40 / 311
第一章 田舎暮らしの神殺し
三十八章 神殺しは迷宮の中で 其の玖
しおりを挟む
迷宮ラビュリントス第八階層
吟千代バサラはお姫様だっこをされながら走っていた。第七階層からバサラを抱えて、離すことなく走り続けており、彼は自分の顔を両手で隠した。
「吟千代さん、その~」
「なんだ」
「その~、そろそろ降ろして欲しいんだけど」
「ダメだ」
「ひん」
バサラが無策に行ったことに気付いた吟千代は彼を抱き抱えてから第七階層を通ると第八階層へと向かう最中、彼女は一度も離すことなく降りて行った。
第八階層に到着するとそこには再び扉があり、その前でバサラを降ろした。そしめ、吟千代はバサラを正座させると自身も同じく正座をし、螺旋巻く目で覗き込んだ。
「バサラ殿、何か言う事は?」
「その~、はい、申し訳ございませんでした」
「うむ、拙者も全面的にバサラ殿を信用した結果あの様な事態に至ってしまった。そこは謝ろう。だが、自分の身をああも簡単に投げ出すなど拙者が許さぬ。侍は戦で命を爆ぜ、落とすもの。バサラ殿は世界が違えど拙者が侍と認めている。ならば、簡単に戦以外で命を投げ出すな、わかったか?」
「はい、肝に銘じます」
「うむ! なら、よし! カラカラカラ! 早速、進もうぞ! バサラ殿!」
説教が終わり、立ち上ると第八階層の扉の前に立った。
先ほどとは全く違う、小さく閉じられた扉を前にバサラと吟千代は互いに得物を握りしめると同時に攻撃を放つ。
扉は簡単に破壊されると呆気なく部屋への道が開かれた。
「さっきみたいな感じになるかと思ったけど違ったね」
「うむ、さてはて、奥に進めば何があるか! 楽しみであるな!」
そう言うとバサラと吟千代は部屋へと踏み込んだ。
***
バサラ達が第八階層に踏み込んだ時同じくして、ジータ達四護聖率いる騎士団とリトル教が総力戦を繰り広げていた。
リトル教は海近くの村一つを本拠地としており、村人全員が信徒であった。村人達とリトル教の儀式と言われ洗脳と改造を施された信者達が壁となり、王国騎士団は攻め切れずにいた。
故に、四護聖率いる精鋭達による総力戦を決定し、その準備が終わるとジータは既に先陣を切ろうとしていた。
「ジータ様、いつもより気合い入ってるな」
ユースがそう言うとなんとなく理由を察していたラビはそれを隠して答えた。
「そうだな、うちの騎士の者も被害に遭ってるし、彼らへの弔いに燃えているんだろう」
「やはり、ジータ様はすごいな! 俺も気合を入れて武勲を上げるぞ! な! ラビ!」
「そうだな」
そんなやり取りを終え、彼らはジータの背後についた。そして、準備を終えたジータは剣を取り出すと大きな声で宣言する。
「四護聖ジータ・グランデが命じます。参りましょう、殲滅です」
その一言により、開始したリトル教総力戦は四護聖の率いる精鋭を前に蹂躙という言葉似合うほどの結果に終わった。
ジータは一切の好戦を許さず、自身が放つ矢は改造兵の命を悉く奪い尽くす。
グランが戦場を駆け、その姿を見た兵達が勇気を貰い、彼の背中を追うように進撃した。
シンクは改造兵達の弱点を分析し、それらを他の四護聖達に伝えた。
バサラの弟子であり、四護聖最後の一人であるミカ・ラインハルトは自身が奪う命に祈り、拳を振るう。
四人と彼らが率いる精鋭達による圧倒的なまでの実力差を埋める事はなく、司祭達の死体が幾つも並べられるも最後の一人が見つからなかった。
「最後の司祭は海に向かったそうです!」
兵からの伝言を受け、四護聖全員が集うと最後の司祭は逃れられないことを悟ったのか海を背後に立っていた。
「ふふ、恐れいった、え?」
司祭は何かを喋ろうとするもののそんなことお構え無しにとジータは彼の太ももに矢が放たれており、遺言すら残すつもりは無かった。
両太ももに穴が空き、立つことすらままならない。だが、司祭はこの状況で四護聖達に見えないように笑った。
「いあ いあ」
自分達の計画が頓挫したはずであったのにそれでも彼は笑うことをやめず、最後の儀を始めようと死ぬ間際での足掻きを見せる。
「 はすたあ はすたあ くふあやく 」
止まらない。
「ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん」
止められない。
「 ぶるぐとむ あい あい はすたあ」
死にかけでありながらも自らが縋る神へと祈る。
その呟きは異なる世界の召喚の呪。
異界ゴルドバレー、その地に邪神が初めて顕現した瞬間である。
吟千代バサラはお姫様だっこをされながら走っていた。第七階層からバサラを抱えて、離すことなく走り続けており、彼は自分の顔を両手で隠した。
「吟千代さん、その~」
「なんだ」
「その~、そろそろ降ろして欲しいんだけど」
「ダメだ」
「ひん」
バサラが無策に行ったことに気付いた吟千代は彼を抱き抱えてから第七階層を通ると第八階層へと向かう最中、彼女は一度も離すことなく降りて行った。
第八階層に到着するとそこには再び扉があり、その前でバサラを降ろした。そしめ、吟千代はバサラを正座させると自身も同じく正座をし、螺旋巻く目で覗き込んだ。
「バサラ殿、何か言う事は?」
「その~、はい、申し訳ございませんでした」
「うむ、拙者も全面的にバサラ殿を信用した結果あの様な事態に至ってしまった。そこは謝ろう。だが、自分の身をああも簡単に投げ出すなど拙者が許さぬ。侍は戦で命を爆ぜ、落とすもの。バサラ殿は世界が違えど拙者が侍と認めている。ならば、簡単に戦以外で命を投げ出すな、わかったか?」
「はい、肝に銘じます」
「うむ! なら、よし! カラカラカラ! 早速、進もうぞ! バサラ殿!」
説教が終わり、立ち上ると第八階層の扉の前に立った。
先ほどとは全く違う、小さく閉じられた扉を前にバサラと吟千代は互いに得物を握りしめると同時に攻撃を放つ。
扉は簡単に破壊されると呆気なく部屋への道が開かれた。
「さっきみたいな感じになるかと思ったけど違ったね」
「うむ、さてはて、奥に進めば何があるか! 楽しみであるな!」
そう言うとバサラと吟千代は部屋へと踏み込んだ。
***
バサラ達が第八階層に踏み込んだ時同じくして、ジータ達四護聖率いる騎士団とリトル教が総力戦を繰り広げていた。
リトル教は海近くの村一つを本拠地としており、村人全員が信徒であった。村人達とリトル教の儀式と言われ洗脳と改造を施された信者達が壁となり、王国騎士団は攻め切れずにいた。
故に、四護聖率いる精鋭達による総力戦を決定し、その準備が終わるとジータは既に先陣を切ろうとしていた。
「ジータ様、いつもより気合い入ってるな」
ユースがそう言うとなんとなく理由を察していたラビはそれを隠して答えた。
「そうだな、うちの騎士の者も被害に遭ってるし、彼らへの弔いに燃えているんだろう」
「やはり、ジータ様はすごいな! 俺も気合を入れて武勲を上げるぞ! な! ラビ!」
「そうだな」
そんなやり取りを終え、彼らはジータの背後についた。そして、準備を終えたジータは剣を取り出すと大きな声で宣言する。
「四護聖ジータ・グランデが命じます。参りましょう、殲滅です」
その一言により、開始したリトル教総力戦は四護聖の率いる精鋭を前に蹂躙という言葉似合うほどの結果に終わった。
ジータは一切の好戦を許さず、自身が放つ矢は改造兵の命を悉く奪い尽くす。
グランが戦場を駆け、その姿を見た兵達が勇気を貰い、彼の背中を追うように進撃した。
シンクは改造兵達の弱点を分析し、それらを他の四護聖達に伝えた。
バサラの弟子であり、四護聖最後の一人であるミカ・ラインハルトは自身が奪う命に祈り、拳を振るう。
四人と彼らが率いる精鋭達による圧倒的なまでの実力差を埋める事はなく、司祭達の死体が幾つも並べられるも最後の一人が見つからなかった。
「最後の司祭は海に向かったそうです!」
兵からの伝言を受け、四護聖全員が集うと最後の司祭は逃れられないことを悟ったのか海を背後に立っていた。
「ふふ、恐れいった、え?」
司祭は何かを喋ろうとするもののそんなことお構え無しにとジータは彼の太ももに矢が放たれており、遺言すら残すつもりは無かった。
両太ももに穴が空き、立つことすらままならない。だが、司祭はこの状況で四護聖達に見えないように笑った。
「いあ いあ」
自分達の計画が頓挫したはずであったのにそれでも彼は笑うことをやめず、最後の儀を始めようと死ぬ間際での足掻きを見せる。
「 はすたあ はすたあ くふあやく 」
止まらない。
「ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん」
止められない。
「 ぶるぐとむ あい あい はすたあ」
死にかけでありながらも自らが縋る神へと祈る。
その呟きは異なる世界の召喚の呪。
異界ゴルドバレー、その地に邪神が初めて顕現した瞬間である。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる