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第1章 巻き込まれ召喚と国外追放
#2 創造神(かみ)はバラバラになった
しおりを挟む鼻につく声の方を見るとそこには黒いシルクハットにお揃いの色をしたタキシードを着た長い金髪の若い男が立っていた。そいつがこちらの都合なんぞお構いなしといった感じで話しかけてくる。
「やっとお目覚めかい?やはりコーコーセーとかと比べて歳をとってる分、起きるのも遅いねー。他のみんなはもうら行っちゃったよ。ほら、キミも早く行った!行った!」
「ハア?何言ってんだ、お前?」
何の説明も無く勝手な事、そして行き先も告げずに行けと言う男に苛立ちを感じながら言い返す。しかし、男はどこ吹く風とばかりに肩をすくめてヤレヤレとばかりに首を振ると再び口を開いた。
「あー、分からないかなー?異世界だよ、異世界。ここは異世界でキミはこの世界の創造神たる僕が連れてきた。だからこの世界で僕の役に立ってよ、ボクの暇つぶしにさー。その為に呼んだんだ、他の世界から連れてきた存在がこの世界にどんな影響を及ぼすか見たかったんだよー!あっ、そうそう!もうチキューには戻れないからね。僕、帰す気はないし」
「な、なんだと!?俺には店が…、明日は何でも屋の仕事があるんだぞ!」
「はははっ!まあ、諦めてよ。むしろ喜んで欲しいな、キミはこの創造神に選ばれた男…光栄に思いなよー。涙流して喜ぶとかさー、こっちはそういうリアクション期待してるワケ」
「ふざけんなテメー!!」
そう言って俺は手にしていた道具を神と名乗った奴に向けた。チェーンソーである、凶悪な外観のそれを見せて脅しになれば…と。そして始動用のヒモを力任せに引く。
ぶるるっ!!
すぱぱぱんっ!!ぱぱぱ…。
チェーンソーが大きな音を立て始める。
「んー?どうするつもりかなー?まさかとは思うけどさー、それでボクをどーにかするつもりかなー?」
「さっさと地球に戻せ、そうすりゃ許してやる」
「いやー、たまにいるんだよねー。こういう馬鹿な反撃しようとするヤツが。無力な人間が神をどーこーできる訳ないじゃん♪存在の格が違うんだよ、格が。まあ、良いや。やってみなよ、そーすればいかに馬鹿でも分かるだろーね」
ぶぁーあああああっ!!
そんな創造神の言葉を無視して俺は両手で持ったチェーンソーの刃を稼働させ始めた。しかし、コイツは平然としたままだ。
「えー、ホントにやるつもりなのー?やめときなよー、無駄な努力だよー?分かるでしょー、キミらの世界にあるでしょー。えーと、戦車だっけ?アレに人間が素手で殴って勝てる?そのくらいの事だよー」
「うるせえ、黙れ」
こんなにキレた事なんて今までの人生においてない。多分、あまりに非現実な出来事とヤツの身勝手な言い草に怒り心頭に発していた。俺はチェーンソーをグイッと持ち上げる。
「あっ、そう。まー良いや。やってみなよ、ボクはこっから一歩も動かないからさー?自分の無力さをせーぜー噛み締めるんだね」
そう言って余裕こいてた神。だが、しかし…。
「そこまで言うならやってやるぜ、人間ナメるな。このクソ野郎がッ!!」
「ふふん♪それならむしろボクの方から触りにいってあげるよ。それなら分かるでしょ、存在の無力さを。無能な人間が創造神に何をしようと痛くもかゆくも…ぎゃ、ぎゃああああッ!!」
俺が脅しの為に構えていたチェーンソーにヤツの手が触れた。すると、どうだろう。手を怪我するどころか腕や肩まで巻き込まれていく。まるでチェーンソーに自分から体を押し付けにいっているかのようだ。不思議な事に血は全く出ていない。
「ば、馬鹿な。ボ、ボクの…か、体が…。は、離れなきゃ…は、離れなきゃ…。う、うぐぐぐぐぅ、人間が…人間がぁ…創造神にこんなことをォォッ!!」
人を食ったような…人を舐めきったうすら笑いは消えタキシードとシルクハットを身につけた男…#創造神_かみ__#と名乗ったその存在が今は完全に焦りの表情を浮かべていた。いや、焦りだけではない、驚愕…憎悪…そんなものを混ぜこぜにしたようなとても醜悪なものだった。
「こ、このボクを…。グガアァァッ!創造神たるこの我を、この我をォォッ!なんだ、これは!?なぜ創造神たるこの我がァッ!?」
ヤツの若かった外見はいつの間にか年老いた老人のそれに変わっていた。金髪は白髪に変わり、顔には深い皺が刻まれ口元からは#鳩尾_みぞおち__#あたりまで伸びる顎髭が現れている。
「我を讃えよォ、創造神たるこの我をォォ…。悔い改めよ、愚かな人間がァァ…」
創造神を名乗ったヤツの体にヒビのようなものが全身に広がり始めている。
「な、なぜだ…?なぜ我の体が…?ま、まさか…これは、神殺しの神機…?は、はるか彼方の世界で…どこぞの人間が…#不手際_エラー__#から生み出してしまったという…。そ、それが…お前の住む…と…所にあった…とは…。み、認めんッ!認めんぞォォ!」
「勝手にやってろ」
いい加減にしろとばかりに俺はグイッとチェーンソーに力を込めた。ヤツの体に走ったヒビがさらにハッキリとしたものになっていく。
「ぬ、ぬがァァ…」
「黙って逝け」
お前の声なんてこれ以上聞きたくないとばかりにチェーンソーを薙いだ。ヤツの全身に入ったヒビは切れ目に変わりパリンとガラスが割れたような音がすると粉々になり始めた。
裁断機に入れた紙のようになったヤツの体がまるで風に吹き散らかされていくように宙を舞い、そして薄れていった。
「#創造神_かみ__#はバラバラになった…か」
俺は思わず呟いていた。
「ほほう…。其奴を滅する者が現れるとはな…」
創造神と名乗ったヤツとは違う声があたりに響いた。
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