十年愛 〜私が愛した人はズルイ人でした。それでも愛するのを止められないのは私の罪ですか?〜

朔良

文字の大きさ
上 下
200 / 221

狂い咲き13

しおりを挟む
(私も帰ろう。きっと昴おじさん心配してるだろうな・・。)

少し早足で別荘を目指し、別荘に着くと結城の車が泊まっていた。

(なんて説明しよう・・。本当の事を言っても信じてもらえないだろうし。)

理由を考えながら玄関への階段を登ると別荘から結城が出て来た。

「あぁ、美咲お帰り。散歩にでも行ってたのかい?」

「えっ・・?う、うん。」

いつも通りで気が抜けてしまう。

「そうか、俺はさっきこっちに戻って来たところなんだ。」

「えっ?さっき?」

「?ああ。」

「えーっと、今日って何日?」

「本当にどうしたんだ?」

結城は美咲の顔をマジマジと見つめた。

「朝も電話で話したじゃないか。今日は、27日だよ?」

「にじゅう・・しちにち?」

咄嗟にスマホを取り出すと時間と日付を確認する。
『11月27日の13時47分』
だった。

(うそっ!!?確かに私はあの場所で2日過ごしたはずなのに・・。時間が戻った?それともあの場所だけ時間の進みが早いとか?)

一気に混乱状態になるが何とか頭を整理する。

(きっと、あの場所だけ時の流れが違ったんだね・・。あんな事が起きるんだもん時間の進みがおかしくたって変じゃない・・よね?)

「本当にどうした?」

結城が困惑した顔で美咲の顔を覗き込んだ。

「ううん・・。何でもないっ!!」

「そう・・か?」

その時一陣の風が美咲の髪を揺らせた。ほのかに甘い香りがする。
吹いていった風を追うように視線を空に向ける。何処までも蒼く高い空だった。

『みさきさん・・ありがとう。』

頭の中に言葉が響いた。

(あぁ、咲さん達が私が困らないようにしてくれたんだ・・。二人でユックリ眠って?)

何だか咲と藤治が笑っている気がした。

「美咲?髪に花びらが付いてる。」

すっと手を伸ばすと白い花びらを美咲に渡す。白い藤の花の花びらだった。その花びらを優しくソっと握った。




その日は別荘の近くのレストランで夕食を済ませた。
二人で帰ってくるとウッドデッキに座りワインを飲んだ。

「どうだった?少しはリフレッシュ出来たかな?」

「うん。とっても・・とっても良い休みだったよ?」

「・・・・そうか?なら、良いんだ。」

「うん・・。はぁー、それにしても明日にはもう帰らなきゃいけないなんて・・。」

「あはははっ、また来れば良いだろう?美咲が使いたい時があれば鍵は渡すから、自分の別荘だって思ってくれて良いよ?」

「うん。でも、ここにはおじさんと一緒に来たいかな・・?両親との記憶も有るしね。」

「そっか。」

「うん。」

翌日、二人は白馬の別荘を後にした。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切り者

詩織
恋愛
付き合って3年の目の彼に裏切り者扱い。全く理由がわからない。 それでも話はどんどんと進み、私はここから逃げるしかなかった。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

最愛のあなたへ

夕香里
恋愛
最愛の人から送られ続けていた手紙の最後の一通。それは受取人にとって、複雑な心境になる手紙。意を決して封を開けるとそこには愛が溢れていた。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

からかう

詩織
恋愛
同期で好きな彼にいつもちょっかいを出されてた。はじめはそんな関係も嫌いじゃなかったが…

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

処理中です...