十年愛 〜私が愛した人はズルイ人でした。それでも愛するのを止められないのは私の罪ですか?〜

朔良

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ライバル12

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一方、朝から営業に出た美咲は結城の事務所に居た。事務所の人間とは既に顔見知りなので挨拶をすると結城の執務室へ向かう。
ドアをノックして室内に入る。

「昴おじさん、ご無沙汰してます。」

「ああ、美咲良く来てくれたね。あと少しで手が空くからちょっと待っててくれる?」

「はい。大丈夫ですよ。」

美咲はソファーに座り営業鞄から雑誌を取り出した。
執務室には、パソコンのキーボードの音と時計の秒針の音だけが響き渡る。
美咲にとってこの場所は数少ない癒しの場所だった。

「待たせて悪かったね?」

仕事に一段落ついた結城が向いのソファーに座った。

「全然大丈夫ですよ。それで?私にお願いって何ですか?」

「うん・・・。実は再来月にある政治家主催のパーティーがあるんだけど、そのパーティーに一緒に行ってもらえないかと思って。」

「政治家のパーティー・・・ですか?」

「ああ、出来れば同伴者が居たほうが良くてね?」

「そのパーティーって、参加するのはどんな人達ですか?」

「・・・、はぁ、やっぱり美咲に隠し事は出来ないな。政財界のトップクラスの人間が来る。」

「・・・・。」

「もしかしたら・・いや、多分白鳳グループの人間が来ると思うんだ。」

白鳳グループと聞いてピクリと反応した。

「そう・・ですか。」

美咲は目を伏せる。

「まだ、白鳳グループの誰が参加するかはわからないんだ。もしかしたら・・・。」

「昴おじさん?解りました。再来月ですね?詳細がわかったら詳しく教えてください。」

「いいの・・?」

「はい。大丈夫ですよ?もー、私に気を使わないでっていつも言ってるじゃないですか!パーティーだったら同伴者が必要ですもんね?」

「・・ありがとう、美咲。」

柔らかな笑顔を向けた。

「まぁ、昴おじさんの頼みを断る理由もないしね。・・白鳳グループの件は、その時はその時で何とかなるでしょ。」

美咲はあえて軽い口調で言った。

「無理・・してないか?」

「ううん。大丈夫。人脈作りにもなるし私にとったらありがたいお誘いですよ?名刺沢山持っていかないとな~!」

「ははっ、転んでもただでは起きないな美咲は。」

「うん。社会人になって随分強くなったでしょ?」

「ああ。」

その後、暫く雑談をして結城の事務所を後にした。昼食を挟んで営業にまわり19時には会社に着いた。

「只今戻りました。」

「お帰りなさい。」
「お疲れ様。」

内勤の人と久堂が出迎えてくれた。
営業鞄をおくと椅子に座り一息ついた。
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