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第二章 人神代理戦争 予兆
五十六章 博士の愛した蒸気国 其の拾伍
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蒸気国ヴェープルに朝は来ない。何故なら、その国全体を要塞とし、その中に人々は住んでいるからである。要塞の壁や、建物はかつて人が住んでいた名残であり、それらはもう機械兵が定期的に見回るだけの無人の物となっていた。故に、朝という概念が崩壊し、彼らは陽の光を浴びずに生きている者達が多い。
だが、五人の影がその要塞の外に向かい、一人の放つ風が彼らを霧で別れさせない様にと切り裂いた。
風は彼ら五人の周囲の霧を晴れさせるも陽の光を見れるほどでは無く、前が何も見えないまま足を前に前にと進める他なかった。
少しして、彼らの目の前に長いコートに身を包んだ青髪の男が現れると彼らに演劇を始めるかの様にお辞儀をした。
「良くぞお集まり頂けました! 四護聖とその師の皆々様」
「御託は良いので早くやりましょう? やる気十分なんでしょう?」
「シンクにも良く文句言われてるだろ、君! まぁ、良い! そんなことは些事! 君たちは今から圧倒的な力を前に潰されるだけの羽虫! 羽虫の名を覚えるほど、私に余裕はないのでね!」
博士が四護聖を煽る一方、バサラは彼に目を向けていたがほんの一瞬、霧の中に動いた姿に目を奪われた。
(今、の? いや、見間違えるはずがない。あの姿は)
バサラは考えた瞬間に動き出すと呆気に取られる四護聖に声をかけた。
「ごめん、みんな、ちょっと抜ける!」
バサラはそう言うと霧の中に走って行き、そんな彼の姿を見て、先程までは煽っていたジータがここ一番で動揺した。
「え?! 御師様?! 何処へ!」
彼女の声を無視し、バサラは霧の中に消えて行くとそんな彼らを見て博士は逆に煽る様に声を上げた。
「ははは! 君の御師様とやらは弱腰だねえ! まだ、何も見せてもいないのに消えるなんて何ともまぁ!」
「煽るなよ、博士。元より俺達だけの予定であったんだから、問題無しだろ? それとも先生が抜けて安心したか? 意外と臆病なんだな」
「君も煽るじゃないか? まぁ、良い! それじゃあ、始めよう! 君達と私、この国の存亡を賭けた決戦を今ここに宣言する!」
博士は自身の体を霧の中に潜ませると大きな声で叫んだ。
「我が運命は壊滅。求めるは終焉、目覚めるは破壊者。共鳴器・火葬大黒天よ、我が運命の導に従い解き放て。その真なる姿を」
共鳴器と自身の運命の共鳴。そして、それは博士が生み出した兵器の起動コードでもある。
霧を裂き、現れ出でるはアダマンタイトで生まれし宙に浮く四つの腕に、二本の足、そして、それに追随する鋼の巨体。これこそが超大型駆動式共鳴器・火葬大黒天の正体であり、四つの腕は赤、青、黄、紫の色に分かれたそれらは一気にジータ達に向かって来た。
振り下ろされる巨大な拳に対して、四護聖は動じることなく、各々が持つ共鳴器を握りしめて口を開いた。
「我、運命は狩人、獲物を屠る矢であり、それを番う弓。共鳴器・無窮壱尽よ。我が運命の導に従い解き放て。その真なる姿を」
「我、運命は闘士! 猛る闘争、握るは剣! 共鳴器・紅蓮御旗よ、我が運命の導に従い解き放て! その真なる姿を!」
「我、運命は魔導。鎮めるは予兆、握るは杖。共鳴器・魂の器よ、我が運命の導に従い解き放て、その真なる姿を」
「我、運命は豊穣。促すは調和、握るは拳。共鳴器・母なる大地よ、我が運命の導に従い解き放て、その真なる姿を」
四人の得物は変化し、各々が得意な形となるとそれを躊躇いなく振り下ろされた拳目掛けて振るった。
赤い腕をグランが、青い腕をジータが、黄色い腕をミカが、紫の腕をシンクが簡単に吹き飛ばすと巨人はその様子を見て、何処からか声を出した。
「さぁ! これから始まる一方的な蹂躙に、君たちはどれくらいついてこれるかい!」
博士が操縦する巨人から放たれた言葉にジータは自身が持つ弓の先を向け、それに答えた。
「逆に言っておくわ、博士。装備の準備は十分? 軽く見積もってるなら時間あげるから取って来なさい」
その一言を放った瞬間、アダマンタイト製の巨人は動き出す。彼らをすり潰すために、走り出した巨体を止めることは在らず、踏み躙るまで止まない。
だが、それに対して四護聖全員が臆する事ない。彼らにとってこの様な化物との戦闘が本業であり、四護聖と呼ばれる所以であるから故。
だが、五人の影がその要塞の外に向かい、一人の放つ風が彼らを霧で別れさせない様にと切り裂いた。
風は彼ら五人の周囲の霧を晴れさせるも陽の光を見れるほどでは無く、前が何も見えないまま足を前に前にと進める他なかった。
少しして、彼らの目の前に長いコートに身を包んだ青髪の男が現れると彼らに演劇を始めるかの様にお辞儀をした。
「良くぞお集まり頂けました! 四護聖とその師の皆々様」
「御託は良いので早くやりましょう? やる気十分なんでしょう?」
「シンクにも良く文句言われてるだろ、君! まぁ、良い! そんなことは些事! 君たちは今から圧倒的な力を前に潰されるだけの羽虫! 羽虫の名を覚えるほど、私に余裕はないのでね!」
博士が四護聖を煽る一方、バサラは彼に目を向けていたがほんの一瞬、霧の中に動いた姿に目を奪われた。
(今、の? いや、見間違えるはずがない。あの姿は)
バサラは考えた瞬間に動き出すと呆気に取られる四護聖に声をかけた。
「ごめん、みんな、ちょっと抜ける!」
バサラはそう言うと霧の中に走って行き、そんな彼の姿を見て、先程までは煽っていたジータがここ一番で動揺した。
「え?! 御師様?! 何処へ!」
彼女の声を無視し、バサラは霧の中に消えて行くとそんな彼らを見て博士は逆に煽る様に声を上げた。
「ははは! 君の御師様とやらは弱腰だねえ! まだ、何も見せてもいないのに消えるなんて何ともまぁ!」
「煽るなよ、博士。元より俺達だけの予定であったんだから、問題無しだろ? それとも先生が抜けて安心したか? 意外と臆病なんだな」
「君も煽るじゃないか? まぁ、良い! それじゃあ、始めよう! 君達と私、この国の存亡を賭けた決戦を今ここに宣言する!」
博士は自身の体を霧の中に潜ませると大きな声で叫んだ。
「我が運命は壊滅。求めるは終焉、目覚めるは破壊者。共鳴器・火葬大黒天よ、我が運命の導に従い解き放て。その真なる姿を」
共鳴器と自身の運命の共鳴。そして、それは博士が生み出した兵器の起動コードでもある。
霧を裂き、現れ出でるはアダマンタイトで生まれし宙に浮く四つの腕に、二本の足、そして、それに追随する鋼の巨体。これこそが超大型駆動式共鳴器・火葬大黒天の正体であり、四つの腕は赤、青、黄、紫の色に分かれたそれらは一気にジータ達に向かって来た。
振り下ろされる巨大な拳に対して、四護聖は動じることなく、各々が持つ共鳴器を握りしめて口を開いた。
「我、運命は狩人、獲物を屠る矢であり、それを番う弓。共鳴器・無窮壱尽よ。我が運命の導に従い解き放て。その真なる姿を」
「我、運命は闘士! 猛る闘争、握るは剣! 共鳴器・紅蓮御旗よ、我が運命の導に従い解き放て! その真なる姿を!」
「我、運命は魔導。鎮めるは予兆、握るは杖。共鳴器・魂の器よ、我が運命の導に従い解き放て、その真なる姿を」
「我、運命は豊穣。促すは調和、握るは拳。共鳴器・母なる大地よ、我が運命の導に従い解き放て、その真なる姿を」
四人の得物は変化し、各々が得意な形となるとそれを躊躇いなく振り下ろされた拳目掛けて振るった。
赤い腕をグランが、青い腕をジータが、黄色い腕をミカが、紫の腕をシンクが簡単に吹き飛ばすと巨人はその様子を見て、何処からか声を出した。
「さぁ! これから始まる一方的な蹂躙に、君たちはどれくらいついてこれるかい!」
博士が操縦する巨人から放たれた言葉にジータは自身が持つ弓の先を向け、それに答えた。
「逆に言っておくわ、博士。装備の準備は十分? 軽く見積もってるなら時間あげるから取って来なさい」
その一言を放った瞬間、アダマンタイト製の巨人は動き出す。彼らをすり潰すために、走り出した巨体を止めることは在らず、踏み躙るまで止まない。
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