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第二章 人神代理戦争 予兆
七章 トキドキカツラギメモリアル 其の陸
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「それはそうとジータのお屋敷から急に拉致られるのはやめて欲しいかな」
バサラは教会の椅子にしながらそう言うとミカが反省を示すかのように申し訳なさそうに頭を下げた。
「ううう、それはそうです。反省いたします」
「うん、ミカは真面目だから、その言葉を信じるよ。でも、よかった~、ミカだけ場内でも全く見かけないから心配だったんだ。教会の場所も分かったし、ちょいちょいここにも顔を出すことにするね」
バサラが顔を出してくれると言う言葉を聞き、ミカは頬を赤ながら嬉しそうにした。
「私もようやく御師様に会えて嬉しいです! ジータのことですから御師様に不自由をさせることはないと思いますが」
「ジータには良くしてもらってるよ」
「本来ならば私のお家にお呼びしたかったのですがあの時のジータは紛れもなく私達が知っていた中で一番強かったので、悔しいですが負けを認めました」
「あはは、そうなんだ(ジータ、本気すぎやしないか?!)」
そうして、バサラとミカは自身の近況や、募りに募った話に花を咲かす。いつの間にか夕方になっており、空が赤を帯び始めると教会の戸を叩く音がした。
ミカが扉を開けるとそこにはジータと吟千代の姿があり、ミカは笑顔で彼女達を迎えた。
「急な訪問に私の休日且つ御師様を独り占めにした罪を問いに来たんだけど、現行犯で良いかしら?」
「あらあら、ジータ、怒ったら可愛い顔が台無しよ。そんなに睨まないで。私も御師様に会いたかったんだから、オアイコと行きましょう? それなら夕方頃に来ると思ってたから、お夕飯の準備もしていたし」
「何と?! 夕餉を頂けるのか!」
吟千代がぴょこぴょこと跳ねるとその姿を見て、ミカは初対面でありながら笑顔で口を開いた。
「ええ、腕によりを掛けるから食べてって。それと初めまして、私はミカ・イゾルデ、四護聖の一人で教会の取り纏めてる者よ」
「これは失敬! 拙者であろう事が礼節にかけたな! 拙者は馘無侍吟千代と申す! よろしく頼む! ミカ殿!」
***
「拙者、パンという食べ物が苦手だったがこのシチューとやらにつけて食べるとべらぼうに美味いな!」
ハグハグむしゃむしゃと吟千代がかき込む姿をバサラ、ジータ、ミカは子を眺めるかのように見ていた。
「うむ? 何故、拙者の方を見るんだ? 何かあったか?」
「いえいえ、吟千代ちゃんがあまりにも元気よく食べてくれるのでとっても嬉しくて」
「吟千代は何でも美味しそうに食べるので、まぁ、こう言うのは直接言うのは照れますが嬉しいですよ」
そんな会話を交わす三人を見て、バサラは微笑みながら彼らを眺めた。かつての弟子は誰よりも強く、優しく、逞しく育っており、それが自分の子の成長を見ているかのようで心の底から込み上げるようなものがあった。
(うんうん、やっぱり、変わらないなー。ふふふ、吟千代も最初出会った時から丸くなったと言うかほんの少し雰囲気変わってる。色々問題も山積みだけど、今は、僕も変化を楽しんでるのかもしれないね。何だろう、こう良いね。あれ、目頭が熱くなってきちゃったな。もう~、歳取ると涙脆くなって嫌だね全く)
そんなことを考えながらバサラは三人が仲良く食卓を囲んでいる幸福を噛み締める。すると、そんな姿を見ていたミカがバサラに喋りかけた。
「御師様、お口に合いませんでしたか?」
「いやいや! とっても美味しいよ! ただ、三人が仲良くしてるのを見てたら何かこう込み上げるモノがあってね」
その言葉を聞き、ジータも何かを懐かしむかのように口を開いた。
「私達にとってもこのシチューは思い出の一品ではあらますからね」
「そうなの?」
「「御師様、お忘れになってる?」」
「?!」
二人が同時に声を上げ、バサラは驚くとその様子を見て、ジータとミカは少しばかり落胆しつつ、ため息を吐きながら同時に語り始めた。
「「あれはまだ私達が御師様の道場にいた頃……」」
バサラは教会の椅子にしながらそう言うとミカが反省を示すかのように申し訳なさそうに頭を下げた。
「ううう、それはそうです。反省いたします」
「うん、ミカは真面目だから、その言葉を信じるよ。でも、よかった~、ミカだけ場内でも全く見かけないから心配だったんだ。教会の場所も分かったし、ちょいちょいここにも顔を出すことにするね」
バサラが顔を出してくれると言う言葉を聞き、ミカは頬を赤ながら嬉しそうにした。
「私もようやく御師様に会えて嬉しいです! ジータのことですから御師様に不自由をさせることはないと思いますが」
「ジータには良くしてもらってるよ」
「本来ならば私のお家にお呼びしたかったのですがあの時のジータは紛れもなく私達が知っていた中で一番強かったので、悔しいですが負けを認めました」
「あはは、そうなんだ(ジータ、本気すぎやしないか?!)」
そうして、バサラとミカは自身の近況や、募りに募った話に花を咲かす。いつの間にか夕方になっており、空が赤を帯び始めると教会の戸を叩く音がした。
ミカが扉を開けるとそこにはジータと吟千代の姿があり、ミカは笑顔で彼女達を迎えた。
「急な訪問に私の休日且つ御師様を独り占めにした罪を問いに来たんだけど、現行犯で良いかしら?」
「あらあら、ジータ、怒ったら可愛い顔が台無しよ。そんなに睨まないで。私も御師様に会いたかったんだから、オアイコと行きましょう? それなら夕方頃に来ると思ってたから、お夕飯の準備もしていたし」
「何と?! 夕餉を頂けるのか!」
吟千代がぴょこぴょこと跳ねるとその姿を見て、ミカは初対面でありながら笑顔で口を開いた。
「ええ、腕によりを掛けるから食べてって。それと初めまして、私はミカ・イゾルデ、四護聖の一人で教会の取り纏めてる者よ」
「これは失敬! 拙者であろう事が礼節にかけたな! 拙者は馘無侍吟千代と申す! よろしく頼む! ミカ殿!」
***
「拙者、パンという食べ物が苦手だったがこのシチューとやらにつけて食べるとべらぼうに美味いな!」
ハグハグむしゃむしゃと吟千代がかき込む姿をバサラ、ジータ、ミカは子を眺めるかのように見ていた。
「うむ? 何故、拙者の方を見るんだ? 何かあったか?」
「いえいえ、吟千代ちゃんがあまりにも元気よく食べてくれるのでとっても嬉しくて」
「吟千代は何でも美味しそうに食べるので、まぁ、こう言うのは直接言うのは照れますが嬉しいですよ」
そんな会話を交わす三人を見て、バサラは微笑みながら彼らを眺めた。かつての弟子は誰よりも強く、優しく、逞しく育っており、それが自分の子の成長を見ているかのようで心の底から込み上げるようなものがあった。
(うんうん、やっぱり、変わらないなー。ふふふ、吟千代も最初出会った時から丸くなったと言うかほんの少し雰囲気変わってる。色々問題も山積みだけど、今は、僕も変化を楽しんでるのかもしれないね。何だろう、こう良いね。あれ、目頭が熱くなってきちゃったな。もう~、歳取ると涙脆くなって嫌だね全く)
そんなことを考えながらバサラは三人が仲良く食卓を囲んでいる幸福を噛み締める。すると、そんな姿を見ていたミカがバサラに喋りかけた。
「御師様、お口に合いませんでしたか?」
「いやいや! とっても美味しいよ! ただ、三人が仲良くしてるのを見てたら何かこう込み上げるモノがあってね」
その言葉を聞き、ジータも何かを懐かしむかのように口を開いた。
「私達にとってもこのシチューは思い出の一品ではあらますからね」
「そうなの?」
「「御師様、お忘れになってる?」」
「?!」
二人が同時に声を上げ、バサラは驚くとその様子を見て、ジータとミカは少しばかり落胆しつつ、ため息を吐きながら同時に語り始めた。
「「あれはまだ私達が御師様の道場にいた頃……」」
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