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第二章 人神代理戦争 予兆
五章 トキドキカツラギメモリアル 其の肆
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少女に連れられ、とあるお店に座らされたバサラ。既に逃げると言う行動を無くされ、気も無くされていた。
「改めまして、先ほどはお救い頂きありがとうございます。申し遅れました、私、ダルク・ラ=ピュセルと申します。ダルクとお呼びください」
「えーと、カツラギ・バサラ、よろしくね? それと、うーんと、後ろのその宙に浮いてるのはお連れの方でいいの、かな?」
バサラは自分を完全に動けなくされた代わりに背後の異物の氣の動きを捉えることに成功し、ダルクに問いた。
「あら、流石ですわね、バサラのおじ様。彼は私の従者であり、護衛のラヴァルです。私が作った土人形ですわ」
「へぇー! そうなんだー! すごい力強さでびっくりしたよ!」
バサラはそう驚くも内心では彼女の正体に気付いていた。土人形と呼ぶにはあまりにも強い力と見えない不可視という能力、明らかにこの世界のモノとは思えない過剰性能。
廃棄孔、その一員であるとバサラは考えており、それでも互いに余計な詮索をせずに行こうとしていた。
「ふふ、バサラのおじ様は嘘をつくのがお上手。馘無侍はお元気ですか?」
馘無侍という名前を聞き、考えが確信に変わるもダルクに察されまいと笑顔で答えた。
「え~? 何のことかサッパリ分からないな」
「その嘘は下手ですわ、おじ様。そんなに緊張なさらないでとって殺そうとしてる訳ではございません。なので、次、嘘ついたら指の一本を頂きますわ」
指の一本を折ると言う脅し、それは脅しではなく本当であり、バサラはこの場で騒ぎを起こすことを避けるために笑顔を崩さず、口を開いた。
「急だね? そうかー、なら、僕も真剣に答えようと思う。吟千代は元気だよ」
「それはよかった。彼女、誰にでも噛み付いていたのでそちら側に行ってどうなることやらと心配でしたの」
「あはは、そうだね。でも、とってもお利口でいつも元気よくしてるから君たちが心配することはないよ」
バサラは敵意を一切排除して自分が相手に敵ではないと見せるとそんな彼とは違いダルクは笑顔でありながら底知れなさを見せつけた。
(うーん、この子レイルと同じくらい強いな。この子自身はそこまで強くない。けれど、背後の連れ、たしか、ラヴァルだっけ? あれが宿す氣の総量、無機物が故に隠すことが出来ない、だからこそ可視化されている塊みたいな感じ。涅槃静寂と涅焔、どっちも持って来てないのが悔やまれるな。ここでこの子に暴れ回られたら確実に死ぬのは僕だ)
無言でダルクを見つめていると束の間の沈黙が流れた。
「それはそうとバサラのおじ様、今日は助けてくれてありがとうございます」
「いやいや、気にしないで」
「おじ様が止めなかったら、彼ら肉団子にしようと考えてましたから」
シレッと物騒なことを残すダルクに対して、ドキリとするとそれを知ったのかにこりとバサラに笑顔を向けた。
誰かに殺意を向けると氣に少なからず抑揚がある。しかし、ダルクにはそれが一切無い。暗闇に閉ざされているからか、それとも連れであるラヴァルが行うからか、はたまたその両方か。
底知れなさの正体にバサラは気付いた。少女の氣は常に一定であり、不動。吟千代や、レイルの様な氣では無く、ただただ、動かない。
額から嫌な汗が流れ、拭くとそれを見えてはいないが気付いたのか、ダルクは立ち上がった。
「少し緊張させてしまった様ですね。私この後、予定がありますので、お先に失礼させて貰います。ラヴァル、お代の方を渡してちょうだい」
ラヴァルと呼ばれた不可視はテーブルの上にバサラとダルクの分のお茶代を置き、彼女はお辞儀をし、その場を後にした。
バサラは緊張が切れたのかため息を吐くと常に、得物を持って歩こうと心の底から誓った。
「改めまして、先ほどはお救い頂きありがとうございます。申し遅れました、私、ダルク・ラ=ピュセルと申します。ダルクとお呼びください」
「えーと、カツラギ・バサラ、よろしくね? それと、うーんと、後ろのその宙に浮いてるのはお連れの方でいいの、かな?」
バサラは自分を完全に動けなくされた代わりに背後の異物の氣の動きを捉えることに成功し、ダルクに問いた。
「あら、流石ですわね、バサラのおじ様。彼は私の従者であり、護衛のラヴァルです。私が作った土人形ですわ」
「へぇー! そうなんだー! すごい力強さでびっくりしたよ!」
バサラはそう驚くも内心では彼女の正体に気付いていた。土人形と呼ぶにはあまりにも強い力と見えない不可視という能力、明らかにこの世界のモノとは思えない過剰性能。
廃棄孔、その一員であるとバサラは考えており、それでも互いに余計な詮索をせずに行こうとしていた。
「ふふ、バサラのおじ様は嘘をつくのがお上手。馘無侍はお元気ですか?」
馘無侍という名前を聞き、考えが確信に変わるもダルクに察されまいと笑顔で答えた。
「え~? 何のことかサッパリ分からないな」
「その嘘は下手ですわ、おじ様。そんなに緊張なさらないでとって殺そうとしてる訳ではございません。なので、次、嘘ついたら指の一本を頂きますわ」
指の一本を折ると言う脅し、それは脅しではなく本当であり、バサラはこの場で騒ぎを起こすことを避けるために笑顔を崩さず、口を開いた。
「急だね? そうかー、なら、僕も真剣に答えようと思う。吟千代は元気だよ」
「それはよかった。彼女、誰にでも噛み付いていたのでそちら側に行ってどうなることやらと心配でしたの」
「あはは、そうだね。でも、とってもお利口でいつも元気よくしてるから君たちが心配することはないよ」
バサラは敵意を一切排除して自分が相手に敵ではないと見せるとそんな彼とは違いダルクは笑顔でありながら底知れなさを見せつけた。
(うーん、この子レイルと同じくらい強いな。この子自身はそこまで強くない。けれど、背後の連れ、たしか、ラヴァルだっけ? あれが宿す氣の総量、無機物が故に隠すことが出来ない、だからこそ可視化されている塊みたいな感じ。涅槃静寂と涅焔、どっちも持って来てないのが悔やまれるな。ここでこの子に暴れ回られたら確実に死ぬのは僕だ)
無言でダルクを見つめていると束の間の沈黙が流れた。
「それはそうとバサラのおじ様、今日は助けてくれてありがとうございます」
「いやいや、気にしないで」
「おじ様が止めなかったら、彼ら肉団子にしようと考えてましたから」
シレッと物騒なことを残すダルクに対して、ドキリとするとそれを知ったのかにこりとバサラに笑顔を向けた。
誰かに殺意を向けると氣に少なからず抑揚がある。しかし、ダルクにはそれが一切無い。暗闇に閉ざされているからか、それとも連れであるラヴァルが行うからか、はたまたその両方か。
底知れなさの正体にバサラは気付いた。少女の氣は常に一定であり、不動。吟千代や、レイルの様な氣では無く、ただただ、動かない。
額から嫌な汗が流れ、拭くとそれを見えてはいないが気付いたのか、ダルクは立ち上がった。
「少し緊張させてしまった様ですね。私この後、予定がありますので、お先に失礼させて貰います。ラヴァル、お代の方を渡してちょうだい」
ラヴァルと呼ばれた不可視はテーブルの上にバサラとダルクの分のお茶代を置き、彼女はお辞儀をし、その場を後にした。
バサラは緊張が切れたのかため息を吐くと常に、得物を持って歩こうと心の底から誓った。
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