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第2章 天然男子を巡る思惑とそうはさせない佐久間修
第29話 《閑話》 女子達、ヒミツの自主研修
しおりを挟む修の作ったカレーライスを堪能した河越八幡警察署の女性警察官達。その日の夕方、瀧本美晴と武田尚子は仲の良い同僚三名を寮の美晴の自室に集まっていた。早速…といった感じで部屋の主である美晴が口を開いた。
「え~、ではこれより『天然男子と親密になるには』研修を始めます。現在、河越八幡警察署にはシュウ…佐久間修君が滞在している訳ですがぁ~、オレ達がぁ~彼とより親密にになる…これを目標に色々考えていこーぜ!」
切り出した美晴の後を受ける形で今度は尚子が話を続ける。
「今日、修さんのカレーライス…つまり手料理をいただいた事で修さんと私達との関係はそれなりに進展していると言えますわ。ですが、この次の週末には修さんの男性向け復帰プランは終了…同時にこの署内からの退去も意味しますわ。そうなると修さんと一つ屋根の下という夢のようなシチュエーションは今後なくなる…、ですが修さんと何らかの進展をしておけばその後もお付き合いが継続されるかも知れません!」
「そうだ!オレ達には時間がねーんだよ、時間がよォ!だからヤるしか…、ヤるしかねえンだよ…。進展…、あわよくば既成事実ってヤツを作っちまえば…」
グッと美晴が拳を握り締めながら力強く語る。
「コホン!!美晴さんの身もフタも無い言い方はともかく、修さんとの仲を進展させようにも私達は男性と接した事があまりに少な過ぎますわ。ですから男性との経験が…」
「「「経験ッ!!?」」」
ガタッ!!
経験という単語を尚子が口にした途端、その言葉に婦警達が大きく反応する。
「ああ、もうっ!!あなた達、エロ連想ワード『経験』に反応しすぎですわっ!とにかく実際の経験はこれから積むとして…、まずは男女の自然な恋愛知識を頭に叩き込むのが大事ですわ!何しろ現代の男女間のやりとりは人工授精によるものしかないんですからね。私達に男女交際の知識がない…、それは進展を望むにあたってまさに大問題ですわ!」
「た、確かに…」
「そりゃ…、知識も経験も無いけどさ…」
「じゃあ、どうしたら良いの?」
三人の婦警が自信無さげに呟く、それを受けて尚子が胸を張って応じた。
「そ、こ、でッ!!私達は旧時代の男性が好んだ恋愛をテーマにした作品を通販で取り寄せて用意しましたの!どれもこれもかつて男性達から大反響があった有名作品だそうですわ!」
「そっ、そうか!これで男の子がどんな女の子を好きになるかとか…」
「あ、あと、自然な男女交際までの流れとか…」
「交際したら…す、する事とかさ…」
「「「ゴクリ…」」」
「そーいう事だな。ま、とにかく見てみよーぜ?んで、見終わったらお互い実際にやってみてよォ…。んじゃ、まずはこの恋愛アニメからだな」
……………。
………。
…。
アニメDVDを見終わった五人。
「うーん、幼馴染の部屋に朝一番に起こしに行くのかぁ…」
「朝でしょ?勤務開始前ならいけるかな…」
「で、でも、男の子のアレにはどう対処するの?」
美晴と尚子を除いた三人が何やらモジモジしながら戸惑っている。
「よしっ!じゃあオレが男役やるから、尚子が女役な。んで、こういう時にどう対処するか考えながら予行演習といこうぜ!」
美晴はそう言って掛け布団をかけて寝る演技をした。三人の婦警は壁際に下がった。尚子はと言えば女役をする為に一旦部屋から出て、再び入ってくる演技をする。
「お、おはよう。修さんっ!朝ですわっ!あ、あれっ?まだ寝ていますのね!まったくお寝坊さんなんですからっ!私が起こして差し上げますわっ!」
「う、う~ん。なんだ尚子か。もう少しだけ寝かせてくれよ…」
ぎこちなく修の名を呼ぶ尚子、そしてイケボが幸いし妙に男役が上手い美晴。
「まったく…。ほら、起きろ~っですの!」
ばさあっ!!
尚子が美晴の掛け布団を勢いよくはぎ取る。その次の瞬間、尚子は驚いたような表情を作り悲鳴を上げる。妙に芸が細かい。
「きゃああああっ!!な、何でそんな部分がそんな風になっていますのっ!」
「こっ、これは生理現象で…」
両手で顔を覆う尚子、同様に下半身を隠そうとする美晴。美晴もまた意外と芸が細かい。
「バカバカバカッ!!いっ、いやらしいですわっ!」
「し、仕方ないだろう。す、すぐにはおさまらないんだし…」
「お、おさまらない…?…じゃ、じゃあ、わっ、私が…お、おさまるようにしてあげても良いんだからねっ、ですわ!」
「「「おおおお~~!!」」」
「はい、終了~!!いやー、尚子良かったぜ。実際には幼馴染属性が無いところを自前のですわ口調とツンデレで押し切るとは大したモンだ!!んじゃ、次は…」
「今度はこっちのアニメDVDですわ!!」
……………。
………。
…。
「うわー!!ザックリいったなー!」
「あそこで『死んじゃえ』はヤベーよ!ナタだぜ、ナタ!」
「いや、お腹をかっさばく方がよりヤバい!」
「そうそう!妊娠初期じゃまだ赤ちゃんって判別出来ないよー」
……………。
………。
…。
「こ、これが触手…」
「エロゲ凄え…」
「「「ゴクリ…」」」
カチッ。…カチッ。静まり返った部屋に尚子がテキストを読み進めていく為にマウスをクリックする音が響く。
『ら、らめえええっ!!』
美晴達がプレイしているエロゲ、グラフィックやテキストだけでなく、音声もある。
「こ、この『らめえええっ!!』って要所要所に出てくるね…」
「こ、こういう事を戸惑いながら女の子が言うと男の子って嬉しいのかな…」
「なら明日からやってみる?」
「お待ちなさい!それだけと決めつけるのは早計ですわっ!」
「「「えっ!?」」」
「実はまだ他にもあんだよ…。エロゲ…」
「こっ、これだけじゃないの?」
「ええ…。他にも『御奉仕系』、『調教系』。残念ながら今回手に入ったのはこれだけですが…、でも…」
「ああ、朝まで時間はまだある。長い夜になりそうだぜ…」
五人の勇者達はその夜、一睡もする事なく月曜の朝を迎えたという。全ては想像するしかなかった天然の男性の生態を知る為に。
しかし、その為に集められた資料はす非常に偏ったものだったのである。
□ □ □ □ □ □
次回、『這い寄る!婦警さん!』
応援ありがとうございます!
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