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第二章 人神代理戦争 予兆

三十九章 聖女の行進 其の参拾壱

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 ルーヴェン王国初代国王レンブラント・ホーキンズ、彼は齢50歳で国を建てた。そして、それ以前より番となっていた女性、それを妃として迎えるも彼女は城に行くのを嫌がり、森で暮らすと言うとその息子は城に出たいと言い、彼女はそれを許した。

 レンブラント・ホーキンズが結婚した相手、それは純血のエルフであり、彼が王位を退いた後、その息子であるローズ・ホーキンズがその地位を受け継いでいた。

 世間での彼への評価、それはわがままであった。国を執り行うにも自分の意見を曲げず、必ず自身を通す。ローズが案を出した時、周りの臣下達は張り合わず、それに従うのみであった。

 側から見れば暴君とも捉えれる行動だが、国の人々はそんな彼のことを慕っていた。理由はそのわがままに、人々は救われる事が多かった。

 王位を継承後、ローズは書を嗜むことを国民達に押し付けた。何故そんなものを? そう考えた者達は多く、それに反対して国民達はローズの退位を求めた。

 だが、結果として、商売をするにしても言葉を使えなければ話にならない事が増え、モノの価値の見出し方が格段と上手くなる。ルーヴェンの経済は五大王国のミレニアム王国を除いて比べ物にならないほど成長した。

 他にも奇抜な政策をし、最初は反対する者が多かったが次第に彼の一手が自分達の成長につながると理解し始め、徐々にそれらは無くなって行き、ローズ・ホーキンズはわがままながらに慕われる王となったのだ。

 そんな、ローズが今、バサラ目掛けて神殺しの大英雄と呼んだ。

「何かの間違いなんじゃないかな? 僕は神なんて」

「オイオイ、共に叔母さんを語らえる存在だぞ? そんな俺に嘘をつくのか?」

「いや、人違いだ。大体、僕、エルフとなんて関わり無いし」

「さっき、俺の顔見てアイリスって言ったのは?」

 口籠る。
 ポロリと漏れてしまった言葉に後悔しながらバサラはため息を吐いた。目の前にいるのが王であるのは知っており、自分が無礼を働いたことを理解している。ただ、やり難く、話し辛いのであった。

「ルーヴェン王国国王様が僕なんかに時間割いてもいいのかな?」

 何とかひり出した言葉も煽っている様になってしまい、バサラは自分のテンポを失っているのを感じた。だが、そんなことを気にすることなく、ローズはその問いに答えた。

「ははっ! 先日、王位に戻って来たんだ、やることは山盛りさ。だがな、この国を救ってくれた影の英雄様の顔を見ておきたかったのと噂の神殺し様が来てると聞いてな居ても立っても居られなくなったってもんよ」

「あはは、そっか。うん、まぁ、なら、期待させてしまって申し訳ないね。僕はしがない田舎の剣術師範くらいだよ」

「お前達のこと、空から見てたぞ。俺だって混ざってるがエルフの血を引いてる。なら、魔術なんてチョチョイのチョイよ。鳥の視界を借りて見てたが、お前すごいな。あんなの見せられたら片田舎の剣術師範で済むわけねえよ」

 エルフは独自の形で運命を引き出しており、彼らはそれを魔術と呼んだ。共鳴器を介して力を使うのではなく、自分自身が共鳴器とすることで力を引き出すことが出来る。人間がその方法で運命を引き出そうとすると肉体の破損が起きてしまうのでエルフのみが出来るモノであった。

「エート、ヒトチガイダヨ」

「嘘が下手か? まぁ、いい、俺がここに呼んだ理由は一つ、叔母さんの話をしたかったのとお前達ミレニアム王国の支援への感謝を告げるためだ。ルーヴェン王国国王として国を代表して感謝する。ありがとう、この国を救ってくれて」

「僕は何もやってないし、礼を言うならユースや吟千代ぎんちよだよ」

 ローズが頭を下げるもそれに対してバサラは謙遜すると彼は笑いながら再び声を上げた。

「かー! 良いんだよ、アイツらには後々するんだ。今はあんたと喋りたかった。まぁ、いつか、あんたが語りたくなったら語りに来いよ。俺は好きなんだ、神でも、人でも、エルフでも、魔物でも、英雄譚として刻まれる話がな」

 少し前の緊張感漂う空気はいつの間にか無くなっており、バサラとローズはボロボロの玉座の間で少しばかり互いの過去を語らった。

 バサラが愛したエルフであるアイリスについて、彼らのみが共有出来る思い出を。
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