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第5章 カグヤさんはお怒りです
第57話 落とし前、ガチで行く
しおりを挟む「ん~?逃げないのかな~?」
今の俺はきっと悪い笑顔をしているだろう。そんな俺が両手に剣を持ち、逃げたくても逃げられない二人の襲撃者に近づいた。
「ヒ、ヒィ!足がッ!?」
「う、動けねえ!足が床に縫い付けられたみてえに!!」
二人は抜けない足を必死に床から引き抜こうとしているが無駄な足掻きでしかなかった。水たまりのように広がる影の中に飲み込まれたそれぞれの片足が二人をそこから1センチも前に進めさせずにいる。
「さあて、どうするかな?」
男達のすぐそばまで来た。
「まずは片足…、もらっちゃおうか?」
そう言ってツンと剣先で軽く男の下半身を突いてやった。
「ギャ…、ギャアァァ!!!」
男達が悲鳴を上げた。
「おやおや…、まだ何もしてないぞ。それなのにもうお漏らしか…?そんなんじゃ俺みたいな素人にもナメられちゃうぞ、良いのかよ。まあ良いか、どうせお前ら死ぬんだし。でも、足を切り飛ばすのはナシね。ションベンもらして汚れた足なんて切りたくないから首を落としてしまおうか」
そう言って俺は少し立ち位置を変えて二人の首筋に刃先を触れさせると情けない事にヤツらは泡を吹いて気絶してしまった。
「や、やり過ぎたッ!やり過ぎだ、お前らッ!!」
ギルドマスターがこちらを指差し唾を飛ばして言った。
「やり過ぎだと?」
「そ、そうだ!なにもそこまでしなくても…」
「バカか、お前?」
俺はギルドマスターに視線を向けた。
「何がそこまでしなくても…だ!!…ああ、分かった。お前もグルだな、いやエスペラントの冒険者ギルドってのは盗賊の集まりって事か。だから商人である俺を襲ったコイツらをかばってる。俺をまったく助けようとはしなかったのも納得だ」
「な!?ち、違うぞ?」
「何が違うんだ!?だったら証拠を出せ、証拠を!自分らがコイツらとグルじゃないってトコをさ!その上で初めて謝罪だな、それも俺が納得出来るカタチの。まあ、この二人の…盗賊の仲間じゃないなんて証明なんて出来ないからギルドの頭を張ってるお前も同じく縛り首か奴隷落ちか…?そのくらいはやってもらわんとな」
今言っているのはいわゆる悪魔の証明ってやつだ、そうではないというのを証明なんて出来ないのだ。
「なっ!?す、する訳がないだろうッ!」
「あっそ。謝罪もせずに開き直るって訳ね。謝るなら少しは考えてやったのに。ギルドのトップであるマスターがそんな態度なんだから冒険者ギルドは全て俺の敵で盗賊、ハイ決定。だったらさあ…、盗賊の根城は根絶しなきゃだな」
「カヨダ、悪意ある気配がする。この周りの冒険者達、何人かがあなたに敵意を持っている」
「ふうん…?なら戦争だ、冒険者ギルド。商人を襲う事はこの街じゃタブー、重罪だ。それくらいはお前らの粗末なアタマでも理解してんだろ。それなら挨拶代わり、一発かましてやるか」
「なら、アレを?」
ロゼがこちらに伺いを立てた。
「ああ!殺しに来たのはコイツらだ!自衛するのに遠慮はいらねえ!新兵器の試し撃ちを兼ねてやってやれ!」
「分かった」
そう言うとロゼが前に出た。
「親分さん、先に表に出ていてくれ。巻き添えにしちゃ悪いからね。…おい、お前ら、そこのカウンター付近から離れた方が良いぞ!俺は優しいから敵にも一応情けをかけて警告だけはしてやる!」
「はあ?何言ってやがるんでぇ?」
正面のカウンターの内外にいた職員や冒険者達がそんな言葉を口にした。
「警告はしたぞ」
少し待ってやったが動こうとはしないコイツらが悪い。俺はロゼに指示を出す。
「後は逃げないお前らの責任だ。ロゼ、やれえ!」
「分かった、全員退避を再度推奨する。いくら出力を加減して実行するとはいえ…」
「力の加減は全て任せる。任せたッ!!」
俺はギルドの出入り口に向かおうと場所を譲り、代わりにロゼが前に出る。
「砲撃形態に移行…」
抑揚のないロゼの声が響いた。
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