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同朋
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「ニューヨーク市警に知り合いがいる。今、ジャッカルがどういう状態なのか聞いてみる。エリックに聞ければ良いんだけど・・。多分すぐには話してくれないと思うから。」
葵はスマホを取り出すとスピーカー通話にして電話を掛けた。
『アレク?葵よ。久しぶり。』
『アオイ?本当にアオイなのか?日本に行ったきり帰ってこないから心配してたんだ。元気でやってるのか?ニューヨークには帰ってこないのか?』
『ごめん。心配かけて。日本で元気にやってるよ。』
『そうか。良かった。・・・。俺に連絡してきたって事は何か厄介事か?』
『相変わらず察しが良くて助かるわ。ジャッカルの事を聞きたいの。』
『・・・。何があった?』
アレクの声のトーンが低くなった。
『うん・・。私に復讐しようとレインが動いてるみたい。』
『レイン・コックスか?まだ三年前の事を根に持ってるのか?あれは、ジャッカルの若者達を助ける為にアオイ達が動いてくれたんだろ?ニューヨーク市警の依頼で。』
『そうだけど。レインにとっては組織を潰されたんだから恨みに思うでしょ?』
『あの時は、自分だけさっさと逃げたのにな?』
『で?今ジャッカルはどうなってるの?』
『俺達も気に掛けてた。暫くニューヨークを離れてたが最近になって舞い戻って来たみたいだ。また、細々と活動してるみたいだがなかなか居場所が掴めなくてな。』
『そう・・・。わかったわ。ありがとう、助かった。』
『こっちでも調べてみるよ。アオイくれぐれも気を付けてくれ?レインは狡猾な奴だ。どんな手を使ってくるかわからない。』
『そうね・・。ありがとう。また、連絡するわ。』
電話を切ると葵は黙り込んだ。
「ニューヨーク市警の依頼で動いてたんだな?」
「うん。あの時、アレク達はジャッカルの若者達の事に心を痛めてた。でも、多忙を極めるアレク達にはどうする事も出来なかった。私とエリックは彼らの代わりに仕事をしただけ。」
葵は目を伏せて自分の両手を見た。
「だけど・・。あの時エリックを誘わなければこんな事にはならなかった。私一人でやるべきだった・・。」
司の大きな手が葵の手を包んだ。
「そんな事言うな。何でも一人で背負おうとしなくていいんだ。」
「司・・。」
********
翌朝。
「おはよー。司?」
欠伸をしながらリビングに顔を出す。
「・・・。」
テーブルの上には朝食が用意してある。
「まだ温かい・・?」
その頃、エリックの部屋のベルが鳴る。
「誰だよ、こんな朝早くに・・。」
ドアを開けると司が立っていた。
「昨日の今日で来るとはね?しかも一人で来るなんて・・。ツカサはある意味肝が据わってるのかな?」
「エリックに聞きたい事がある。」
「・・・。とりあえず入りなよ。」
室内に入ると、エリックはルームサービスを頼んでいた。
「それで?聞きたい事って?答えられる事と答えられない事があるけど?」
「葵から話は聞いた。仕事の報酬は金か?」
「・・・。違う。そんなもんじゃない。」
「だったら、何なんだ?どうしたら葵を諦めてくれるっ?葵は自分を責めてた。エリックを巻き込んでしまったって!一人で背負おうとしてる。」
「っ・・・。」
「何か有るんだったら言ってくれ?エリックの力になるからっ!だから・・葵を狙うのは諦めてくれ!?」
「ほんと、ツカサはお人好しだな?そんなんで、裏の世界で生きていけるのか?アオイのパートナーで居られるのか?世の中は不条理な事ばかりだ。」
「そんなの、俺が一番解ってるっ!だけど、この気持ちだけはどんな事があったって曲げられない!」
「・・・。」
エリックは悲しそうな瞳で司を見た。
「羨ましいよ。ツカサのその強さが・・。」
「エリック・・。」
ホテルを出ると葵が待っていた。
「ごめん。勝手なことして・・。」
「ううん。大丈夫。」
「結局、エリックからは何も聞けなかった。」
「そっか・・。」
俯く司の手を握った。葵の手は少し冷たかった。
「でも、司の気持ちは届いたと思うよ?」
「そうかな?」
「うん。」
繋いだ手を司が握り返してくれた。
「帰ろっか?」
「ああ。」
そんな二人をエリックは客室から見つめていた。
葵はスマホを取り出すとスピーカー通話にして電話を掛けた。
『アレク?葵よ。久しぶり。』
『アオイ?本当にアオイなのか?日本に行ったきり帰ってこないから心配してたんだ。元気でやってるのか?ニューヨークには帰ってこないのか?』
『ごめん。心配かけて。日本で元気にやってるよ。』
『そうか。良かった。・・・。俺に連絡してきたって事は何か厄介事か?』
『相変わらず察しが良くて助かるわ。ジャッカルの事を聞きたいの。』
『・・・。何があった?』
アレクの声のトーンが低くなった。
『うん・・。私に復讐しようとレインが動いてるみたい。』
『レイン・コックスか?まだ三年前の事を根に持ってるのか?あれは、ジャッカルの若者達を助ける為にアオイ達が動いてくれたんだろ?ニューヨーク市警の依頼で。』
『そうだけど。レインにとっては組織を潰されたんだから恨みに思うでしょ?』
『あの時は、自分だけさっさと逃げたのにな?』
『で?今ジャッカルはどうなってるの?』
『俺達も気に掛けてた。暫くニューヨークを離れてたが最近になって舞い戻って来たみたいだ。また、細々と活動してるみたいだがなかなか居場所が掴めなくてな。』
『そう・・・。わかったわ。ありがとう、助かった。』
『こっちでも調べてみるよ。アオイくれぐれも気を付けてくれ?レインは狡猾な奴だ。どんな手を使ってくるかわからない。』
『そうね・・。ありがとう。また、連絡するわ。』
電話を切ると葵は黙り込んだ。
「ニューヨーク市警の依頼で動いてたんだな?」
「うん。あの時、アレク達はジャッカルの若者達の事に心を痛めてた。でも、多忙を極めるアレク達にはどうする事も出来なかった。私とエリックは彼らの代わりに仕事をしただけ。」
葵は目を伏せて自分の両手を見た。
「だけど・・。あの時エリックを誘わなければこんな事にはならなかった。私一人でやるべきだった・・。」
司の大きな手が葵の手を包んだ。
「そんな事言うな。何でも一人で背負おうとしなくていいんだ。」
「司・・。」
********
翌朝。
「おはよー。司?」
欠伸をしながらリビングに顔を出す。
「・・・。」
テーブルの上には朝食が用意してある。
「まだ温かい・・?」
その頃、エリックの部屋のベルが鳴る。
「誰だよ、こんな朝早くに・・。」
ドアを開けると司が立っていた。
「昨日の今日で来るとはね?しかも一人で来るなんて・・。ツカサはある意味肝が据わってるのかな?」
「エリックに聞きたい事がある。」
「・・・。とりあえず入りなよ。」
室内に入ると、エリックはルームサービスを頼んでいた。
「それで?聞きたい事って?答えられる事と答えられない事があるけど?」
「葵から話は聞いた。仕事の報酬は金か?」
「・・・。違う。そんなもんじゃない。」
「だったら、何なんだ?どうしたら葵を諦めてくれるっ?葵は自分を責めてた。エリックを巻き込んでしまったって!一人で背負おうとしてる。」
「っ・・・。」
「何か有るんだったら言ってくれ?エリックの力になるからっ!だから・・葵を狙うのは諦めてくれ!?」
「ほんと、ツカサはお人好しだな?そんなんで、裏の世界で生きていけるのか?アオイのパートナーで居られるのか?世の中は不条理な事ばかりだ。」
「そんなの、俺が一番解ってるっ!だけど、この気持ちだけはどんな事があったって曲げられない!」
「・・・。」
エリックは悲しそうな瞳で司を見た。
「羨ましいよ。ツカサのその強さが・・。」
「エリック・・。」
ホテルを出ると葵が待っていた。
「ごめん。勝手なことして・・。」
「ううん。大丈夫。」
「結局、エリックからは何も聞けなかった。」
「そっか・・。」
俯く司の手を握った。葵の手は少し冷たかった。
「でも、司の気持ちは届いたと思うよ?」
「そうかな?」
「うん。」
繋いだ手を司が握り返してくれた。
「帰ろっか?」
「ああ。」
そんな二人をエリックは客室から見つめていた。
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