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第二章 人神代理戦争 予兆

二十二章 聖女の行進 其の拾肆

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 エイブラハムの背中を追いながら三人は地下街を駆け抜ける。そして、スピードを一切落とすことなく喋り始めた。

「一ヶ月前、このバカトオルがこの国にやって来て、とりあえず、飯が欲しいって言うもんで城門の前で暴れたから追い返そうとしたらその衛兵達を全員倒しちまってな。仕方なく、俺が戦ったら、強いの何の。それで、こいつの強さに惚れてな、俺の右腕として騎士団に置くことにしたんだ。これと同時に教会では聖女が現れてたとか何とか言っていたんだが、そんなの出鱈目だと思い、無視してた。結果、これが最悪の未来をもたらした。教会のヤツらは城に入り堂々と玉座を奪った。ルーヴェンは教会に対して寛容かつ不関与を決めていて、我が王は人が人のために祈りのを良しとしたからだ。それなのに奴らは人を奉り、人に祈りを捧げているとした。個人を祈るのではなく、全への祈りを、それが教会の本文であったものを奴ら、一個人のために教会の権威を使い、国家転覆を成した。俺はすぐにトオルと一緒に王を解放し、聖女やらを倒そうと思ったんだがな、思ったよりも強い。負けはしなかったが手が尽きた。だから、逃亡したら勝手にお尋ね者になっちまった。これが現状だ。王は地下街の整備を怠っていたのではなく、徐々に進めててな、よく一緒に降りていたのとそこに住まう住人すら彼を慕っていた。だから、誰にもバレない場所にいるから、俺が出て行っても大丈夫。そんでもって俺はここからお前らのことを守らないし、守れない。騎士団の仲間ですら一切合切容赦無く行くからお前らも好き勝手暴れろ。作戦は無し、師匠をパッパと助けて戦力にしてくれ。あの人一人解放するだけで戦況がガラッと変わるからな」

 説明が終えると同時に、城門の前に着くとエイブラハムは両手に手斧を握り、門を蹴りで破壊し、入って行った。

「よう! バカども元気してっか!」

 門を蹴破り、ルーヴェン王国の元騎士団長であったエイブラハム・ルーデウスは帰還する。だが、既に兵士たちは彼らを待っていたかの様に槍の先を向けていた。

「お帰りなさいませ、騎士団長殿」

 ニヤけずらにしたり顔。それは全てエイブラハムの作戦の虚をついたと思い、現騎士団長ノートルは笑顔を隠せない。

 しかし、そんなことは気にしない。
 虚をついたなどは相手の妄想であり、こちらには作戦などは一切無い。

 エイブラハムが作戦を立てなかったのは簡単である。自分がこの国で誰よりも強いのを知っており、今立っている者たちは自分が騎士団長を務めていた頃の顔見知りがほとんどいないことを知っていたからであった。

「トオル! ユース! 吟千代ぎんちよ! 作戦はさっき伝えたな! 行くぞ!」

 作戦と言うブラフを張り、それを理解してユース達は散会する。

 ユースとトオルは城の右へ、吟千代ぎんちよは左へ向かい、兵士達はそれを追おうとするも彼ら動けず、その真ん中に立っている男に無意識の内に釘付けとなっていた。

「どおした? ガキ共、ビビってんのか? 自分達が今際の際に立っていることに恐怖してるのか? なら、安心しろ。全員ここから帰すことはしねえよ」

 迫る圧には身がすくみ、自ずと後退り。
 エイブラハムは今だに運命の解放を行ってもいないのにその場の兵士全の足をすくませる。

 そんな中、ノートルだけが余裕綽々としており、突然拍手をし、口を開いた。

「いやはや、やはり、お強いですな。エイブラハムさん。でもですねぇ、あなたの時代、いや、王の時代は終わったのですよ。今からは我らが聖女の時代。彼女が我々の救手となります。そして、私達にかの聖女様はお貸しになってくれました。優秀で、屈強な兵士達を。後は任せましたよ、聖女の騎士様」

 ノートルはそう言うと退き、その背後からため息を吐きながら赤と白が混じった髪を弄った男が姿を現した。

廃棄孔アクタール、七席、召使サーヴァント、名前はいいかい?」

「聖女さんのお仲間かい、そこの腰抜け共とは訳が違うな! ルーヴェン王国元騎士団長エイブラハム・ルーデウス、そこ退いてもらうぜ」
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