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第2章 創造(つく)られた女性と創造するスキル

#21 その頃、グランペクトゥでは…【1】魔法契約の儀(魔法についての説明回)

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 加代田敏夫、そしてロゼとミニャがルーヤー川をいかだに乗りこんだ時より少し遡る…、具体的にはその前夜にミニャとの雨中の出会いを果たした頃である。

「吉報にございますぞ、ヨジュアベーテ女王陛下」

 グランペクトゥ女王国の国教であるシルクハットン教会…、その大司教の地位にあるエピルニンはうやうやしく頭を下げた後に話し始める。

「召喚いたした四人の若者達…、すなわち無二の勇者、至高の聖女、天下一武道家、真理追究の賢者…前代未聞の素晴らしい天職を得た者達の続報にございまする。いやはや、すごい力を秘めております。あの川流しにしてやった男とは比べ物になりませんぞ!」

 愛用のアクセサリーが見当たらなくなり不機嫌な女王の目をそらさせようとエピルニンはしきりに良い知らせを伝えようとする。

天職ジョブ能力値パラメーターの鑑定を終えて四名をシルクハットン神殿にお連れし魔法契約の儀を執り行いました。女王陛下におかれましてはすでにご存知とは思いまするが今一度ご説明させていただきまする」

 コホン…とエピルニンは軽く咳払いをして声の調子を整える。

「魔法契約の儀は契約者に…」

「知っておる。元来、魔法とはその名の通り悪魔や魔族の専売特許…。かの者らしか使う事の出来ぬ秘術であろう。昔は代償として己が魂を悪魔に売り渡しその秘術を得たと聞き及ぶ。しかし長い年月の果て、悪魔に魂を売り魔法を得る契約をするのではなく魔法自体と契約し使用する事を思いついた大魔導士がいた…。それにより悪魔に魂を売らずに魔法を得たのであろうが」

「はっ、さすがは女王陛下。博識にござりまするな」

 エピルニンがここぞとばかりにヨジュアベーテを持ち上げる。それによりヨジュアベーテの機嫌は少しは直っている。

「その事で陛下のお耳に入れたき事が…。なんとあの四人、それはもう数多くの魔法の契約が出来ましてございまする」

「なんと?数多くと申したか?魔法は才ある者でも…あのいにしえ竜王ドラゴンロードを倒したという勇者も確か8つだったとか…」

「いやいや、陛下そんなものではありませぬぞ。全員10を超えておりまする」

「なに!?10を超えるじゃと!?」

「はっ!まず、聖拳士ホーリーモンク天職ジョブを得たジュライという男子おのこは…」

聖拳士ホーリーモンクといえば自らの肉体を駆使して戦う者と聞くが…」

「はい、陛下。そのジュライは補助魔法を中心とした使い手ですな。魔法契約数は12」

「12じゃと?いきなり古の勇者を超えておるのう。それにしても…、補助魔法?なんじゃそれは?」

能力上昇バフ能力低下デバフの魔法ですな。具体的には体を頑丈にしたり、腕力を増したり…」

「ぬう…、聞いた事がある。身軽になったり、魔力を高めたり…。当然、その逆も…」

「左様にござりまする。つまり上手く併用すれば己が攻撃力を倍加し、敵する者の守備力を半減させれば…」

「おうおう。与える打撃は倍に…、敵がくらう損害も倍!2倍かける2倍で4倍ではないか!」

「ご明察めいさつにございまする、陛下。さらには体力などに関わらず成功すれば一撃で息の根を止める魔法も契約できましてございます」

「ふむう、決まればいかなる強者も葬るという即死魔法じゃな」

「続いてこちらは女子おなご…、二人のうち肌をやたらかな日焼けさせた金髪よりさらに明るい…なんというか白に近い色のメロという至高の聖女の方は回復、守備を中心とした魔法と契約できましてございます。最上位の魔法も契約しその総数は18。また、もう一人の黒髪を巻き上げるようにした方の女子おなご…。こちらはピイナと言いましたが…、これも契約数は18、多種多様な攻撃魔法…それも最上位のものもありました。中には広範囲に大きな爆発をもたらす魔法もありましたゆえ他国に侵攻する際には一気に打撃を与えられますな」

「それは良いのう…」

 女王ヨジュアベーテはニンマリと笑った。

「なるほど、女子おなご二人は魔法の使い手か。して、残る最後の男子おのこはいかがであった?」

「はっ、無二の勇者ことルキアでございますな。魔法の契約数は16」

「16か…、無二の勇者と言ったが女子おなごども二人より少ないのう…」

 ヨジュアベーテは少し拍子抜けしたような声を出した。

「されど陛下…、問題はその契約した魔法の中身にございまする」

「中身じゃと?」

 怪訝けげんな顔をするヨジュアベーテにエピルニンは応じる。

「ルキィの契約した魔法は幅広く、攻撃も回復も使えまする。さらにはなんと雷を用いた魔法と契約いたしましたぞ!」

「雷っ!?そ、それは神に通じる力ではないか!悪魔ですらも打ち据える天からの鉄槌…」

「はい、その雷の魔法にございます」

「ふ、ふふ…。ふははははっ!」

 ヨジュアベーテは笑った。その笑いは女王が愛用のアクセサリーを見失った事をひととき忘れていると感じられるものであった。

「良い!良いぞ!その力を開花させれば…。くくく…」

「はい。陛下のお望みも…」

「そうじゃのう…。わらわのこの手が世界を握るか…。そうなればあの四名、ただちに訓練を急がせよ」

「はっ!明日より我らが神殿にて幻覚魔法を用いた訓練を開始いたしましょう。あれならば実際に怪我を負う事なく鍛錬ができますゆえ…」

 大司教エピルニンは恭しく頭を下げてヨジュアベーテに応じていた。



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