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溢れる想い

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レオン達の帰国の日。

羽田空港には、葵と司、樹が見送りに来ていた。

「アオイ。本当にありがとう。日本に来て良かったよ。本当は、俺は殺されてもいいと思ってたんだ。母の故郷で死ねるならそれはそれでいいと思ってた・・・。」

「・・・。もう、そんな事思ってないよね?」

「勿論。俺は俺の出来る事をする。母の為にもね。」

レオンの首には、母親の形見のネックレスが光っていた。

「アオイ。俺はアオイの事が好きだ。でも・・・今の俺はまだまだ半人前でアオイの隣に居る事は出来ない。だから、見ていて俺が一人前になったらアオイの事を迎えに来るから。」

葵の手を取ってそう告げたレオンは笑顔だった。
司をチラッと見ると、葵の手を引いた。
レオンは葵にキスをすると抱き締めた。

「レオン?」

「今はこれで我慢するよ。」

葵の手を放すと、司と樹の元に歩み寄る。

「桜葉さん、橘さん、色々とご迷惑おかけしましたね。ありがとうございました。」

二人に頭を下げた。

「レオン王子。貴方が無事で何よりです。これからのご活躍期待してます。」

樹と握手する。
レオンは司の近くに来る

「俺は、アオイの事諦めませんよ。貴方には負けません。」

そう小声で司に宣言した。

「俺だって負けませんよ。」

二人は硬い握手をした。

レオン達の乗った飛行機を三人で見送る。

「俺は先に警察庁に帰って長官に報告をしとく。お前はとゆっくりしてから帰ってこい。」

そう言うと、足早に空港を後にした。

「あいつ・・。葵この後何か用事あるか?無いならちょっと付き合って貰いたい場所があるんだけど。」




司と葵は、警察庁近くの公園に来ていた。

「ここは・・・。」

「もう、すっかり葉桜だな。」

桜の樹を見上げる。

「そうだね・・。」

葵は寂しそうな顔をして桜を見た。

「ここで、初めて葵に会ったんだ。俺は葵から目が離せなかった。」

「・・・・。」

「桜の花の様に儚げで、消えてしまいそうで。多分あの時俺は葵に一目惚れしたんだ。」

「・・・桜葉さん、それは・・」

「葵の力になりたいって思った。生きて欲しいって思ったよ。」

真剣な眼差しで司は葵を見つめた。

「私は死ぬ気なんて・・・。」

「無かった?」

「・・・。」

「俺は葵の支えになりたい。俺には葵が必要なんだ!」

「・・・。桜葉さんと私じゃ生きる世界が違いすぎるよ。貴方は陽の光の元を歩く人だよ?私とは違う・・。」

葵は寂しそうな顔をして言った。

「それでも、俺には葵が必要なんだ!この気持ちは止めることは出来ない!」

司は想いをぶつけた。

「きっと、それは一時の感情だよ?冷静になれば・・・。」

司は葵を抱き締めた。

「俺は冷静だっ!」

「違うよ、得体の知れない女にちょっと興味が出ただけ。」

「そんなんじゃない!どうしたら解ってくれる?」

少し身体を離し、葵の碧みがかった瞳を見つめたが迷うように揺れていた。

「ありがとう。その気持ちだけで私は嬉しいよ?でも、桜葉さんは桜葉さんの選んだ道を進んで?それが私の気持ちだから。」

そう告げると、司の腕の中からスルリと抜け出た。

「あおい・・・。」

「さよなら。桜葉さん。」





深夜、歩道に葵の姿があった。
そこへ、黒塗りのリムジンが現れ葵の前で停まった。葵は車に乗り込むと、藤堂が後部座席に居る。

「葵、怪我は大丈夫か?心配したよ?」

「ごめんなさい。怪我は大したことないです。それより色々と協力して頂いてありがとうございました。」

「大したことはしてないよ。葵の力になれたなら良かった。」

藤堂は目を細めて葵を見た。

「佐々木さんにも宜しくお伝えください。」

「わかった。伝えておく。・・・それで?この後はどうするんだ?やはりアメリカに帰るのか?」

藤堂は寂しそうに聞いた。

「・・・もう少し日本に居ようと思います。私に何が出来るか解りませんが、父と母が愛した日本に居たいです。」

葵は藤堂を真っ直ぐ見つめて言った。

「そうか。倉橋も喜ぶだろう。私を父だと思っていくらでも頼ってくれ。」

藤堂は嬉しそうに葵を見つめて、頭を撫でた。

「・・・ありがとうございます。藤堂さんっ!」

葵は穏やかな顔をして藤堂を見た。
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