十年愛 〜私が愛した人はズルイ人でした。それでも愛するのを止められないのは私の罪ですか?〜

朔良

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変わりゆく関係10

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久堂は、美咲から一番聞きたかった言葉を聞けた。

『久堂さんの事、好きです。』

どれだけの葛藤の中で言ってくれたのかは久堂にもわかった。
それでも想いを伝えてくれた美咲が愛おしくて仕方なかった。
自分の腕の中に居る美咲は、何かあれば消えてしまいそうに儚かった。
消えてしまわないよう、久堂は優しくでもしっかりと抱き締めた。

「んっ・・・久堂さん?」

美咲の瞳はまだ涙で濡れていた。お酒のせいもあるのか頬は赤く熱を持っていた。

「如月さん?嬉しいよ?如月さんの気持を聴けて。俺も好きだよ?」

腕の中の美咲の顔を覗き込むと、優しく口づけをした。

「わたしっ、ホントは駄目だってわかってる・・。でも・・。」

「良いんだ、如月さんが言いたい事は十分わかってる。それでも如月さんの気持を聴けて俺は嬉しいよ?」

「っつ・・・くどうさ・ん。」

また美咲の瞳に涙が溜まった。一度瞬きをすると、ポロリと涙が落ちた。久堂は美咲の涙を拭うと優しく口づけた。

「ごめん。」

「・・・どうして久堂さんが謝るんですか?謝らないといけないのは私の方なのに・・。」

「違う!如月さんは何も悪くないっ。」

美咲をきつく抱きしめた。
久堂の腕の中に居ると安心するし落ち着く。ずっとこうしていたいと思ったが、帰りの時間をどうしても気にしてしまう。
時計を視ると、午前0時を過ぎた所だった。

「久堂さん・・・、時間も時間ですから代行呼びますね?」

久堂を見上げて言うと、スルリと久堂の腕の中から抜け出た。
10分もすると代行が来た。

「久堂さん?気を付けて帰って下さいね?」

「ああ、ありがとう。また、来週。」

「・・・はい。また。」

久堂の車を見送り部屋に入ると崩れ落ちた。

「・・・。どうしてっ?何で言っちゃったの・・・。こんなの駄目だよ・・。誰にも言えない。こんなのっ・・・。」

膝を抱えて顔を伏せた。

(こんな気持になるなんてっ。どうしたらいい?・・でも、自分の気持を止められないっ。)

フラフラっと立ち上がるとベッドに身体を預けた。

「・・・・。」

目を閉じると酔いのせいもあるのか、急激に眠気に襲われた。
そのまま睡魔に身を預けた。
数分すると、美咲から規則正しい寝息が聞こえた。
眠っている間だけは全ての事から開放される。出来るなら、ずっと眠っていたい。
今の美咲の、正直な想いだった。
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