
無理矢理取ったのではなく、自らが取らねばならないそう思わせられる程の圧倒的なまでの氣。
バサラは自分の記憶の奥底に眠るかつて師匠である男が自分につけた稽古と呼ぶ殺し合い、その時に見た死を予感させる動き、そのモノであった。
(や、っば)
男は何もしていない。それなのにバサラの本能が彼が自分を本当に殺しに来ていると錯覚させるほど。
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「ハハッ、坊よ、もっとひりつけ。そうだなぁ、戦う理由をやろう、廃棄孔二席、公爵、お前の師ではなく、お前の敵、それが今の俺だ」
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