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1-4.ギルドにお金を借りる
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ミラは自分が生まれ育った領地以外に行ったことがなく、この街に来るのも初めてだった。
この街は伯爵家が収める領地の1つである。
路銀を使って、仮身分証を発行し、街に入ることにした。
衛兵の人に聞いたところ、この街では身分証を発行するのに冒険者が手っ取り早いと言う。
教えられたとおりに、冒険者に登録するため、ギルドに足を運んだ。
ミラは周囲をきょろきょろと見回して、初めての場所に緊張していた。
木造で作られた立派な建物だ。中には酒場のスペースの他にカウンターテーブルで受付嬢が待機していた。掲示板には依頼を出していると思われる張り紙もある。
とりあえず、空いたカウンターの前に立つ。
すると、受付嬢の女性が声をかけてきた。名札にシルビアとある。
「こんにちは。どのようなご用件でしょうか?」
「実は、この街に来たばかりで、冒険者登録したいんですけど」
「では、こちらにご記入下さい」
差し出されたのは紙と羽ペンだった。自分の能力や戦闘スキルを書くらしい。
だが、名前を書く欄で手が止まった。家名が本名だと実家にいざというときバレるかもしれない。そこで、ミラと名前だけ記入した。
能力や戦闘スキルは一切ないため、そこの欄を飛ばして、書けそうなところを埋めていく。その後、受付嬢の女性に紙を出した。
「ではこちらが冒険者の冊子とギルドカードになります。必ず規約には目を通しておいてください。あと、冒険者ランクがGランクからのスタートとなり、貢献度に応じてランクが上昇します。何か質問はありますか?」
ミラは現状を正直に、話すとまずいところは伏せて、今日の宿がないこととお金がないことを話した。
受付嬢の女性はちらりとミラの服装と肩に下げた葉っぱのカバンを見て、頷いた。
「では、ギルド直営の宿をご案内します。それから生活資金については、一時的に借りられるのでご安心ください。冒険者の報酬で少しづつ返していただくことになります。それで構いませんか?」
「はい、それだで大丈夫です」
ミラにはこの街でのアテなどなく、断る理由もなかった。
ただ、自分が冒険者として働くのはちょっと難しいとも考えていた。
案内された宿は、冒険者ギルドのすぐ近くにある『金の紅亭』という宿だった。
一人部屋で実家よりは断然狭いが、野宿経験を経たこともあり、一切文句などなかった。むしろ快適そうだ。
日差しも入るし、ベッドも木や地面に比べるとずっと柔らかくて眠れそうだった。
持ってきた草は、部屋の隅に置いて、日の当たらないように布をかけた。
本当は、資金調達のためにこの草を売っても良かったのだが、唯一、自分を助けてくれる草だ。いま手放すのは惜しまれた。
ミラは、もらった冊子を一通り読んだ後、お湯と布で体をきれいにして、さっき購入した下着に着替えた。
服もきれいに洗いたかったが、このドレスの洗い方をそもそも知らない。
とりあえず、水の木桶に押し込んで、じゃぶじゃぶ洗って干すことにした。
ベッドに横になり目を閉じると、実家からここまで歩いてきた道のりを何度も思い返すす。
無事にたどり着けたのは奇跡に近かった。
明日からどうやって生きていくのかを考えていたら、いつのまにか眠りについたのだった。
この街は伯爵家が収める領地の1つである。
路銀を使って、仮身分証を発行し、街に入ることにした。
衛兵の人に聞いたところ、この街では身分証を発行するのに冒険者が手っ取り早いと言う。
教えられたとおりに、冒険者に登録するため、ギルドに足を運んだ。
ミラは周囲をきょろきょろと見回して、初めての場所に緊張していた。
木造で作られた立派な建物だ。中には酒場のスペースの他にカウンターテーブルで受付嬢が待機していた。掲示板には依頼を出していると思われる張り紙もある。
とりあえず、空いたカウンターの前に立つ。
すると、受付嬢の女性が声をかけてきた。名札にシルビアとある。
「こんにちは。どのようなご用件でしょうか?」
「実は、この街に来たばかりで、冒険者登録したいんですけど」
「では、こちらにご記入下さい」
差し出されたのは紙と羽ペンだった。自分の能力や戦闘スキルを書くらしい。
だが、名前を書く欄で手が止まった。家名が本名だと実家にいざというときバレるかもしれない。そこで、ミラと名前だけ記入した。
能力や戦闘スキルは一切ないため、そこの欄を飛ばして、書けそうなところを埋めていく。その後、受付嬢の女性に紙を出した。
「ではこちらが冒険者の冊子とギルドカードになります。必ず規約には目を通しておいてください。あと、冒険者ランクがGランクからのスタートとなり、貢献度に応じてランクが上昇します。何か質問はありますか?」
ミラは現状を正直に、話すとまずいところは伏せて、今日の宿がないこととお金がないことを話した。
受付嬢の女性はちらりとミラの服装と肩に下げた葉っぱのカバンを見て、頷いた。
「では、ギルド直営の宿をご案内します。それから生活資金については、一時的に借りられるのでご安心ください。冒険者の報酬で少しづつ返していただくことになります。それで構いませんか?」
「はい、それだで大丈夫です」
ミラにはこの街でのアテなどなく、断る理由もなかった。
ただ、自分が冒険者として働くのはちょっと難しいとも考えていた。
案内された宿は、冒険者ギルドのすぐ近くにある『金の紅亭』という宿だった。
一人部屋で実家よりは断然狭いが、野宿経験を経たこともあり、一切文句などなかった。むしろ快適そうだ。
日差しも入るし、ベッドも木や地面に比べるとずっと柔らかくて眠れそうだった。
持ってきた草は、部屋の隅に置いて、日の当たらないように布をかけた。
本当は、資金調達のためにこの草を売っても良かったのだが、唯一、自分を助けてくれる草だ。いま手放すのは惜しまれた。
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服もきれいに洗いたかったが、このドレスの洗い方をそもそも知らない。
とりあえず、水の木桶に押し込んで、じゃぶじゃぶ洗って干すことにした。
ベッドに横になり目を閉じると、実家からここまで歩いてきた道のりを何度も思い返すす。
無事にたどり着けたのは奇跡に近かった。
明日からどうやって生きていくのかを考えていたら、いつのまにか眠りについたのだった。
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