十年愛 〜私が愛した人はズルイ人でした。それでも愛するのを止められないのは私の罪ですか?〜

朔良

文字の大きさ
上 下
107 / 221

葛藤7

しおりを挟む
「・・・・。」

翌朝、目覚めると身体が少し楽になっていた。
辺りを見ると美園がソファーで寝ていた。
美咲はクローゼットから毛布を取り出して美園に優しく掛ける。
喉が乾いていたので冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出して飲むと一息ついた。
静かにベッドへ戻り枕元の体温計を手にする。暫くすると、体温計のアラームが鳴り熱を見てみると39℃位には熱が下がっていた。

(良かった。少しは良くなったのかな?)

そんな事を考えながら、ベッドに座る。昨夜の久堂の様子を思い出した。

(何だか様子が変だった気がするけど、大丈夫かな?)

携帯を手にするがまだ朝の7時前だった。久堂に電話をするのは諦めて携帯をサイドテーブルに置いた。

「う・・ん・・?」

美園が目を覚ました。

「美咲?もう、起きたのか?どうだ体調は。熱はまだ高いか?」

美園の矢継ぎ早の質問に思わず笑ってしまう。

「先生、おはようございます。身体は昨日よりは少し楽になりました。熱はまだあって、さっき計ったらまだ39℃位ありました。」

「そうか・・、暫くは熱は引かないと思うけど段々と良くなるから。」

「はい。先生もご自宅に帰って休んで下さい。疲れ取れないでしょ?」

「まぁ、いつもこんな感じだ。今日は少し眠れただけでも良い方だ。」

「先生、患者さん第一なのはわかるけど先生が倒れちゃうよ?」

「ははっ、まだ大丈夫だ!とりあえず点滴を交換しよう。」

美園は新しい点滴パックと交換した。

「食欲はあるか?久堂さんが色々買ってきてくれたみたいだぞ?」

冷蔵庫の中を見ながら言った。

「まだそんなに無いけど、ゼリー飲料ぐらいなら大丈夫そう。」

「そっか、じゃあこれだな。」

美園が選んできたゼリー飲料を受け取る。

「先生?ほんとに、私は一人で大丈夫だよ?」

「うーん。でも、まだ点滴をしてるしね。」

「だったら・・。」

美咲は立ち上りソファーの近くまで行くと、ソファーを動かし始めた。

「これ、ベッドにもなるんです。だからここで少し休んで下さい。」

美咲は有無を言わせない様に言った。

「参ったな。・・・・、わかったよ。じゃあ、これは使わせてもらう。それで良いか?」

「はい。」

近くにある毛布を美園に渡した。

「あぁ、そういえば久堂さんまた今日も来るって言ってたぞ?」

「っつ・・・・、そう・・ですか?・・・・。」

「・・、あぁ。」

重い沈黙が落ちる。美園はそれ以上何も聞いてこなかった。

「それ飲んだら薬飲んで寝ろ?こういう時はユックリと休むのが一番だ。」

「はーい。」

「じゃあ、俺は朝飯買ってくるよ。美咲は何か欲しい物あるか?」

「ううん。大丈夫だよ。」

「そっか、じゃちょっと行ってくる。」

「いってらっしゃい。」

美園は財布と携帯だけ持って出ていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切り者

詩織
恋愛
付き合って3年の目の彼に裏切り者扱い。全く理由がわからない。 それでも話はどんどんと進み、私はここから逃げるしかなかった。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

最愛のあなたへ

夕香里
恋愛
最愛の人から送られ続けていた手紙の最後の一通。それは受取人にとって、複雑な心境になる手紙。意を決して封を開けるとそこには愛が溢れていた。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

からかう

詩織
恋愛
同期で好きな彼にいつもちょっかいを出されてた。はじめはそんな関係も嫌いじゃなかったが…

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

処理中です...