15 / 311
第一章 田舎暮らしの神殺し
十四章 初めては獣狩りですか? 其の伍
しおりを挟む
決闘が終わり、騎士たちがその場から離れるとバサラは一人地面に倒れ込んだ。
(つっかれたぁ! いや、ユースって子、流石だね! ジータが右腕があんなに強いとなるとやっぱり、ジータはもっと強いんだろうな~)
そんなことを考えながら空を見上げると今日一日を思い返した。
道場を畳み、静かに暮らそうとしていたのが一転。弟子に連れられ、王都に来て、かつての相棒と再会し、弟子の部下と決闘をする。
自分でもいまだに心と体が追いついていない気がしており、空の青さだけが現実味を帯びていた。
(一気に、疲れが、来た、な、ちょっとだけ、ほんの少しだけ)
***
初めて神を殺した時、彼は何を思ったんだろうか。
自身の愛した女を理不尽に奪われ、自身のいた世界に無情に終わりを告げられた。
少年は剣を持ち、勝てぬと思えた存在を一人で、力のみで殺し、その時、彼は、若き日のバサラはこう思った。
案外、簡単に殺せるな、と。
そこからは速かった。
失ったものを取り戻すかの様に、相手の持つものを奪うために。
出会う神を殺し、殺し、殺し、殺し、殺し、殺し、殺し、殺し、殺し、殺し、殺し、殺し尽くした。
そして、最後は神が集う間にて、人の夜明けを告げ、歴史に刻まれることなく消えていった。
「良いのかい? 名誉も、地位も、誰に讃えられる訳もなく、誰に好かれる訳でもない! そんな人生に君は殉じると言うのかい? 人らしからぬ願いだな! 神ですら名誉も、地位も欲するのにお前は何も求めないのか?! 無償で、人類を救うと言うのか?」
戯神の一言。
それが30年間、バサラの心に引っ掛かる。
誰に評価されたい訳でも、誰かに語られたい訳でもない。そんな自分が、そんな自分へ神が放った一言は、その無欲に対しての怒り。
「俺は、人らしくないのか? 俺は、じゃあ、なんなんだ?」
***
「ひゃん!?!」
頬に何か冷たいものをつけられ、バサラは急に体を起こした。
「ふふふ、御師様、お可愛い声を出すのですね」
バサラの頬に水筒をつけたジータはいたずらに笑うと嬉しそうにしていた。
「こらこら、おじさんを揶揄うんじゃないよ」
「それにしても御師様、流石ですわね。一撃でユースをのすなんて」
「いやいや、あの連撃を耐え抜く自信がなかったし、一撃で決まってなければ不利になってたのは僕だ。だから、彼はすごい。確実に僕を追い詰めていた」
そう言うとバサラは水筒の口を開き、そこに入っていた水をごくごくと飲み始める。バサラは決闘後から何も飲んでいなかったため、その水は彼の渇きと疲れを癒す一杯となった。
少しばかりぼんやりとして、時間を過ごすとハッと何かに気づいたバサラはジータに質問した。
「と言うよりも、僕なんで決闘したんだっけ?」
「え?」
「僕、なんか知らず知らずに決闘をしてたんだけど」
バサラの言葉に、ジータはため息を吐くも、気にすることなくそれに答えた。
「話をよく聞かないところも少しずつ直して行きましょうね、御師様。今回、御師様には獣狩りをしてもらいます」
「獣狩り?」
「はい! 魔獣アルミラージの討伐です!」
(つっかれたぁ! いや、ユースって子、流石だね! ジータが右腕があんなに強いとなるとやっぱり、ジータはもっと強いんだろうな~)
そんなことを考えながら空を見上げると今日一日を思い返した。
道場を畳み、静かに暮らそうとしていたのが一転。弟子に連れられ、王都に来て、かつての相棒と再会し、弟子の部下と決闘をする。
自分でもいまだに心と体が追いついていない気がしており、空の青さだけが現実味を帯びていた。
(一気に、疲れが、来た、な、ちょっとだけ、ほんの少しだけ)
***
初めて神を殺した時、彼は何を思ったんだろうか。
自身の愛した女を理不尽に奪われ、自身のいた世界に無情に終わりを告げられた。
少年は剣を持ち、勝てぬと思えた存在を一人で、力のみで殺し、その時、彼は、若き日のバサラはこう思った。
案外、簡単に殺せるな、と。
そこからは速かった。
失ったものを取り戻すかの様に、相手の持つものを奪うために。
出会う神を殺し、殺し、殺し、殺し、殺し、殺し、殺し、殺し、殺し、殺し、殺し、殺し尽くした。
そして、最後は神が集う間にて、人の夜明けを告げ、歴史に刻まれることなく消えていった。
「良いのかい? 名誉も、地位も、誰に讃えられる訳もなく、誰に好かれる訳でもない! そんな人生に君は殉じると言うのかい? 人らしからぬ願いだな! 神ですら名誉も、地位も欲するのにお前は何も求めないのか?! 無償で、人類を救うと言うのか?」
戯神の一言。
それが30年間、バサラの心に引っ掛かる。
誰に評価されたい訳でも、誰かに語られたい訳でもない。そんな自分が、そんな自分へ神が放った一言は、その無欲に対しての怒り。
「俺は、人らしくないのか? 俺は、じゃあ、なんなんだ?」
***
「ひゃん!?!」
頬に何か冷たいものをつけられ、バサラは急に体を起こした。
「ふふふ、御師様、お可愛い声を出すのですね」
バサラの頬に水筒をつけたジータはいたずらに笑うと嬉しそうにしていた。
「こらこら、おじさんを揶揄うんじゃないよ」
「それにしても御師様、流石ですわね。一撃でユースをのすなんて」
「いやいや、あの連撃を耐え抜く自信がなかったし、一撃で決まってなければ不利になってたのは僕だ。だから、彼はすごい。確実に僕を追い詰めていた」
そう言うとバサラは水筒の口を開き、そこに入っていた水をごくごくと飲み始める。バサラは決闘後から何も飲んでいなかったため、その水は彼の渇きと疲れを癒す一杯となった。
少しばかりぼんやりとして、時間を過ごすとハッと何かに気づいたバサラはジータに質問した。
「と言うよりも、僕なんで決闘したんだっけ?」
「え?」
「僕、なんか知らず知らずに決闘をしてたんだけど」
バサラの言葉に、ジータはため息を吐くも、気にすることなくそれに答えた。
「話をよく聞かないところも少しずつ直して行きましょうね、御師様。今回、御師様には獣狩りをしてもらいます」
「獣狩り?」
「はい! 魔獣アルミラージの討伐です!」
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる