【完結!】田舎暮らしの神殺し、二度目の神殺しに挑む〜余生は静かに暮らしたいのに弟子達がさせてくれない件〜

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第二章 人神代理戦争 予兆

三十章 聖女の行進 其の弍拾弍

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「やるねえ! 召使サーヴァント! お前、それで弱いとか謙遜しすぎだぞ!」

 ユースとトオルが死闘を繰り広げている中、城内広間の戦いは熾烈を極めていた。

 エイブラハムの周囲には自身の共鳴器である、フギン・ムニンがその能力により、彼の周りを回転しながら守っていた。

 エイブラハムが持っていた二つの手斧、それは二つで一つの共鳴器・フギン、ムニンであり、その本質は思考と記憶。それはエイブラハムの運命、狩人の能力に合わせ、彼が放つ風を記憶し、それを頼りに常に周囲を回転しながら浮遊する支援機となる。

 そして、もう一つ握る両刃の斧、それはまだ運命の解放を行なっておらず、それであっても召使サーヴァントを圧倒した。

(うっっっっっっざいなぁ! 僕嫌いなんだよ! 戦いながら喋りかけるやつ! しかも、戦いながら喋ることも僕の性格を分かっててわざとだ! 相手の嫌なところを悉くついてくるタイプ! この戦い方、公爵デュークに似てるな!)

 召使サーヴァントが周囲を舞う、六つの形状の異なる武器たちは共鳴器・六波羅蜜パラミータであり、その本質は苦行。

 六つの武器は水で形を成してはいるが常に形態を変化させており、固定されていない。召使サーヴァントは共鳴器の本体である水を用いて、遠距離からの攻撃を放つもそれらは全てフギン・ムニンに塞がれてしまい、エイブラハムに近距離戦を強いられていた。

 召使サーヴァントは別に近距離戦が苦手では無く、むしろ、そちらの方が好みであったが、そんな彼を圧倒し、一方的に追い込む実力者、それがエイブラハムである。

 水の形状を変化させ、作れる武器の最大数である六つの武器を用いてエイブラハムの死角を突き、同時に自身も水の剣を用いて攻撃を放つが、死角の攻撃はフギン・ムニンが視界に映る攻撃は本人が対応した。

「良いね! 手数の多さが売りそうな共鳴器だな!」

「うるさい、俺は喋りたくないんだ。静かにしてくれ」

「連れねえなぁ!」

 そんなやり取りをしながら、フギン・ムニンの防御の壁を一本の武器がすり抜け、エイブラハムの頬に切り傷が生まれた。

(やっぱり、こいつ、思考しながら戦うタイプだ。フギン・ムニンは全自動フルオートじゃ無い。ある一定の風を頼りに記憶し、その道を沿って俺の周囲を回ってる。そのルートは数十通り存在してんだがな! コイツそれをこの短い間に覚え始めてる。これは俺ももう一つの共鳴器を使うか)

 エイブラハムは召使サーヴァントから距離を取り、地面に斧を突き刺すとその運命を解放させようとする。

 だが、次の瞬間、彼らの背後から足音が聞こえ、その纏う異質な空気にエイブラハムと召使サーヴァントの二人の視線がそこに向かった。

「や! エイブラハム! 元気だった?」

 自分の名を口にしたのは、カツラギ・バサラ本人であり、彼の横には吟千代ぎんちよが嬉しそうに歩いていた。

「エイブラハム殿! バサラ殿救出完了しました!」

 普段見せないバサラの空気にエイブラハムは少し驚きはするも、武装を解き、ハグをした。

「ちょっ?! エイブラハム?! 今、戦闘中じゃ無いの?!」

「いや、久しいな、師匠。あんたが来たら百人力だ。パッパと救おうぜ、この国を」

 エイブラハムはそう言うと召使サーヴァントがいた方向を向くも何故か、彼も武装を解いていた。

「オイ! 何をやっている!? お前は聖女に雇われた騎士だろ?!」

 ノートルが召使サーヴァントに声を上げるも彼は無視をして、帰る支度をし始める。

「オイ! コラ! オイ! 聞いてるのか?! お前! エイブラハムも倒せて無いぞ! それなのに何逃げようとしてる! 腰抜けか?!」

 ノートルの罵倒を一切気にすることなく、準備が終えると彼に向けて召使サーヴァントが口を開いた。

「お前さ、あのバケモノ見ても俺にやれって言うの? 言っておくけど、俺の仕事はエイブラハムの討伐だ。それ以外のバケモノ退治の仕事は無い。誰が死にたくてこんなことしてると思うんだ? やれるもんならやってみろ、腰抜け。お前みたいな奴が国を守る騎士とは程度が知れるから辞めた方がいいぞ」

 召使サーヴァントの言葉を聞き、頭に血が昇るとノートルは彼が背を向けた瞬間、自身が持っていた斧を振り翳した。

「そう言うとこだよ」

 召使サーヴァントが呟くと彼が既に仕舞ったと思い込んでいた共鳴器である六波羅蜜パラミータを手に握っていた。変幻自在の水、それこそが六波羅蜜パラミータの正体であり、召使サーヴァントの腕には長い刃渡の剣が握られており、それを容赦なく振るう。

 ノートルの体は真っ二つとなり、赤い血が飛び散るとあたりの騎士達のざわめきが止まらない。

「もう会いたく無いよ、エイブラハム」

 召使サーヴァントは再び呟くと装置のボタンを押し、その場から一瞬にして姿を消した。
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