十年愛 〜私が愛した人はズルイ人でした。それでも愛するのを止められないのは私の罪ですか?〜

朔良

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春疾風6《はるはやて》

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18時の定時で会社を退社した花音は、最寄りの駅構内に居た。
ちょうど、帰宅時間って事もあり駅は混雑していた。

(藤崎さんイケメンだったなぁ、それにあんな高級車に乗ってるお客なら社長とかだろうし結構いいトコに入れたかも!)

そんな事を考えていると思わず顔がニヤけてしまった。

「あれ~、花音じゃない?」

後ろから聞き覚えのある声がする。

(この声って・・。)

振り向くとそこには、短大の時の同級生だった麗華が笑顔で立っていた。

「麗華・・。」

「やだぁ、花音久しぶり~。短大卒業以来だよね?元気にしてた?今何してるの?読者モデルの仕事ってまだやってるの?」

「ちょ、ちょっと待って!そ、そんなに聞かれても・・。」

「あ、ごめん。ちょっと興奮しちゃって。ねぇ、何処かでお茶しない?色々聞きたいし、あっ!あのカフェなんて良いんじゃない?」

「えっ?私まだ行くなんて・・。」

「ほぉら、行こう!」

麗華の勢いに負けてお店へ入ってしまった。
向かいに座った麗華は相変わらずだった。

大手企業の社長令嬢、いつも明るくてムードメーカー的存在で誰にでも好かれていた。
それだけでなく、容姿も美しく所作も綺麗だった。

一方、花音はシングルマザーて母親は家に帰ってくるのも時々だった。
いつも空腹と寂しさの中で育ってきた。
そしていつも皆から好奇の目に晒されてきた。
奨学金を貰い短大へ通った。
昔の自分を知らない所を選んだ。
当時から麗華の事なんて友達なんて思ってなかった。
ただ、一緒に居れば色々と都合が良かっただけだ。
そんな花音の本音なんて知るはずのない麗華は、久しぶりに会えた親友に満面の笑みを浮かべた。

「ほんとに久しぶりだよね?花音、全然連絡くれないし。私達親友でしょ?」

「ごめん、ちょっと忙しくて・・。」
(何が親友よ!そんな事一度も思ったことなんかないわ!)

「今日は?仕事の帰り?」

「あ、うん。」

「へぇー、どこで働いてるの?私は今パパの秘書やってるんだ。」

「うん。高級輸入車のディーラーでショールムレディしてる。」

「えっ!?嘘、カッコいい~。ホント花音って凄いよね~。そんな外資系の会社に正社員で入るなんて!」

(せ、正社員?ちょっ、何勘違いしてんのよ!でも、今更派遣なんて言えないし。話し合わせとけば大丈夫よね。)

「そんな、全然凄くないよ。」

「やっぱりお客様って、社長とか役員とかそういった人が多いんでしょ?」

「えっ?うん、まぁね。」

「へー凄い。じゃカッコいい彼氏とかも居そう。どうなの~?」

「彼氏候補は結構居るけど、まだ決めてないの。ほらもっと好条件の人が現れるかもしれないから。いまは、お一人様を堪能してるの。」

「カッコイイ。私も花音みたいななりたいなぁ。私の彼なんて幼馴染だから、もう家族みたいなものなのよね?」

(何よ!その幼馴染だってどっかの企業の御曹司だって言ってたくせに!)

「そ、そうなの。でも、私も色々大変なのよ。読モの仕事もしてるから忙しくて。」

「そうなんだ!でも、正社員なのに読モの仕事もなんて凄いね?副業大丈夫なんだ?」

(し、しまった!ここは適当に・・。)

「そう!ほら外資系だから結構理解があるのよね~。」

「ほんと凄いね!ねーねー、名刺とか持ってないの?今度パパと一緒に行きたいなぁ。」

「あ、名刺はいまちょうど切らしてて・・。みんな私の名刺欲しがるからぁ。」

「うわー。出来る女って感じだね!!」

「そ、そうありがと。」
(これ以上ここに居たらボロが出そうだからもう帰ろう。)

「ちょっとこの後用事があるからそろそろ行くね。」

「そうだったの?ごめん。じゃ行こうか?」

「うん。」
(何とかやり過ごせそう。)

会計をして店を出ると麗華と別れた。

(ほんと、迷惑なやつ。二度と会いたくないわ!!)

内心そんな想いにかられたが、麗華に嘘をついた事が少しモヤモヤした。

(ま、まぁ、今色々見てるのは合ってるしいっか!!)

気持ちを切り替えて帰路についた。

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