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第4章 不意打ちから始まる高校生活
第55話 Q&Aにざわざわ…
しおりを挟む一時間目の授業時間はクラスのみんなとの自己紹介タイムになった訳だけどその質問は全て僕に向けられたものだった。
「フッフッフッフッ…。最終質疑応答だ」
一時間目、英語の担当である出井女先生の声が響く。時計に目をやれば一時間目の授業が終了するまであと残り二分を切っている。
「あっ!はッ、はーいッ!」
反応良く一人の女子生徒が手を挙げた。
「よし、東方」
その生徒を出威女先生が指した、指された女子生徒はやったと言いながら立ち上がる。その様子を見守る出井女先生はイギリス出身で日本人に帰化したんだそうだ。アップにしたその髪は金髪だし顔つきもまた西洋風だ、話を伺う以前に一目見た時から日本生まれではなく外国出身の方とは思ったけど。
「あの、佐久間君は…すッ、す、す…」
「す?」
この時間での最後の質問者となった東方さんだが僕の名前を言った後の言葉が続いてこない。何かを聞こうとしているのは分かるけど、『す』と発音した後は何やら言いにくそうになっている。緊張の為かその顔は凄く真っ赤、むしろ急に発熱でもしたのではないかと心配になる。そんな東方さんがついに意を決したかのように真剣な声を発した。
「すッ、好きな女の子のタイプはッ!?あッ、あったりするんですかッ、佐久間君ッ!」
「えっ!?」
僕は思わず声を洩らした、好きなタイプか…、なんともプライベートな事を聞いてくるものだ。もっともこの時間中にクラスメイトからの質問は僕の血液型だとか趣味とか軽いものから始まり、以前の学校生活で所属していた部活とか得意科目はなんですかみたいな可愛いものだった。そのうち休日の過ごし方とか食べるなら和食か洋食かみたいな個人的な趣向を聞くものに変わっていった。
僕がここまでの質疑応答を思い出している間にも質問をした東方さんは何やら真剣な顔でこちらを見つめている。いや、東方さんだけじゃないッ!周りの子達も同様だ、とりあえずは答えた方が良いな。えーと、好きな女性のタイプだったっけ…、時間も無いし僕は特に深く考えることなく即座に返答をする事にした。
えっと…、僕の好きなタイプを考えると…別に髪が長い短いとか背の高い低いも判断ポイントではない。性格も悪くなければ活発な人も物静かな人もその良さがあるんだしそれも問題にしていない。それよりは…よし、思った通りに答えてみよう。
「そっ、そうですね…。好きになった人がタイプになると言うか…、強いて言えば一緒にいて良いな…と思った人…ですかね…」
「「「「い、一緒ォォゥッ!?」」」」
僕がそう答えると途端にクラス中が反応を示した、その語尾が裏返って高くなる。何やら凄い食いつきだ、これが魚釣りなら楽勝爆釣モードだろう。そして何よりクラス中の僕を見る視線がより一層強くなった気がする、そして何より全員が期待に満ちた目で次の言葉を待っているようだ。こ、これは何か言わなきゃいけない雰囲気だ。
「は、はい。そ、その好きな人なら一緒にいたいっていうのはあるし…、一緒に過ごしたいってのもある…し…?」
自分の恋愛観を話しているうちになんだか気恥ずかしくなり語尾がだんだんと小さくなっていく。そんな僕の小さくなっていく声とは裏腹にクラスメイト達は様々に大きな反応を示した。
「一緒に…過ごす…?さ、佐久間君…。生身の女子…、恋愛対象るんだ…」
「こ、これはアタシにもワンチャンあるんじゃ…」
「体育会系でも良いのかな…」
「せ、拙者、腐っててもおKなら…」
「ざわ…、ざわ…ざわ…」
きぃ~ん、こぉ~ん、かぁ~ん、こぉ~ん…。
一時間目の終了を告げるチャイムの音が鳴った。
「…時間切れだ。日直ッ!!」
出威女先生の低い声が響く。
「起立ッ!気をつけッ!礼ッ!」
ガタッ!ザッ!!バアアァァンッ!!
なんとも効果音が出そうなキビキビした動きでクラスメイト達が動くのを見て僕もあわててそれに倣う。
カッ!カカッ!!カリカリカリッ!!
出威女先生はチョークを握り黒板に何やら書き始めた。やがてとある一文を記すと徐に口を開いた。
『To Be Continued…』
横長の左向きの矢印の中にそんな文章が書かれている。
「次の授業は美術か…、用意をしておけ」
そう言って出威女先生は教室を後にしていった。
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