十年愛 〜私が愛した人はズルイ人でした。それでも愛するのを止められないのは私の罪ですか?〜

朔良

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忘却の楔33

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「身を隠したいって?一体どうして!?」

「・・・・。」

迷うように結城を見つめた。考えを整理するように頭を回転させる。結城は美咲の言葉を待った。

「・・・・、ハハッ本当私どうしたら良いんだろっ・・?もう・・訳解んないっ。」

自嘲的に笑った。そんな美咲を見て結城は美咲の隣に座り抱きしめた。

「美咲?どうしたんだ?ゆっくりで良い話しをしてくれないか?」

優しく背中を撫でた。結城の腕の中は温かくて安心できて。

「おじさっ・・ん・。」

涙が一粒溢れると、後はせきをきったように次から次へと涙があふれる。

「うん。大丈夫。今は好きなだけ泣いて良いよ?」

美咲の気が済むまでずっと側に居た。

「ごめんなさいっ。おじさんも忙しいのに・・。」

「良いんだ、そんな事気にするな?」

「う・・ん。」

涙を拭うと美咲が意を決した様に話し出した。

「雅也さんの記憶が戻ってもう一度やり直そうって言われた・・。でも、私はもう二度と長嶺家に関わらないと約束した。その約束は違えることは出来ない。そう言ったら、雅也さんは長嶺の家も仕事も捨てるって・・。そんなのっ、そんなの私は望んでないっ!!だから・・。」

「身を、隠そうとした?」

コクリと頷くが美咲の手が震えていた。結城はそんな手を優しく握った。

「落ち着いて?もとはといえば俺が長嶺君と美咲を引き合わせたんだ。申し訳なかった、また君を傷付けてしまったな・・?」

「ううん、ううん違う!おじさんは何も悪くないっ!私の心が弱いだけ・・また逃げようとしてるだけ・・だよね、、、。」

「そんな事無い、逃げたって立ち止まったって良いんだ。何度でもやり直す気さえあればやり直せるんだよ?」

「でも・・私はあの時雅也さんを深く傷付けた。私の事を忘れてしまう程・・。そんな私には資格なんかない。おまけに、また雅也さんから逃げようとしてるなんて・・ダメダメですよね。」

優しい笑顔を浮かべると、涙の跡を拭った。

「駄目じゃない。人間誰もが傷付きたくない。それでも、美咲は長嶺君の為に彼に向き合ってくれた。そこまでしてくれた君を誰も責められるわけないだろう?」

「そう・・かな?」

「そうさ」

優しく肩を抱き頭を撫でた。美咲は目を瞑ると結城に身体を預けた。
まるで父親に甘やかされてる気持ちになった。結城の手が優しくて、心音が心地良くてあっという間に眠りに落ちた。
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