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第3章 ひとつ屋根の…下?
第42話 なんですか?その、水陸両用モバイルスーツって…
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がらがら~。
河越八幡警察寮の建物入口前に停車したかなり旧型のマイクロバスがスペースを広く取られたスライド式の横扉を開いた。ちなみにスライド式にしているのは有事の際には一度に三人が横に並んで外に飛び出せるかららしい。
中からはこの寮に住む仕事終わりの婦警達が降りてくるいつもの光景だった。しかしいつもとら一つだけ決定的に違う事がある。
それは婦警達に囲まれてバスを降りる佐久間修、天然の男子の存在であった。
□
「佐久間君!着いたよ~!」
「は、はい。そ、その…う、腕を…」
僕は左右両脇を婦警さんに挟まれ、それぞれ左右の腕を組まれている。なんだろう、犯人の身柄を両側から確保してパトカーに乗り降りさせる時のような体勢だ。
「僕は犯人じゃないから逃げたりしないですよ~」
と言ってはみたものの…。
「こ、これは警護対象者に対する必要な措置なんです!」
「そ、そう。万が一があっちゃいけないから…。し、仕方の無い…仕方の無い事なんです」
そうは言っても何やら婦警さん達の鼻息は荒い。そう言えば、僕が意識を取り戻した交番から医療センターに移動する時もこんな感じだったっけ…。まだそんなに経っていないのに色々な事があり過ぎて数ヶ月くらい過ぎてしまってるんじゃないかと思うくらいだ。
「それにしても…、寮の入り口前まで直接乗り付けて正解だったな!へへっ、リポーターどもめ、警察寮敷地内には入ってこれねえぜ!」
敷地外側の方を見ながら美晴さんが悪い笑顔を浮かべている。
「全員揃ったようですわね、さあ寮に入りますわよ」
マイクロバスから勤務の終わった婦警さん達が降り一緒に寮に入ろうと勢揃いする。中には寮の居住者ではないが来ている人もいるらしい。もしかすると明日の合同稽古に参加する人だろうか?稽古自体は勤務のように八時間ずっと拘束という訳ではない。午前と午後に分けてニ、三時間で終わる。本来、明日が非番の日で遠い所から通っている人なら明日の稽古の数時間の為だけに長い通勤時間をかける必要はない。午前で終われば午後はフリーなんだし。
「ふふふ…、一つ屋根の下…一つ屋根の下」
熱を帯びた表情で呟いている婦警さんもいる。なんだか少しだけ危険な気もしたけど口にすると何だかもっと良くない事を招きそうな気がしたのでとりあえず口にしない。
しかし、これだけは言いたい。
「すいません…車は降りたので僕の両腕を解放して下さい…」
□
寮の入り口からすぐの所に僕が借りた101号室はある。
「じゃあ皆さん、僕はこれで…」
そう言ってそそくさと自分の部屋に引きこもりたいところではあったが、そこは多少なりとも空気を読む僕がいる。
「佐久間君、後でね~」
そう言って部屋に帰っていく婦警さん達の列を見送る。開店と同時に入店してくる買物客を迎えるデパートのスタッフのように見送る。わずかながらにあるバイトの経験から『いらっしゃいませ』と言いそうになるのをこらえる。
「じゃあシュウ、荷物置いたら風呂入っちゃえよ。大浴場空いてるからよ」
婦警さん達を見送って最後に残っていた美晴さんが声をかけてきた。
「えっ!?さすがに悪いですよ。新参の僕が最初だなんて…。どうぞ、皆さんが先に入って下さい」
「いえ、修さん。これは歓迎の一環ですわ。我々一同のおもてなしの気持ちを是非!!」
何やら尚子さんの言葉と目に力がある。このままだと『いいえ』、『まあそう言わずに』…『いいえ』、『まあそう言わずに』…と延々とループしてしまいそうな感じが目に浮かんだので応じる事にした。
「わ、分かりました。先に入らせていただく事にします。すいませんが皆さんに後でよろしくとお伝え下さい」
「ッ!!?分かりましたわ!お任せ下さい、必ずやご満足いただけるようにしますからっ!」
「えっ?満足?」
何やら不穏な単語を口走ってなかった?
「こうしちゃいられねえ!全員に連絡ッ!総員戦闘配置、第三級事態だ!」
「まっ、まさか旧世紀の遺物とまで酷評されたアレが日の目を見る日が来るなんて…。す、水陸両用携行戦闘服《モバイルスーツ》が…」
「あ、後でな、シュウ!待っててくれよ!」
「か、必ずですわよ!修さん!」
そう言い残すと二人は寮の廊下をダダダダッと駆けていく。廊下の壁に貼られた『寮内、走るな』の張り紙がなんともむなしく僕の目に映った。
「と、とりあえずお風呂…行こうかな」
それにしても…美晴さんにせよ、尚子さんにせよなんかヘンだったな…。いったい何だったんだろう…、そんな思いを抱きながら僕は大浴場に向かうのだ。
それがここ、河越八幡警察女子寮内にある大浴場を血に染める事になろうとは…。この時の僕は考えもしていなかったのだった…。
□ □ □
次回、寮の風呂場で何かが起こる…。
第43話、『大浴場、血に染めて』
お楽しみに。
河越八幡警察寮の建物入口前に停車したかなり旧型のマイクロバスがスペースを広く取られたスライド式の横扉を開いた。ちなみにスライド式にしているのは有事の際には一度に三人が横に並んで外に飛び出せるかららしい。
中からはこの寮に住む仕事終わりの婦警達が降りてくるいつもの光景だった。しかしいつもとら一つだけ決定的に違う事がある。
それは婦警達に囲まれてバスを降りる佐久間修、天然の男子の存在であった。
□
「佐久間君!着いたよ~!」
「は、はい。そ、その…う、腕を…」
僕は左右両脇を婦警さんに挟まれ、それぞれ左右の腕を組まれている。なんだろう、犯人の身柄を両側から確保してパトカーに乗り降りさせる時のような体勢だ。
「僕は犯人じゃないから逃げたりしないですよ~」
と言ってはみたものの…。
「こ、これは警護対象者に対する必要な措置なんです!」
「そ、そう。万が一があっちゃいけないから…。し、仕方の無い…仕方の無い事なんです」
そうは言っても何やら婦警さん達の鼻息は荒い。そう言えば、僕が意識を取り戻した交番から医療センターに移動する時もこんな感じだったっけ…。まだそんなに経っていないのに色々な事があり過ぎて数ヶ月くらい過ぎてしまってるんじゃないかと思うくらいだ。
「それにしても…、寮の入り口前まで直接乗り付けて正解だったな!へへっ、リポーターどもめ、警察寮敷地内には入ってこれねえぜ!」
敷地外側の方を見ながら美晴さんが悪い笑顔を浮かべている。
「全員揃ったようですわね、さあ寮に入りますわよ」
マイクロバスから勤務の終わった婦警さん達が降り一緒に寮に入ろうと勢揃いする。中には寮の居住者ではないが来ている人もいるらしい。もしかすると明日の合同稽古に参加する人だろうか?稽古自体は勤務のように八時間ずっと拘束という訳ではない。午前と午後に分けてニ、三時間で終わる。本来、明日が非番の日で遠い所から通っている人なら明日の稽古の数時間の為だけに長い通勤時間をかける必要はない。午前で終われば午後はフリーなんだし。
「ふふふ…、一つ屋根の下…一つ屋根の下」
熱を帯びた表情で呟いている婦警さんもいる。なんだか少しだけ危険な気もしたけど口にすると何だかもっと良くない事を招きそうな気がしたのでとりあえず口にしない。
しかし、これだけは言いたい。
「すいません…車は降りたので僕の両腕を解放して下さい…」
□
寮の入り口からすぐの所に僕が借りた101号室はある。
「じゃあ皆さん、僕はこれで…」
そう言ってそそくさと自分の部屋に引きこもりたいところではあったが、そこは多少なりとも空気を読む僕がいる。
「佐久間君、後でね~」
そう言って部屋に帰っていく婦警さん達の列を見送る。開店と同時に入店してくる買物客を迎えるデパートのスタッフのように見送る。わずかながらにあるバイトの経験から『いらっしゃいませ』と言いそうになるのをこらえる。
「じゃあシュウ、荷物置いたら風呂入っちゃえよ。大浴場空いてるからよ」
婦警さん達を見送って最後に残っていた美晴さんが声をかけてきた。
「えっ!?さすがに悪いですよ。新参の僕が最初だなんて…。どうぞ、皆さんが先に入って下さい」
「いえ、修さん。これは歓迎の一環ですわ。我々一同のおもてなしの気持ちを是非!!」
何やら尚子さんの言葉と目に力がある。このままだと『いいえ』、『まあそう言わずに』…『いいえ』、『まあそう言わずに』…と延々とループしてしまいそうな感じが目に浮かんだので応じる事にした。
「わ、分かりました。先に入らせていただく事にします。すいませんが皆さんに後でよろしくとお伝え下さい」
「ッ!!?分かりましたわ!お任せ下さい、必ずやご満足いただけるようにしますからっ!」
「えっ?満足?」
何やら不穏な単語を口走ってなかった?
「こうしちゃいられねえ!全員に連絡ッ!総員戦闘配置、第三級事態だ!」
「まっ、まさか旧世紀の遺物とまで酷評されたアレが日の目を見る日が来るなんて…。す、水陸両用携行戦闘服《モバイルスーツ》が…」
「あ、後でな、シュウ!待っててくれよ!」
「か、必ずですわよ!修さん!」
そう言い残すと二人は寮の廊下をダダダダッと駆けていく。廊下の壁に貼られた『寮内、走るな』の張り紙がなんともむなしく僕の目に映った。
「と、とりあえずお風呂…行こうかな」
それにしても…美晴さんにせよ、尚子さんにせよなんかヘンだったな…。いったい何だったんだろう…、そんな思いを抱きながら僕は大浴場に向かうのだ。
それがここ、河越八幡警察女子寮内にある大浴場を血に染める事になろうとは…。この時の僕は考えもしていなかったのだった…。
□ □ □
次回、寮の風呂場で何かが起こる…。
第43話、『大浴場、血に染めて』
お楽しみに。
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