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第二章 人神代理戦争 予兆

十八章 聖女の行進 其の拾

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「どうしてこうなったんだ」

 バサラは一人で呟くもそれに反応するものは無く、彼は一人檻の中にいた。

「そんなことより、僕よりもエイブラハムだ。彼もどうなっちゃってるんだ? 今、どこにいるんだ。うーん、これ僕が思ってるよりも相当、不味くないか!?」

 声を上げるもそれを聞いているのは守衛だけであり、守衛はバサラに向けて槍を地面に突き、ゴンと音を立てて、黙らせる。

(吟千代ぎんちよ、ユース、彼らは捕まらずに何とか逃れてた。彼らに任せるしか他ないし、うーーん、とりあえず、瞑想して心落ち着けよう)

 バサラは目を瞑り、瞑想を始める。
 何故、この様になったのか、それは数時間前に遡る。

***

「なんと! バサラ殿の弟子がこの国の騎士団長なのか!」

「ジータ達とは入れ替わりでね、彼らよりも六つ上の兄弟子なんだ」

 バサラが軽くエイブラハムについて話しているとユースはそれを聞いて、驚愕していた。

(嘘だろ、四護聖様達だけでは無く、ルーヴェン王国の騎士団長エイブラハム様も先生の弟子だと?! 俺はなんて人に喧嘩を売ってしまったんだ)

 後悔が再び襲い掛かり、ユースだけが無言となり、バサラと吟千代ぎんちよは会話を続けながら城の前に来た。

 巨大な城壁にはいつも驚かせられふもバサラは近くにいる守衛に喋りかけに行った。

「バサラ殿、武器を自分達に渡して行って大丈夫だろうか?」

「敵意がある様に捉えられる事もありますからね。正しい判断かと」

 遠くからバサラを眺めていると彼が急に手を掴まれ、倒される光景を見て、吟千代ぎんちよとユースはすぐに彼らの元に向かった。

「主ら! その人が何をしたか! 場合よっては!」

 吟千代ぎんちよが今すぐにで飛びつこうとするもそれをユースは止め、バサラを抑えつけた守衛に対して声を上げた。

「守衛の方々、その者は我々の商売相手でして、この地であった同郷と言う事で意気投合したのですが、一体何の権利があって彼を抑えつけているのですか?」

 ユースの言葉を聞き、守衛は彼を睨むと口を開いた。

「こいつは今、尋ね人の話をしてなぁ、もしかしたら何か知っているのかも知れないから事情聴取のため身柄を拘束させてもらう」

 吟千代ぎんちよが腰に差していた刀を抜こうとするもユースがしっかりと押さえ、続けて守衛に問いただした。

「尋ね人とは? 一体、誰なんですか?」

「エイブラハム、元ルーヴェン王国騎士団長で聖女様に楯突き、あの方が欲していた男と共に逃亡したためだ」

***

「ユース! 何故、あの時止めた!」

 バサラが拘束され、連れて行かれる様子を指を加えて見るだけしか出来なかった吟千代ぎんちよは宿に戻るやいなや、ユースの肩を掴みかかった。

 それを抵抗せずに受けるがまま、ユースは壁に押し切られると彼は冷静に答えた。

「あの場で我々が完全な仲間と認識されれば我々の方も拘束されます」

「それがどうした! バサラ殿、拙者、ユースがいれば切り抜けただろう!」

「切り抜けた後です! あそこで切り抜けられてもミレニアム王国の国境を超えることは不可能! 我々も尋ね人になれば、それだけでミカ様に情報を伝えられないし、それこそ最悪、ルーヴェンとの戦争にも繋がりかねません」

 ユースのいう言葉は至極真っ当で、否定の出来ないものであり、吟千代ぎんちよは一度落ち着こうと大きく深呼吸をした。

 急にバサラが拘束され、それを何もせずにいた自分が許せない。それでもユースの判断は正しく、あの場で守衛の首を断てば後々不利になるのは自分達であった。

「正しい、ユース、お前が言う言葉は全て正しいすまんかった」

 吟千代ぎんちよは落ち着き、頭を下げようとするもユースがそれを止めた。

吟千代ぎんちも様の言う言葉は正しいです。自分も落ちこうとしても落ち着けなかった。一瞬でも気を抜けば彼らを攻撃していたはずです。しかし、先生が拘束された瞬間、自分はこの事件を我々の手で解決するべき物だと考えました。なので、参りましょう、ここからは情報収集では無く、先生を、この国を救うための任務です」
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