【完結!】田舎暮らしの神殺し、二度目の神殺しに挑む〜余生は静かに暮らしたいのに弟子達がさせてくれない件〜

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第二章 人神代理戦争 予兆

五十五章 博士の愛した蒸気国 其の拾肆

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 鼻歌を歌いながら博士プロフェッサーは歩いていた。友との決戦、それが待ち遠しく、そして、その勝利の暁にはこの国を手に入れれることへの喜びのあまり、足取りはこれまで以上に軽くなる。

 博士プロフェッサーは急にとある部屋の前に止まると扉をゆっくり開けた。

「やぁ、女王陛下ターニャ、元気にしてるかい?」

 博士プロフェッサーが開けた扉の先、そこにはベッドに横たわり、本を読んでいた真っ白な髪の女性がいた。ターニャと呼ばれた女性は本を閉じると博士プロフェッサーに視線を向け、声を出した。

「とっても元気よ、ロイド」

「ははは! 君だけだよ! その名で呼んでくれるのは! シンクは既に敵だと認識してるのか博士プロフェッサーとしか言ってくれなくなってしまったからね! 寂しいものだよ!」

「それは残念ね。でも、結局、あなたは世界の敵なのでしょう? それであればシンクからしたらそう思われで仕方ないのでは?」

 ターニャは博士プロフェッサーに笑顔を向けるとその輝かしい表情を直視出来ず、視線を別へと逸らした。

 ターニャ・パンク、彼女はヴェープルの国王でありながら、学者であった。そして、彼女がヴェープル学習院に所属していた時の同期、それこそが博士プロフェッサーとシンクである。

 博士プロフェッサーが来て、一ヶ月でヴェープルは機械兵の運用へと辿り着き、そこから改良を重ねた結果、現在に至る。ただ、それは博士プロフェッサーのみの成果であらず、シンクとターニャ二人の技術が存分に組み込まれており、三人がヴェープルと言う国を発展させて来たことに違いはなかった。

「明日が決戦なのよね、この国がどちらの手に渡るのか」

「最高の席でのご観覧! と行きたいところなんだがねえ、君は体が弱いからね。私達どちらかが勝ってこの扉を叩くまでのお楽しみだ! なぁ、ターニャ、話は変わるんだが私が敵だと知ってどう思った? 何かこう驚きや絶望、困惑や戸惑い、そんなモノはあったかい?」

 博士プロフェッサーからの問いにターニャは笑顔を崩さず、答えた。

「無いよ。ロイドはさ、ロイドだもの。それであなたを拒んだり、嫌いになるのはナンセンスでしょ? シンクもそんなに気にして無いと思うな」

「ははは! 君は本当に素直で可愛いな。そうか、そう言う結果もあるのか。なるほど、なるほど、なぁ、ターニャ、私はこの世界の侵略者だ。それは紛れもない事実で、覆せようのない真実。だけどね、君たちと育んだ研究の数々は僕にとって素晴らしい経験であった。ヴェープル女王よ、今からは君の国を狙う博士プロフェッサーとして相対しよう」

「切り替えが早くて良いわね、博士プロフェッサー。あなたがそれを名乗るなら私もそう呼ばせて貰うわ。あ、一応、あなたが勝った場合のお願いでね、ルーヴェンの王様から五大王国会議の手紙が届いているから、それへの連絡しておいて」

 最後まで笑顔を崩さず、慈愛の表情を向けると博士プロフェッサーは背を向け、部屋を去っていった。

 互いに相容れぬ敵同士。それは変えようのないものであったが、博士プロフェッサーは自身が気付かぬ内にシンクやターニャ、彼らに対して友愛の気持ちを抱いていた。

 だが、その感情をフラスコに封じ込め実験の成果として扱う。友情という名のラベルを貼り、彼らにとって自分は害であるかのように振る舞おうと心がけた。
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